23話 奴隷
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「どうして私を死なせてくれないんですか!どうしてっ....どうして」
少女が叫ぶ。
よく見ると髪や肌が荒れ果て首筋や手足に青アザや出血が窺える。
服もボロボロの貫頭衣のようなもので首に紋様のようなものがあった。
「お前、奴隷か?」
「…..そうです」
辛そうに言う事から少女の奴隷歴は短いのだろう。
長くて1ヶ月位じゃないだろうか。そんな短い期間で目が死ぬ程の扱いは普通の
奴隷でもなかったようなとカインは考えながらサイクロプスに意識を裂く。
サイクロプスは自身が作った粉塵のなか手応えがなかったのに気付いてないのか
雄叫びをあげている。
「うるさいな.....ちょっと待ってろ」
「えっ、いいですっ!私の事なんていいから逃げてください!そいつはB+のサ
イクロプスなんですよ!」
心こそ磨耗して目が死んでいるが根は優しい子なのだろう。
カインは、少女の叫びを無視してゆっくりと歩きながら詠唱を紡ぐ。
《力と混沌を司るもの今此処に指し示せ。世界を呑み星を砕き宇宙さえも塵と化
すその力、さあ!我意に応え顕現せよ〈混沌召喚〉(威圧抑えろよ)》
詠唱が完成すると同時に空中に魔法陣が現れ触手が魔法陣に奥から手をかけ現れ
る。その姿は、全身が触手に包まれ生理的嫌悪感がハンパない。威圧感もカイン
が言ったからこそサイクロプスや少女が震える程度で済んでいるが通常なら一瞬
で死んでいただろう。
《主よ、今宵は何用か》
「取り敢えず”アレ”殺しとけ」
《了解だ。あのような矮小な存在直ぐ終わる》
因みに、この悪魔は元々サタンの部下であったがカインに下されカインの
配下になったのである。尚、こういうパターンは結構ある。
《さて小僧逃げるのなら一瞬で殺してやる。だが、向かって「ホブァァ!!」言
葉も理解出来ないか...》
サイクロプスは、自分の本能を無視してニャルラトホテプに突進する。
知能がないうえに本能にすら忠実でない事が力ならS-に迫るのにB+である所以
だろう。
《忠告はした精一杯苦しむといい。〈火、水、風、土、それ全て黒となる〉》
最高位の悪魔が数億年時を経て獲得する魔法言語を詠う。
ニャルラトホテプが触手を掲げ極大の火が水が雷が土が黒の魔力に染まる。
やがてそれは、圧縮されて最後には極小の五つの矢に変わる。
《〈透過矢〉》
黒い各属性の矢が頭と四肢を猛スピードで通り抜ける。
そして、サイクロプスがニャルラトホテプに突進をしようとした。
瞬間、
「ホブァァガァァァァアアアァァアア!?」
体がに激痛がはしりサイクロプスは転倒し転げ回る。
〈透過矢〉その能力は、黒く染まり凶悪な魔法に変化した。
元来〈透過矢〉とは、相手に外傷を与えずに攻撃する精神魔法の類であったがこ
れは黒の魔力のせいで死ねることなく火に焼かれ水に内部から破壊され風に裂か
れ土に押し潰される痛みを永遠に感じる事になる。
《ふん、汚いな。〈暗黒穴〉》
苦しむサイクロプスの頭上に黒い穴が現れサイクロプスは吸い込まれた。
少女は以前固まっていてカインは腕を組んで見ている。
ニャルラトホテプはかっこいい?ポーズを決めて最後
《常闇のなか苦しむがいい》
「お前のそのかっこつけ癖治らないのか?」
《決めさせてはくれないか?サタン殿は特に何も言わなかったのだが》
このニャルラトホテプ、普段は仕事も真面目に取り組む悪魔なのだがちらちらと
ナルシストが見え隠れするのだ。
「アレはまあアレだからな....で終わったから話をするか」
「.......…」
「おお、固まってるな。早く起きろ」
「.....……へっ、そうですねえぇぇぇぇ!?。何ですかそれ!?凄く怖いんですけ
ど!ていうかあれサイクロプスは....って消えてる!?」
華麗なまでのノリツッコミを炸裂する。
ニャルラトホテプに恐怖してサイクロプスに驚く。
忙しい限りである。
「うるさい」
「むぐっ!?」
「おい、どうした?」
「んー!」
どうやら話せなくなったみたいだ。
するとニャルラトホテプがカインに
《微量の魔力をその紋様から感じるぞ》
「なんだと?....なるほど、我の言葉が命令と認識されたか」
「んー!んー!」
「喋れ」
「ふはぁっ!はぁはぁはぁ....」
少女は、息切れしている。
どうやら命令に反すると無理やり体が強制するらしい。
「面倒だな....解くか。おい、名前は?」
「はぁはぁっ……えっ?ソフィアですけど」
「ソフィアだな。………これじゃない。これじゃ、おっ!これか」
カインは、空中に渦を発生させて腕を突っ込んで何かの玉を取り出す。
それをソフィアに近付けると玉が何かを読み込むように発光する。
《you,sey,YES!》
玉は話し出した。英語だ。
「いえす?」
《Oh!YEEEEEEEE!》
玉が激しく発光する!
《奴隷痕確認。奴隷解放モードに移行。.......奴隷解放。ミッションコンプ
リート》
いきなり英語を止め一言呟いたと思うと今までより最も輝き小規模な爆発を起
こした。
「うん、終わりだな」
「えっ?え?」
「奴隷解放に成功だ」
そう言うとカインは手鏡を取り出し首筋を写した。
「.....嘘っ」
「本当だ。よく見ろ」
ソフィアの首筋には紋様などなく多少の傷しかなかった。
口調はアレだが声は優しさに溢れていた。
「うっ」
「ん?」
「うっうううっっううう」
「いいぞ。泣け。お爺ちゃんが慰めてあげよう」
子供のように泣きじゃくるソフィアをみてカインは前世の口調に戻っている。
ソフィアは、カインの胸に倒れ込む。
「おっと」
「うううっ、おとーさんとおかあーさんがしんじゃってうぇ
盗賊に捕まってうっうぅみんなが言うんですっ『罪人』『黒の悪魔の狼』てぇ」
どうやらソフィアの容姿は一般的に何か悪いものの象徴のようだ。
ソフィア今まで溜め込んだものが溢れて出るように泣き続ける。ソフィアは自分
の境遇を話し続ける。
その後、カインはずっとソフィアが泣き止むまで胸を貸し続けたのであった。
ーーー続くーーー




