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67 脱いで

腕を斬り落とされた哀れな騎士の魔剣が、地面に転がっている。


俺とタピオカくんは普通の武器で、物理的に叩きつけても、魔法をぶつけても、魔剣のHPバーは全く減らない。


俺はオーロラ・セイバーの先で魔剣をツンツンしながら、みんなに話しかける。


「削れませんね。」

『魔法もだめみたい。』


セリーナ:炎でこの剣を溶かすのはどうですか?


タピオカくんはすぐに答える。


『普通の剣ならできると思うけど、この剣、黒い炎を操れるんですよ。無理だと思うわ。』


サクラリア:うん~魔剣だから、浄化するのは?


「『あ……』」


申し訳ないけど、俺たちは観客席で休んでいるシルヴィアを呼んだ。


シルヴィアはアルベルトとダリオンたちに支えられながら、闘技場中央へやってくる。人が増えたので、タピオカくんは念の為、俺のフードの中に隠れた。


「せいれ……アリス、魔剣を上手く破壊できましたか?」


隣で「魔剣の破壊」という言葉を聞いたアルベルトたちは一瞬驚いた顔をするが、まぁ宝物級のアイテムだから、普通なら王国側が回収するか、聖王国で封印する流れだ。


でも当然のように「破壊」と言ったシルヴィアを見ると、これは必要事項と思い、三人とも何も言わずにシルヴィアの護衛に戻る。


俺たちも説明する気がないので、ありがたい。


「いいえ、まだ破壊できておりません。聖女様、魔力はまた残りますでしょうか。」

「はい、少し休みましたので、大丈夫です。」

「魔剣は普通の攻撃では破壊できなかったみたいなので、聖女様の浄化能力なら破壊できるかも知れません。」

「わかりました。試しに〈ピュリファイ〉を使います。」


しかし、何も起こらない。


困ったなぁと思っていると、シルヴィアが静かに話し始める。


「アリス……私、魔剣を壊す方法がわかったみたいです。」

「急にわかりました……ですか?」

「はい。封印の術と同じく、天啓のように脳内で急にわかった感じです。」

「そうですか。では破壊をお願いします。」

「了解しました。みんなさんは魔剣から離れててください。」


俺たちは魔剣から離れる。


シルヴィアは静かに杖を掲げ、呪文を唱え始める。


「天の光よ、罪を照らし、闇を裁け。聖なる審判、今ここに!——ジャッジメント!!」


詠唱が終わった瞬間、天から眩い光の柱が降り注ぐ。それはまっすぐに地へ落ち、魔剣を直撃する。



ド———ン!!



轟音が闘技場を震わせ、光が爆発的に広がる。


剣はすぐに灰のように崩れ落ちる。地面には魔剣の残骸と思われる灰しか残っていない。


急な光と轟音で周囲が再び警戒態勢に入るが、アルベルトはすぐに大声で周りに伝える。


「シルヴィア様が奈落の七印の計画を破り!! 邪竜を再び封印し、その分身と思われた魔剣を破壊した!!! 我々の完全勝利だ!」


騎士たちと闘技場を封鎖していた兵士たちが一斉に歓声を上げる。現場の雰囲気は一瞬で変わり、勝利の喜びが広がっていく。


話が終わると、アルベルトはすぐにシルヴィアに頭を下げた。


「聖女様、余計な真似を申し訳ございません。他の人にあなた様が魔剣を破壊したことを罪にするのを防ぐため、こうしなければならなかったのです。」

「アルベルト様、心遣い感謝いたします。」

「いいえ、こちらこそ、陛下を助け、我々も助けてくださったこと、本当にありがとうございます。」「全ては女神エリシア様の導きです。」


それを聞いたクールなアルベルトが、珍しく柔らかい微笑みを浮かべる。シルヴィアも優しく微笑み返した。


そっか、悪い貴族たちは宝物級の魔剣を破壊したことを利用して、シルヴィアを嵌めようとするかもしれないとは考えもしなかった。失策だったな。ありがとう、アルベルト。


タピオカくんはフードの中でチャットで俺に話しかける。


タピオカ:豆腐くん……やっぱり私たちが見たこの世界がアニメ調でホントに良かったわ。

飛べる豆腐:確かに、リアルだと洋ゲーになるよね。

飛べる豆腐:人気キャラのこの二人が一緒に立っているだけで、ホントに絵になるなぁ。

タピオカ:スクショしたい。この二人の薄い本あるのかなぁ。

飛べる豆腐:あるだろ? こいつら人気だし。

タピオカ:左肩……もう大丈夫?

飛べる豆腐:ああ、痛みはだいぶ冷めた。

タピオカ:そう……。


俺たちのチャットはここで止まった。


日本語が読めないセリーナたちは、俺たちのチャットを無視して、自分たちが言いたいことを話し始める。


セリーナ:シルヴィアさんとアルベルトさんで、物語の王子さまと姫様みたいですね。

サクラリア:セリーナ、彼は騎士団長ですよ、王子ではないですよ。

セリーナ:例えですよ、私も王子さまのこと会ったことないですから。

サクラリア:王子……うん~セリーナがまた花びらを集めたら、わたくしにもお兄様が生まれますか。

サクラリア:あとでお母様に聞いてみます。

セリーナ:それは弟です。


彼女たちが仲良く話しているのを聞きながら、俺は更新された緊急クエストを確認する。



【※ 緊急クエスト:ネザーヴェイルの完全召喚の阻止! ※】


進行目標①:ネザーヴェイルの召喚儀式の柱を破壊する。(4/6)

進行目標②:エルセリス王国の国王エドマンド、冒険者ダリオンの生存。

進行目標④:キーアイテム UR ネザーヴェイルの魂の欠片 x1の製作



なっ!!


俺とタピオカくんが進行目標④を見た瞬間、思わず沈黙する。


これはおかしい。本当にこれを作っていいのか?でもこの世界の神様がそうしたいなら……作るしかないか。


メニューを開き、必要な素材を確認する。竜呪冥晶一つと奈落爪剣モルスの残骸一つ……


先ほど魔剣があった場所を見ると、あそこには灰しか残っていないが、俺たちの目には「奈落爪剣モルスの残骸」と表示されている。


すぐにそれをストレージに回収する。


セリーナ:え? 精霊さん、ホントに作るの? 邪竜の魂ですよ?!

サクラリア:そうですよ、作らないと邪竜は復活しないでは?


俺はタピオカくんと目を見合わせる。これはここで話すべきことじゃない。


タピオカくんは妖精結界の腕輪を再び装備し、俺のフードの中でシルヴィアにも聞こえないように、セリーナたちに答える。


『あなたたち、これは神様からのクエスト、ということはこれを作るのはこの世界にとって必須かもしれない。私たちは指示通り作るしかないわ。』


セリーナ:そうですけど……

サクラリア:大丈夫ですよ、セリーナ。何かあったら精霊様たちはなんとかなりますよ。


『そうですよ、神様が邪竜召喚阻止のクエストを出しましたから、これも邪竜召喚を阻止の一環に間違いないわ。』


セリーナ:そ、そうですよね。私たちには指示通りすれば、邪竜は召喚できないわね。


セリーナたちも納得したので、俺はメニューでキーアイテム「ネザーヴェイルの魂の欠片」を製作する。キーアイテムのため、10秒で完成した。



UR ネザーヴェイルの魂の欠片


説明文:

「…………」



ストレージ内の「ネザーヴェイルの魂の欠片」の画像は、透明な水晶玉のなかに青い鬼火のようだ。それに説明文にはなにも書かれていない。当然、取り出す気はない、俺はすぐにストレージを閉じだ。


そして、当然のようにクエストが更新される。



【※ 緊急クエスト:ネザーヴェイルの完全召喚の阻止! ※】


—クリア—



………え? 続きがない?!


セリーナ:もうクリアしましたの? その魂はそのままストレージに入っていいの?

サクラリア:これでいいのでは? 精霊様が出さなければ、邪竜はずっと復活できないわ。

セリーナ:あ! そうですね、これでもう心配はいらないですね。ふふっ。


絶対にない。


明らかに今はまだその魂を出す時期じゃないだけだ。タピオカくんも同じ考えだから、ここは一緒に黙っておく。


今の展開は完全に元々のゲーム通り——「邪竜の魂が誰かに回収された」——ただ、その誰かがまさかの俺たちだっただけ。


それをさて置き、左肩の痛みは消えたけど、まだ何かに刺された違和感がズキズキ残ってる。


このまま小屋に帰って寝たいなぁ……。



緊急クエストはクリアした俺たちは、正直そのままセリーナの小屋に転移することもできる。


でも、せっかくシルヴィアが王の命を救い、派手に聖女デビューした。この流れで王と面会を約束し、シルヴィアの無実を晴らし、今の大司教がやったことを告発するため、そのまま残ってシルヴィアをサポートするしかない。もう乗るしかないですもんね。このビッグウェーブにね。



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迷宮都市の支配人であるロドリック侯爵は、武闘祭の延期と事件の無事解決を宣言したおかげで、闘技場内の秩序が段々と戻ってくる。


当然、事情調査のため、無関係の人はそのまま闘技場の外へ。闘技場は増援に来た騎士と衛兵たちによって完全に封鎖された。


呼ばれる前に観客席で休んでいる俺は、残り未破壊の召喚儀式の柱2本の場所をアルベルトに伝えた。彼もすぐに人を派遣して破壊に向かわせた。


その後、俺たちは男主人公のダリオンたちと一緒に王の前に案内された。


重傷から復帰したばかりで、少し疲れた顔の金髪イケオジの王は、近衛騎士たちに囲まれたまま王族専用の観戦台の席に座っている。周りは一緒に武闘祭を観戦していた貴族たちが立っており、まるで謁見の間のような雰囲気で話し合いが始まる。


シルヴィアは聖女として一応聖王国の偉い人だが、まだ正式に承認されていないので、彼女は王の前に跪こうとする……が、王は静かに手を上げて止めた。


「よい、礼は不要だ。立ち上がってくれ。君たちもこのままで構わん。」

「ありがとうございます、陛下。」


聖女シルヴィアは一番前に立ち、タピオカくんは俺のフードの中に隠れ、俺はわざとシルヴィアの後ろ横に立つ。こうすると見た目には「アリス」は聖女の下の者に見える。最後、ダリオンたちはなぜか俺の隣ではなく、その後ろに立っている。


当然、アリスは仮面で顔を隠し、フードも被っているため、王の隣の騎士たちに「仮面とローブを外せ」と言われるが、一応この事件の功労者、それとアリスを止められる人はここにいない。王はそれを止めた。


王の許しもあり、アリスの姿を隠したことを誰にも追求されない。王は穏やかな微笑みを浮かべたまま、シルヴィアに質問を始める。


もちろん、王の立場ではまだ正式に聖女と承認されていないシルヴィアのことを「聖女」と呼ぶのを避けてた。


「シルヴィア殿、及びその冒険者たちよ。そなたたちには感謝する。大儀であった。」

「陛下がご無事で何よりです。すべては女神様の導きでございます。」

「さって、色々聞きたいが……我が知る限り、シルヴィアという者は牢獄の中で自決したはずだが、それに聖女の聖杖は壊されたはず……。だがその杖は聖杖の面影がある。一体何があったかね。」


タピオカくんはフードから飛び出し、シルヴィアの側で彼女に提案する。


『シルヴィアさん、何を言っても証拠が小屋にいるでは説明しても証明できません。ですから、明日司教様をお連れして王様に詳しくお話しし、面会の約束を取り付けたほうがいいわ。』


今のタピオカは妖精結界の腕輪の効果で人間にはその姿が見えないため、シルヴィアは口で返事せず、頭を少し頷く。そして、王にこう答える。


「申し訳ございません、陛下。ここで詳しくご説明するのは難しゅうございます。それに、この場で申し上げるべきことではございません。もしお許しいただけるなら、明日証人と証拠をお連れして、改めて詳しくご説明させていただきたく存じます。」


意外な返事で王は少し考える。そしてシルヴィアに質問する。


「その証人は……司教か?」

「……。」


シルヴィアは沈黙する。当然、この沈黙は肯定に見える。名前は話していないが、シルヴィアと関わった司教といえば、誰しもマティルダ司教を思い浮かべるだろう。


ただ彼女は今、教会から手配指名中のため、ここで肯定すると司教の居場所を聞いて捕まえないといけない。聖杖は王国の範囲内で壊されたため、王は今の聖王国に頭を上げられない立場なので、指名手配の司教の情報を知って、それを動かないと、聖王国には何を言われるかわからない。


周りの貴族たちが少しざわつくが、王は彼らを無視してシルヴィアに話す。


「よい、明日の朝、ここのロドリック侯爵邸に来てくれ。」

「ありがとうございます。」

「ロドリック侯爵、よろしいかね。」


ロドリック侯爵は王に一礼し、答える。


「もちろんでございます。皆さんの部屋の手配は必要でしょうか。」


シルヴィアはそれを断った。


「お気持ち、まことに感謝いたします。侯爵様。ですが、今宵は既に戻るべき場所がございますので、御手配には及びません。」

「かしこまりました、シルヴィア殿。」


シルヴィアは今は何も言えない様子で、王は冒険者のアリスに質問する。


「その仮面の冒険者は……冒険者アリスで間違いないか?」

「はい、アリスと申します。」

「君は裁きの塔の40階層までにたどり着けたという報告が届いた……その強さを見て、本当らしいな。」

「……。」

「君とも話したい。明日、シルヴィア殿と共にここの侯爵邸に来てくれ。」

「承知いたしました。」


王は何かに気づいたように、再びシルヴィアに話す。


「シルヴィア殿、その……君の側にいる小さき者はどちらに?」

「申し訳ございません、彼女はすでにここにいません。」

「そっか。では我の代わりに、その小さい者にお礼を言ってくれ。」

「承知しました。」


王の話はダリオンとレオンに向く。


「そうだな、敵の魔剣使いと戦ったそこの二人も感謝する。ご褒美を与えよう。」

「「ありがとうございます。」」

「あとで第一騎士団長のアルベルトに話してくれ。」


その後、王は立ち上がり、騎士が横から声を拡大する魔道具を王の前に持ってくる。


「他の騎士と衛兵たちよ! 邪竜の召喚は皆の働きによって阻止された。大儀であった。……ロドリック侯爵、あとは頼む。」

「承知しました。」


王は軽く頭を頷き、近衛騎士に支えられて闘技場の裏へ入っていく。


王が見えなくなった後、残った貴族たち数名はすぐに聖女に媚びを売りたくて近づくが、面倒くさいので、俺達はすぐに小屋に転移した。


これで、緊急クエスト:ネザーヴェイルの完全召喚の阻止の幕は閉じる。



--------------------------------------------------------



セリーナの小屋に転移したあと。気が抜けたシルヴィアは、すぐに床に座り込む。


俺たちの帰還を見たマティルダ様は心配そうに近づいてくる。当然のようにここにいるの妖精の女王様も、興味津々にこっちへ飛んでくる。


みんながテーブルを囲み、俺が今日何があったかを話す前に、タピオカくんが先に口を開く。


『シルヴィアさん、説明は任せてもいいですか? 精霊くんと話したいので、私たちはちょっと離れます。』


ここでセリーナたちもチャット欄で話しかけてくる。


セリーナ:そうですよ! 精霊さんはあの魔剣に刺されたから!! 早く休んでて!


「心配しないで、もう大丈夫なのですから。HPも満タンです。セリーナの身体は何もなかったです。」


サクラリア:精霊様……刺されましたのはセリーナの身体だとしても、

サクラリア:刺された体験をしたのは精霊様です。しばらく精霊界に戻って、休んでください。

セリーナ:そうです、私の身体はもう治ったのはわかっています。

セリーナ:でも精霊さんが刺された後もずっと痛みを我慢しましたね。


「……。」


セリーナ:説明くらいは私たちに任せて、タピオカさんと一緒に休んでください。ね。


はぁ、まぁ~これも彼女たちの優しさだからね。断る必要はないよ。


「わかりました、ではお言葉に甘えさせていただきます。シルヴィアさん、セリーナ、サクラリア、説明をお願いいたします。」

「わかりました、精霊様とタピオカ様も休んでください。」


セリーナ:任せてください。

サクラリア:ゆっくり休んでてくださいね。


タピオカくんは俺の前に来て、こう話す。


『精霊くん、先にログアウトして。』

「はい……わかりました。」


こうして、俺はログアウトした。



リアルに戻り、真っ先に感じたのは左肩の違和感。こっちの体は何も刺されていないのに、実体験したせいで、左肩には何かに貫通した感覚が未だに鮮明に残っている。


怪我がないのに、なぜか左手が上手く動かない。幸い痛みはない……でもすごく嫌な気持ちだ。


時計を見てみると、今は四時前。


水を飲もうとしたところで、当然のようにタピオカくんからの通話が来た。スマホを手に取ると、珍しくビデオ通話だ。


今の格好は……大丈夫そうか。


応じると、そこにジト目なタピオカくんがこっちに見える。


「い、いや、タピオカくん。ビデオ通話で珍しいね。セリーナの肩は大丈夫?」

『ええ、彼女は何もなくて大丈夫よ。豆腐くん、服を脱いで。』

「え?」

『脱いで……。』


わかっている。深い意味じゃない。


知り合いの女性の前に服を脱ぐのは恥ずかしいけど、俺は上半身の服を脱ぎ、左肩を彼女に見せる。


「ほ、ほら、大丈夫でしょう。」


少し腕を動かして、タピオカくんに無事をアピールする。


『動かしづらいでしょう。』

「あ……」

『正直に教えて。』

「は、はい……少し……ま、まぁ、明日はいつも通りでしょう。」

『無事で良かったわ。守ってくれてありがとう。多分脳は刺された記憶がまだ鮮明なので、左腕はしばらく動かしづらいわよ。』

「そっちこそ、君が無事で良かったよ。このくらいは安いもんだ。」

『よくない! ……よくないよ。私がシルヴィアを庇わなくでもいいのに、いいえ、妖精の身体では庇っても意味がない。シルヴィアを魔法で治すだけの話……私が悪い。』

「バカだな。俺が知ってる君は、シルヴィアが目の前に魔剣に刺されそうと見えたら、.絶対かばう人だ。それは普通よ。」

『いいえ、そもそも私最初から全力でセルディスを撃てば、彼を無力化すればクエストはすぐに終わるはずだった。』


やべぇ、タピオカくんはすごく凹んでる。


えっと、どう話していいのか? 俺、こういう経験はほぼないんだけど。


「あ~クエストの目標は魔剣の破壊だからな。ゲームに慣れた俺たちには先入観で、『彼が剣を持ってるまま剣を破壊する』……的な? ほら、あの状況で味方の死者も出さずに、敵もほぼタピオカくんが倒したじゃないか。と、とにかく、結果オーライだよ。俺は大丈夫だから。刺されてもただ痛いだけ、怪我はないから、ね。だからもう凹まないで、笑って。」

『うん。』

「まぁ、今考え直すと、もし俺がセリーナのお嬢様スカートに着替えてたら、刺されなくて済んだよな。バカだな俺。」

『あ! あのお嬢様スカート、どんな攻撃も一回防げる効果があったわ。』

「だろう。今のセリーナのレベルなら、もう星月ドレスを頼らなくても大丈夫のはず。今後もあの装備メインにしたほうがいいかもな。」

『わかった……お礼に今度ラーメン奢るわ。』

「わざわざ青森まで行って、お前が奢ったラーメンを食うか?! バカかお前は!」

『しょうがないね、インスタントラーメンをあんたの家まで着払いで送るわ。』

「ちょ……やめて、まじでやめて。」

『ふふっ、ふはははっ!』

「ふはははっ!」

『そういえば、豆腐くんもなかなかいい体してるね、ほ、ほぅ。』

「いやん~タピオカくんのエッチ。」

『良いではないか、良いではないか~!』

「あ~れ~~。」


俺たちは再ログインするまで、このまま笑いながら“普通”に世間話を続ける。


左肩の違和感はまだ少し残ってるけど、今はこのバカバカしい会話が、すごく心地いい。


スマホの画面越しに、タピオカくんの笑顔を見ながら、俺は小さく息を吐く。


……よかった。タピオカくん、笑ってくれてる。


明日はどうだろう。シルヴィアの無実を証明して、大司教の悪事を暴く……何もなければいいけど。


でも今は……この瞬間だけは、ただ笑っていられる。それで十分だ。

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