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9話 善民拉致事件②

ーここで霜佳(そうか)と水雨(みう)がビックモールにいた時に遡る。

「今日は私の用事だから、水雨はどうする?」

「んーお姉ちゃんについてまわる!」

「じゃあ付近でうろうろしてて」

「はーい!」

二人は化粧品売り場に向かった。

何せ化粧品を買うことがビックモールに霜佳がきた目的だったからだ。

「お姉ちゃん!こ、これを買うの!?もしかして…彼氏でも出来た〜?」

平然と高価な品を迷わずカゴに入れるのを見て、水雨はつっこまずにはいられない。

「なわけないでしょ。良さそうって思っただけ」

「ちぇっ、つまんなーい」

「ぐだぐだ言ってないで、欲しいものあるならカゴに入れなさい」

ーガサ

すると、いきなりカゴが重くなるのを感じ、無言で水雨を睨みつける。

鋭い剣幕に恐れ慄いた美雨は、五個入れた化粧品の中から二つに絞りカゴに戻した。

そうして、霜佳は手際よく会計を済ませる。

買ってあげた物を渡そうと、辺りを見渡しても水雨が見つからない。

「ねぇ、見て!お姉ちゃん!可愛いイルカのぬいぐるみ!」

店を出ると、ぎゅっと抱きしめてこちらに満面の笑みを浮かべている水雨がいた。

「もーまた増えちゃうでしょ?戻してきなさい」

「もう買っちゃったもんーん!」

妹の行動にやれやれと呆れながらも許してしまう、妹思いの姉だった。

「わーい!お姉ちゃんサイコー!」

「そろそろお昼の時間だし、なに食べたい?」

ーピンポンパンポーン

「店内アナウンスを致します。これよりビックモールを閉店させていただきます。なので、囚人様方はその場で待機していただくようお願い申し上げます」

ん?閉店?囚人?何故…何かやばい。

ーガシャ、ガラガラガラガラ

これってシャッターの閉まる音!?

「走るよ!」

水雨の手を取り必死に近くの出口まで走ったが、完全に塞がれている。

近くの消化器で叩いてみたが、びくともしない。

閉じ込められた…しかも、これは能力の類だ!

絶対に壊せない、そんな気がする。

「美雨、大丈夫だから」

「お姉ちゃん…」

そっと引き寄せて頭を撫でる。

「皆さん落ち着いていただけているでしょうか?」

また、同じアナウンスが聞こえる。

この声の主の女性も共犯者だろう。

「まず、言わせてもらいますが、私たちは全く悪くありません。悪いのは貴方達なんです」

優しさに満ちた声でなにを言っているのだろう。

「よく考えてください。たまたま、今日ご来店いただいたのが悪いのです。認めて下さい!さぁ認めるのです。逃げないで、私の声に耳を傾けて!」

「お、お姉ちゃん、わ、私悪いのかな?」

「何を言っているの!惑わされないで!水雨は悪くないわ!」

このアナウンスずっと聞いていてはいけない!

くっ私まで変な思想になりそう。

この間もずっとアナウンスは続いている。

せめて、美雨だけでも逃さないと。

「変なまねをするのはよせ。俺は女は斬りたくない。あと、警察もお前らを逮捕しにくる」

この状況を打開しようと頭を回していると、刀を持った男がこちらに近づいてくる。

美雨は混乱していて、戦えるのは私しかいない!

「やめて、これ以上近づいたら撃つわよ」

霜佳の手にはショットガンのような銃が現れる。

それでも、男は止まらない。

ーパン

「なるほ…くッ、いきなり撃つのはやめた方がいい」

自身の能力〈霧〉を込めた弾丸で急所とはならない箇所を狙ってみたものの、刀で弾き飛ばされてしまう。

防がれた!この人は只者ではない!でも、隙が出来た!あいつが私に注目している隙に、空いてる手でシャッターに直結五十センチほどの〈霧〉をつけた。

私の〈霧〉を通り抜ければ、この建物から脱出することが出来る。

「美雨行きなさい!」

「で、でも…」

「行って!それから、お兄ちゃんを呼んでね!きっと助けてくれるから!」

躊躇いながらも、美雨は涙を流しながら霧を潜り抜けていった。

「閉じ込めたはずだ。出れるわけがない」

「私の創り出した〈霧〉の中を彷徨えば出られるのよ」

美雨、早く行きなさい、この力はいつもより消耗が激しいの…

「お前は行かないのか?」

「行かせてはくれないでしょう?」

「さぁな?」

霧が消えた。うっ、体が抵抗することを拒んでいる。あ、あの放送のせいだ。無意識に倒れ込んでしまう。

「もういい。気色悪い演説をやめろ。十分洗脳出来たはずだ」

「承りました」

やっとやんだ。だけど

「これで全員か?」

「あぁ」

気づいた頃には、車に乗せられ何処かへ連れ去られていた。


「うぅ、お姉ちゃん…」

泣きながらも霧の中を進む。

いつまで続くんだろう。

とても長い時間歩いた気がする。

あ、あれは光!その光を抜けるとここは、家の近くの公園に出た。

そこからは歯を食いしばって、家まで歩いた。

そして、インターフォンを鳴らす。

開いたドアからかずまが見え、力が抜ける。

「おにぃおにい、ちゃん…」

これで何とかしてくれる。お姉ちゃん無事でいて…

人物紹介

・風解霜佳

妹思いの厳しいようで優しいお姉ちゃん。

能力〈霧〉霧を弾丸にして、目をくらませたり、出した霧に入ればどこかへと繋がっている。

・風解水雨

ビックモールからの唯一の脱走者。能力〈?〉

・アナウンスの女性

能力〈洗脳〉自身の声を聴かせた度合いにより効果が異なる。洗脳をするときは、特徴的な話し方をしなければならない。

・刀を持った男

女は斬りたくないらしい。

能力〈刀〉刀の扱いが上達する。人を傷つける場合のみ、殺傷能力が増す。

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