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51 フラグは立てた?

転送陣に入り、覇者の塔の36階へ逃げた俺たちは、いつもの短い廊下で一休みする。


「ふぅ……意外とあっさり倒しましたね。」

『そうですね、結局いちばんの敵は匂いでした。』

「同感です。」


セリーナ:でも、どうして突然こんなに弱かったの?

サクラリア:えっと……精霊様が言っていた兵隊たちの人数バフがなくなったからでは?

セリーナ:それでも、あのクラスのボスが手首を簡単に斬り落とされるなんて信じられません。


『どうでしょう、ゾンビだからでは?』


セリーナ:ゾンビだから?


『ええ。普通のモンスターなら魔力で肉体を強化して皮膚も硬くなるはずです。でもゾンビは腐敗した死骸。力も持久力も弱く、骨格も脆い。生きた肉体よりはずっと脆いんです。魔力で強化されても、生きている体ほどには耐えられないでしょう。』


セリーナ:すごいです!タピオカさん、すぐにそこまで読めるなんて!


『いや~私たちの世界には、こういう関連の書物が多いんですよ。ははっ。』


……絶対ラノベだろう。


「そうですね。タピオカくんの考察に加えて、セリーナのレベルは団長より高いですし、装備の質も違います。UR級のこの短剣はあなた達の想像以上に鋭い。さらに団長は“軍隊がないと弱い”という設定…コホン、性質を持っています。だから一瞬で倒せたのでしょう。HPバーは、もしかすると鎧の耐久性を示していたのかもしれません。」

『鎧にHP?』

「はい。団長の最初の攻撃をパリィした時、怯んだ隙に頭へ連続攻撃しましたが……刃が兜に当たっただけで、斬り込んだ感触はまるでありませんでした。まるで兜に受け流されたようで、削れたHPもほんのわずかでした。ですが、タピオカくんの話の通り、兜なしのゾンビ兵が脆いと分かったので、団長も同じく本体を狙うしかないと判断し、鎧の隙間を突いたのです。結果は見ての通りです。」

『でも二回目の召喚で、召喚陣が出なかったのはどう説明します?』


サクラリア:これは簡単ですよ。上位の召喚魔法なら空中でも発動できます。

サクラリア:でも普通の召喚魔法は平らな地面に魔法陣を構築しないと発動できないのです。


「でも戦闘開始の時、ワタシは〈ロックブレイク〉で団長の足元の地面を隆起させましたが、発動は止められませんでしたよ。」


サクラリア:構築時には平らな地面が必要なんです。

サクラリア:魔力を走らせて魔法陣を描くから。

サクラリア:だから一度魔法陣が完成した後なら、地面を隆起させても阻止できないのだと思います。

セリーナ:サクラリアすごい!こんなことまで知ってるなんて。

サクラリア:お母様に教えられたのです。


「なるほど。」

『なるほど。』


……できれば戦う前に教えてほしかったけど、タピオカくんに目を合わせて、それ以上は言わないことにした。


「では周回時は団長を瞬殺できますね。」

『入ったらすぐ団長の足元の地面を破壊すれば、瞬殺できますね。』

「そうですね。できればあの階には長居したくないです。」

『ほんと臭かった……お風呂に入りたい!』

「塔に入ってからまだ1時間くらいです。あと5階我慢しましょう。」

『じゃあハーブティーを出して、この匂いを消したい。』

「ワタシも飲みたい……。」

『だめです!あなたが飲むと焼き鳥丼の効果が上書きされちゃいますよ。』

「とほほ……。」



俺は花の香りのハーブティーをストレージから取り出し、タピオカくんに渡した。


セリーナ:精霊さん、ハーブティーでタオルを濡らして、軽く身体を拭いてください。

セリーナ:少しでも匂いが取れるはずです。


あ、なるほど。オシボリのように軽く拭けば、この焦げ臭さも多少は消えるかもしれない。タピオカくんを見ると、彼女はハーブティーに水を加えて適温に変え、魔法少女から元のサクラリアに戻ると、そのままティーカップに入ってハーブティー風呂状態になっていた。どうやら、俺がセリーナの身体を拭くことは気にしていないらしい。


『あ~気持ちいい!いい香り!』


俺はセリーナの言葉通り、ハーブティーで濡らしたタオルで身体を拭きながらタピオカくんに話しかける。


「そのドレスは濡れないの?」

『このドレスは魔力で作られているから濡れないのよ。』

「なるほど……。では、自由に服を変えることも可能なのですか?」


サクラリア:それはできません。このドレスは妖精の個性によって決められているのです。

セリーナ:魔力で作られているから、変身するとき光になって消えるんですね。


『あ、そういえばサクラリア、セリーナ。新しい小屋のクローゼットはもう見ました?』


サクラリア:はい!見ました!かわいい服がたくさん入っていましたわ!ありがとうございます!

セリーナ:私も見ました。高そうな服が多くて……本当に着ていいんですか?


『もちろん。二人ともかわいいんだから、綺麗な服を着ないと勿体ないわ。気にしないで。』


セリーナ:ありがとうございます、タピオカさん、精霊さん。

セリーナ:それと……貴族の女性が着る下着も沢山入ってます。

セリーナ:私も知ってはいますが、実際に付けたことはないんです。

セリーナ:こんな高いものを付けてホントにいいの?


『いいのいいの。若いですから、ちゃんと胸を支えて形を整えるのが大事なの。精霊くんがそのために作ったんだから、安心して使ってね。』

「はい、前は借金や仕事で余裕がなくて作れませんでしたが、今はようやくちゃんとしたものを用意できました。」


セリーナ:へへっ、ありがとうございます。


うん、タピオカくんの指示で作れるインナーはほぼ全部作った。アラクネの糸も大量に使ったな。


セリーナ:精霊さん、あとで付け方を教えてもらえませんか?


お、男の俺がセリーナにブラの付け方を教える?!……紳士なゲームで一応知識はあるけど、この場合は俺が直接身につけで教えることになるよな。どう返事すればいいんだ……。


『精霊くん、今日の攻略が一段落したらセリーナに教えてあげて。』


同時にチャット欄にタピオカくんから日本語でメッセージが届いた。


タピオカ:これは仕方ないことです。セリーナの身体に憑依している以上、避けられません。

タピオカ:私は別に気にしていません。逆に男であることを隠すなら最後まで隠してね。

タピオカ:付け方は自分でネットで調べなさい。私は教えませんから。


……本当にサポートがタピオカくんで良かった。もし相手が他の女性たちだったら、きっと余計な色眼鏡で見られていたはずだ。


俺は普通にセリーナへ答えた。


「いいですよ。一段落したら付け方を教えますね。」


セリーナ:ありがとうございます、精霊さん。

セリーナ:あれ?今の言葉は?

サクラリア:えっと……タピオカ様?


『ええ、私です。試しにチャットで話してみて、あなたたちが分かるかどうか試したんです。』


セリーナ:ごめんなさい、やっぱり精霊さんたちの文字は読めないんです。

サクラリア:はい、わたくしも読めません。


『やっぱりか、私たちは口で話すしかないですね。』


その後、タピオカくんはティーカップから出て、タオルの上でゴロゴロしながらセリーナとサクラリアと服の話を続け、しばらく休憩した。俺も応急処置としてセリーナの身体と髪を軽く拭き、焦げ臭さは一応目立たなくなった。


「では、引き続き塔を攻略しましょう。」

『おう!!』


セリーナ:おう!

サクラリア:おう!



36階のボスは――裏切りの氷刃の騎士セルディス。


メインストーリーに登場した中ボスの強化版で、名前通り“裏切りの騎士”の影だ。物語では彼は邪竜復活組織「奈落の七印」の幹部の一人で、迷宮都市の武闘祭で王子を刺し、その血を媒介に最初の邪竜の魂を召喚した。


その後、邪竜の肉体構築の儀式の時間稼ぎとしてプレイヤーと戦い、戦闘の最中に召喚された邪竜の魂が彼の肉体を借りて現世に蘇る。やがて彼の身体は〈若き邪竜〉へと変貌し、プレイヤーと激闘を繰り広げる。プレイヤーはその戦いに勝利したものの、邪竜の魂は誰かに回収されてしまった。


……迷宮都市、武闘祭。俺とタピオカくんも初見で「はぁ~フラグ立った」と同時にツッコんだ。


だが今はメインストーリーの前段階。だからこのイベントは発生しない……はず。とはいえ、1ヶ月後の武闘祭で何かが起こりそうな気がする。


少し休憩を挟んでから、俺たちはボス部屋の扉を開けた。そこには王国騎士団の銀白の鎧を纏い、短い茶髪の30代ほどの騎士――セルディスがすでにエリア中央に立っていた。


戦い方?簡単だ。人間だから呼吸を止めれば終わり。塔の中ではあくまで影の存在なので、途中で〈若き邪竜〉に変身することはない。攻略サイトによれば〈若き邪竜〉は別のボス扱いだ。もちろん俺たちも万が一に備えて、〈若き邪竜〉戦の攻略動画をしっかり勉強してある。



【裏切りの氷刃の騎士セルディス Lv.46】



戦闘範囲内に一歩踏み込むと名前とHPバーが表示され、騎士セルディスが動き出した。腰の片手剣を抜き、高く掲げて大声で叫ぶ。



「ははははっ!来るのが遅かった!最後のピース――王家の血はすでに手に入れた!復活の儀式はもう始まっている!貴様らには阻止できない!この俺を倒しても……」



メインストーリー開戦時のセリフだ。ゲームではこのセリフが終わるまで無敵状態……知っているからこそ、今がチャンス!


セリフが終わる前に、俺はすぐに彼の頭を水玉で覆った。これで終わり――と思ったが。


なんと息を止めたまま突っ込んできた!


セルディスは最初の一撃は必ず上から振り下ろすので、パリィは容易。俺は唐辛子の粉を多めに水玉へ投入した。



「小癪な真似を!隠れても無駄だ!」



……いや、隠れていない。


目は開けられず、呼吸もできない。彼のHPはじわじわと削られていく。一本目のHPバーが消えかけ、彼は苦しみながら叫ぶ。



「冒険者風情が!偉大なる邪竜様の復活を邪魔するな!!」



さらに続けて――



「食らえ!【グラキエス・テンペストゥス】!!」



剣技使う前のセリフだ!彼は剣に魔力を込めると氷刃が伸び、片手剣のリーチが長刀のように変わった。


まず飛び降りの斬撃、続いて舞うような剣技。……ん?頭が水玉の中なのに、なんで声が聞こえるんだって?そう、そこ気になるよね。


セリーナ:えっと…騎士様の頭の上に文字が出てますけど、精霊さん、あれは?


「はい、それは未来に起こる出来事を示しているものです。」


セリーナ:未来?!

サクラリア:あらまあ!


当然、セルディスの頭は水玉に覆われているので声は聞こえない。だが俺たちの視界には、彼のセリフが頭上に吹き出し形式でしっかり表示されていた。まるで「声が出せないなら文字で伝えます」とでも言わんばかりの仕様だ。


タピオカくんは呆れ顔でこう言った。


『運営さん、演出に命かけすぎでしょ。まあ第一章の山場だから仕方ないけど。』

「ですが、そのおかげでボスの行動が分かりやすくなっておりますね。」

『確かに。』


セリーナ:精霊さん?!じゃあこの騎士様はモンスターじゃなく、未来から来た人ですか?!


「いえ、そうではありません。同じくこの塔が生み出した影のような存在でしょう。」


俺たちはセルディスの剣技が空振りするのを眺めながら、外野で談笑していた。


ずっと呼吸できないまま、セルディスのHPバーはすでに二本削れた。すると彼の頭上に新しいセリフが現れる。



「ちぃ!なかなかやるな、〈奈落爪剣モルス〉さえ手に入れたければ……ちぃ!儀式はもうすぐ終わる!これ以上邪魔はさせない!!」



「大技が来ます!」


セルディスの前の地面に、横2メートルほどの太い直線の赤い攻撃範囲が出現。彼は静かに剣を構え、風が刃に集まる。渦は槍の形を成し、氷のような輝きを帯びた。



「【スパイラル・シェイバー】!」



叫びと同時に剣は旋風を纏い、竜巻の槍となって正面へ突き出される。轟音と共に空気が裂け、闘技場の壁は氷漬けになったあと粉々に砕け散った。


……ただ、頭が唐辛子水で覆われていたセルディスは攻撃方向を誤り、俺たちのいる場所とは真逆に技を放ってしまった。しかも壊れた壁は不思議な力でゆっくりと自然修復していく。


ボスには失礼だが、俺とタピオカくんはその大技よりも壁の自動修復機能の方に目を奪われていた。


「地面は戦闘後もボロボロのままですが、この闘技場の壁は自然に修復するのですね。」

『多分、壁は戦闘範囲外だから修復しないとエリアが広がりすぎるんでしょうね。』

「なるほど、そういうことですね。」


セリーナ:せ、精霊さんたち……落ち着いてますね。もしこの技を受けたら危ないですよ!

サクラリア:そうです!二人とも落ち着きすぎです!


……そう?こんな溜め技は発動前からバレバレだ。最初の旋風を溜める時に赤い範囲の外へ逃げるか、後ろに回り込めばいい。タンク系は移動力が弱いから危ないかもしれないが、無敵時間もないので溜め中に攻撃したり、発動中に足を払えば止められるだろう。鎧が着ていなければ、ハメ技で速攻で倒せる。


俺と一緒に長くVRMMORPGをやってきたタピオカくんも同じ考えで、すでにセリーナたちに説明していた。


『大丈夫ですよ、二人とも。あの技は長く溜めないと使えません。溜めている間に範囲外へ移動すれば安全ですし、逆に攻撃のチャンスです。』

「そうですね。タピオカくんの言う通りです。ワタシたちは事前にこのボスの攻撃パターンを学習済みです。」


セリーナ:それも……そうですけど。


「一応、セリーナも派手な短剣技を使えますよ。」


セリーナ:そうですか?!


「試して自分が使えそうな技を考えてください。」


セリーナ:うん~あ、あれ?私こんなにたくさん技を使えるんですか?!

セリーナ:これを使えばすごいダメージを与えられますよ。でもどうして使わないんですか?精霊さん!


「剣技は発動中に自由に動けません。広範囲技ならまだいいですが、単体攻撃だと周囲の敵からすれば格好の的です。空振りすれば、このボスのように危険です。だからワタシは極力使わないのです。飛び道具......魔力を飛ばす剣技もありますが、弾速が遅く回避されやすいのです。」


セリーナ:なるほど。

サクラリア:では、このボスが剣技を使う時に頭を狙うのは可能ですか?


「はい、そのセリフが出ると大技が来ますので、その時に首を狙えば大ダメージを与えられます。ただ今回は初見なので水玉で倒します。タピオカくんが良い弓を手に入れたら、首の隙間を狙って大ダメージを与えられるかもしれません。」


セリーナ:おお!

サクラリア:すごいです!タピオカ様!


『精霊くん、しれっと私のハードル上げたわね。でもこの世界にはキャンセル技はないの?』

「キャンセル技があるかどうかは、まだはっきりとは分かりません。ただ、初級の剣技ならある程度は自分の意思で制御できます。ですが中級以上になると、最後まで撃ち切らないと止められません。上級については、まだ修得していないので何とも言えないのです。」

『確かに、それなら使わない方がいいわね。この世界では首や弱点を狙えば剣技以上のダメージが出るし……はぁ~、早く〈雷鳴の羽弓〉を手に入れたいものだわ。』

「モンスターの皮膚は硬い敵もいますが、UR装備なら人間相手は鎧の隙間を狙えば簡単に倒せます。同じ理由でワタシたちも頭と首が弱点です。油断はできません。」

『だから、あなたはローブを着てるんだね。』


最初はただ装備枠を埋めるために作ったローブだったが、改めて見るとこの白いローブは定番の魔法使いの装備で、フード付き、膝までの丈で全身を隠せる。以前ヤークに刺された時も破損せず、全身を守るには最適だった。


「はい、ワタシたちがこの世界にいる時、身につけた装備は壊れないようです。このローブはドレス姿を隠すこともできます。星月ドレスは肩や胸元が開いていますから、それをカバーするのです。」

『でもこのマジックローブは“N”装備よ。もっと可愛いローブもあるのに。』

「魔法学園のローブは作りましたよ。でもセリーナが可愛すぎて恥ずかしいと言われましたので、このローブのままにしました。」


セリーナ:え?私はただの田舎の村娘ですよ!魔法学園なんて通ってません!

セリーナ:こんな綺麗な格好で歩くなんて無理!見られたら恥ずかしい!

セリーナ:それにあのローブは太ももまでだから足が守れません!油断はダメです!

サクラリア:魔法学園のローブ?


「はい、これです。」


俺はストレージから濃紺の魔法学園ローブを取り出した。赤い縁取りの襟が闇に映え、太ももまでの丈が軽やかさを感じさせる。二つ並んだ金属ボタンが冷たく輝き、明らかに高級品だ。


サクラリア:あら、このローブ可愛い!セリーナに似合います!

セリーナ:駄目です!足が隠れてない!アリスの姿はできる限り隠すべきです!


『わかりました、では精霊くんがいないの時に着ましょう。』


セリーナ:え?!


「セリーナ、このローブは今の着ているマジックローブの何倍もの防御性能があります。魔法攻撃も少し上がります。セリーナは機動力が高いので、太もも丈の方が逆に動きやすいでしょう。ワタシがいる時はメニューの力でマジックローブが邪魔になりませんが、あなたの時は走る時は邪魔だと感じませんか?」


セリーナ:くっ……そう思います。

サクラリア:ではセリーナの時はこのローブに決定ですね!

セリーナ:サクラリア!

サクラリア:大丈夫です!セリーナは似合います!わたくしが保障します!

セリーナ:違う!目立つんです!


『何を今さら。セリーナはまだ自分のことをただの村娘だと思っているの?』


セリーナ:私は普通の村娘ですよ。


『はぁ…自分を低く見すぎじゃない?前は痩せて古い服ばかりだったから気づいてないみたいだけど、今のセリーナはずっと小綺麗。多分お母さんの若い頃に似てるんだと思う。十分な食事や綺麗な服を着ている姿は、村娘というよりどこかのお嬢様に見えるくらい。どうせ目立つなら、堂々と好きな服を着た方が得だと思うよ。』


セリーナ:でも!


『でもじゃない!サクラリア裁判官、審決を!』


サクラリア:はい~!セリーナの時はこの魔法学園のローブに決定です!


『わ~い!バチバチバチ~!』


セリーナ:もう!話聞いてます?



……うん、皆さんは忘れているかもしれないが、今は一応ボス戦の最中だ。俺は水玉を維持したまま、騎士――セルディスの最後を見届けていた。


彼は呼吸できないまま、最後のHPバーが削られ、両手を天に掲げる。勝利を確信したセリフが、彼の頭上に吹き出しで現れる。



「うはははははっ!時間稼ぎはもう十分だ!儀式はすでに完成する!邪竜の魂は蘇る!!」



そのセリフが吹き出しから消えると同時に、彼は俺以外の全員に完全に無視されたまま、光の粒子となって散り……消えていった。



【名前:セリーナ】

レベル 54 → 55


【名前:サクラリア】

レベル 46 → 47


【勝利報酬】

・ルーンストーン ×1

・氷結の欠片 ×2

・凍結の秘薬 ×3

・騎士の標準剣(損傷品)×1



哀れな騎士――セルディスよ。女性陣が君のことをすっかり忘れてしまったとしても、俺だけは……いや、多分、恐らく、君のことを忘れないと思う。

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