2.生徒会
「さて、それでは基礎的な部分になりますが、この授業で振り返りましょう。
まず、あなた方はそれぞれ生まれついての魔法の能力を持っているはずです。
しかし、その能力は決して無制限に使えるわけではありません。」
デイジー先生の魔法の授業が始まった。今話してるのはあくまで復習だから基礎中の基礎の部分なんだけどな。
「あなた方には生まれつき魔力貯蔵値という魔力を蓄える力が決まっています。
たとえば、アイリスさんは魔力貯蔵値160よね?」
「はい、その通りです。」
「それに対して、アイリスさんの能力のブリザードコアは魔力消耗値が80ですね。
魔力消耗値は1時間発動するにあたり消耗する魔力値のことです。
つまり、アイリスさんの魔力貯蔵値ですと、ブリザードコアの能力は2時間しか使えないことになります。」
「先生、お言葉ですが、ブリザードコアほどの能力を2時間も使えれば十分武器になりますわ」
「確かにアイリスさんのおっしゃるとおりです。
全てが比例するわけではありませんが、魔力消耗値はその魔法の効果を表しているともいえます。
魔力消耗値80の魔法は相当上位ランクの魔法ということになります。
しかし、その高い魔力消耗値の魔法を使いこなすためには、それだけの魔力貯蔵値が必要になります。」
「それはおっしゃるとおりですわね。」
「セブンスナイツ第7位の実力を持つアイリスさんでさえ魔力貯蔵値は160です。
ガーネット帝国の国民の平均魔力貯蔵値が40と言われています。
この学園にはエリートが集まっていますが、それでも平均値が60です。
つまり、多くの学生が仮にブリザードコアの能力を持っていても使えないことになります。」
「わたくしの才能あってこそのブリザードコアというわけですわね」
「そう言えますね。ただ、わたしが言いたかったのはただ闇雲に魔法を使うべきではないということです。
魔力貯蔵値は一度使うと24時間は回復しないという特性を持っています。
この魔力貯蔵値の残りを考えながら、日々魔法を使って欲しいのです。
いざ、魔法が使いたいときに使えなかったら意味がありませんからね。」
そう纏めると同時に終了のチャイムが鳴る。
「それではこれで授業を終わります」
ようやく、魔法の授業が終わった。
正直、魔法があまり使えない俺からすると面倒な授業だったりするんだよね。
そう思うと先生がハッとした表情で言った。
「すみません、最後に一つ言い忘れました」
なんだ先生まだ言うことあるのかよ
「最近、マジックハントと呼ばれる集団による魔法使いを狙った悪質な犯罪が相次いでいます。
皆さん知っているかとは思いますが、くれぐれも注意してくださいね」
マジックハントか、そういえば最近話題になってるな。
高レベルの魔法使いが、低レベル魔法使いにリンチされるって事件だったな確か。
ま、俺みたいな低レベル魔法使いには関係ない話だね。
「それでは、本当に今日はこれで授業はおしまいです、お疲れ様でした!」
今日の授業はこれで終わりかー、じゃあ生徒会に行きますか!
俺が所属している生徒会には9人のメンバーがいる。
まず、三年生が生徒会長のフーマ先輩と、副会長のレイラ先輩。
フーマ先輩がインテリな分、レイラ先輩は活発な人なんだ。
そして、二年生がアルト、アイリス、シェリー、そしてこの俺ルクスだ。
一年生にはこの前俺を褒めてくれたエマの他に、生意気なテディと、常にクールなジンがいる。
生徒会室には真ん中に大きな丸い机がある。そして、その丸い机の前に各々の椅子が置いてある。
会議がしやすい形態となっているわけだが、今はみんな会議をしているわけではないみたいだ。
丸い机を囲んで雑談をしてる。
すると、後輩のテディが俺が生徒会室に入ってきたことに気づき声をかけてきた。
「お、先輩!剣術大会優勝したみたいっすね!でも、魔法ありなら俺にも勝てないだろうけど」
「テディ、何言ってるの!あんただって魔法がなければ何も出来ないって見方ができるわよ!」
「ヘーイ!レイラ先輩のおっしゃるとおりで!」
「この魔法全盛の時代だからこそ、先輩のような剣術馬鹿は貴重ですね」
「ジン、お前は褒めてるのかけなしてるのか」
「褒めてるんですよ、ルクス先輩」
まったくこいつらは。先輩を敬うってことが出来ないのか。
まあ、魔法ができないのは事実だから仕方ないんだけどな。
「それにしてもアルトが負けるなんてねー」
アイリスがにやけながら、アルトをからかう
「うるさい、剣術に関してはルクスが上なんだから仕方ないだろ」
「あたし、てっきりアルトって無敵人間かと思ってたわ」
「そんなわけないだろ、上には上がいるよ」
アルトが謙遜してる。でも、
「剣術はともかく、魔法合わせてアルトより上なんていないだろ」
「いるさ。世の中は広い。ファイブオブパラディンにはまだまだ敵わないさ」
「そうか?お前ならファイブオブパラディンの連中も倒せそうだけどな」
「そうなれるよう、日々努力の毎日だね」
なんか謙遜してるぞ、こいつ。
お前が努力までしちゃったら誰も追いつけないじゃねーか。
「あら、入学時にわたくしの自信を粉々に砕いたアルトに上がいたんじゃ困るわ」
「そりゃあ、アイリスごときには負けないさ」
「なんですって!もう一度わたくしと勝負しないさいよ!」
「やめときなって、勝てないから。もう少しアイリスも謙虚になればいいのに。
あ、でも謙虚になったらそれはもうアイリスとは別人だね!」
アルトがアイリスをからかって笑う。
アルトは普段やさしいんだけど、アイリスにだけは意地悪するよな。
これってもしかして、好きな女の子を苛めたい的な奴か?
「今度行われるマジックコロシアムで見てなさいよ!絶対に負かしてやるんだから!」
「そっか、もうそんな時期か。」
「あんたねー、こんな大事なイベント忘れてたわけ!?
みんな、このために一年間努力してるのよ!?」
「別に俺はこの学園でトップになるために努力してるわけじゃないからさ。」
「余裕ね!足元すくわれないように気をつけなさい!」
「わかった、善処するよ!」
そうか、もうマジックコロシアムの時期なのか。
5月に行われた剣術大会の一ヵ月後に行われるマジックコロシアムは、正真正銘スレビア学園最強を決める戦いだ。
魔法を使ってもいいし、何でもありの戦い。
ルールは二つ。一つは半径1キロメートルの円から出てはいけない。
もう一つは殺してはいけない。
ただ、それだけだ。
場外にならない限りは、気絶等の戦闘不能状態か、どちらかが降参するまで戦いは続く。
この前行われた剣術大会は、剣の腕を競うための大会だったから魔法は禁止だった。
だから、俺は優勝できたんだ。
でも、今回は魔法を使える。
魔法を相手にどこまで自分が通用するのか試したい気持ちと、怖い気持ちが半々だった。
昨年は散々な結果だったからな。
「お、そういや、今日掲示板にマジックコロシアムの対戦表が貼られてたぜ!」
テディが会話に参加してくる。
「へー、気になるな」
「アルト先輩は第一シードなんで気にする必要ないっすよ。どうせベスト8までは余裕っす!」
「足元すくわれないよう、警告されたんでね。」
アルトが対戦表を見に行く。
「ま、俺も余裕だろうけど一応見に行くか!」
生徒会長もアルトに続いて対戦表を見に行った。
その他の生徒会メンバーも彼らに続いて掲示板へと向かう。
やっぱり、何だかんだで皆意気込んでるな。
そりゃあ、この大会の結果で今年のセブンスナイツが決まるわけだしな。
自分の学園での位置づけを決定付ける大事な大会だ。
悲しいけど、正直剣術大会などとは大会の価値が違う。
生徒会の連中だけでなく、みんな目の色変えて臨むことだろう。
俺もセブンスナイツにはなれないだろうけど、一応見に行っておくか。
「あ、先輩は見に行く必要ないですよ。」
自分はもうトーナメント表を見てるからだろう。
テディだけが余裕の表情で椅子に腰掛けている。
その椅子を俺の方に回し、俺の目を見ていった。
「先輩の一回戦負けは確定してるんで」
「え?どういうことだ?」
「先輩の一回戦の相手は俺ですよ、ご愁傷様でした。」




