7話 幸せな家庭
風が強いな…天気予報では快晴で洗濯日和と言っていたではないか。
だが、〈風〉を使う俺にとってはなんてことはない。
「うをぉ!」
今のは強すぎだろ!走っていた足が止まってしまう。なんだ?能力で攻撃でもされているのか?
でも、辺りには、おかしなものも何も無い。
いや、あれはなんだ!壁から左上半身が生えている。
しかも、それは青みがかったおっさんだ。
きっとあいつに違いない。
よく分からないが、こっちに襲いかかってくる。
そして、身体中に風を纏わせて、必殺の拳を打ち込んだ。
すると、亀裂が生じ、消えてしまった。
今のが本当になんだかはわからないが、とにかく会社までの道のりを急ぐ。
会社の前で花に水やりをしている清潔感のある女性がいる。
ピシッとスーツを着こなす美人と言っても過言ではないそんな人だ。
「こんにちは」
「あら、かずまさん。こんにちは」
この人はこの会社の秘書の的召さんだ。
会社の中でかずまが一番まともな人だと認識している。
「社長いますか?」
「えぇ、先程まで寝ていましたが、散歩に行かれました。ですが、すぐ飽きて戻ってくるでしょう」
そうだ、社長いつも適当な感じだった。毎日いるのにいない男、そんな感じだ。
「じゃあ、あがって社長を待ちます」
「はい、分かりました」
今日来てるのは、蜜澤だけか、そもそも働いている人が少ないから、こんなもんだろう。
「風解が来るなんて珍しいな」
「始業式にすら来ない奴には言われたくないな」
「色々あんだよ」
こいつの日常は知っている人はほとんどいない。だが、仕事では役には立つため誰も触れようとはしなかった。
恐らく、社長は何か知っているであろう。
「かずまさん。お待たせいたしました」
的召が後ろに社長を連れて入ってきた。
「すまないな。ちょっとばかし歩きたくなったんじゃ。で?お前さんが来るなんて、夏帆さんに何かあったのかね?」
この人はおかしな仮面をつけている。
それは社長以外つけているところを見たことのない珍しい仮面だ。
そして、こんな人が社長だ。
「いや、そういう訳ではないが、あんたの部屋で話がしたい」
「あぁわかったよ」
「では、言ってみなさい」
「実は…」
今日の下校中の起きた事について詳しく話した。
特に稀縞幸造という存在について。
「…稀縞幸造…ふむ…」
「知ってるのか!?」
「…すまんが分からん」
「だろうな、俺が知らないんだ、分かるわけがないな」
「ったく、何を言っておるんだか。だが、注意は怠ってはいかんぞ。いつか、また現れるんじゃろ?」
「あぁわかってる」
聞きたいことは聞けなかったが、ここに長居しても仕方ないため、帰る事にする。
「おい、少し待たんか!」
「ん?」
「わしの話も少しは聞け!」
しょうがない聞いておくか。
「早くしてくれ」
「なのなぁ…最近人が少し足りんと思って募集かけてみようと思うんだが、どうだ?」
「好きにしてくれ。ただし面倒な奴はお断りだ」
「お前さんなら、否定的な答えが返ってくるとばかし思ってたわい。誰か目ぼしい友達はおらんか?」
「…いないな。俺は帰る」
「…気をつけてな」
あいつらは駄目だ。
誘った所で…いや、こんなことを考えるのはやめだ。
「あら、もうお帰りになられるのですか?」
「はい、用は済みましたので」
「せっかくですので、お茶でもいかがですか?」
「…では、頂きます」
まだ時間があるため、出してくれたものを食べてから、会社を出発した。
少し長引いてしまった。夏帆や妹たちも帰ってる頃だ。
やっと会える!この時をどれだけ待ち望んでいたものか。
「ただいま!」
あれ?おかしい、返事がない!ん?何か匂うな、これは!カレーの匂いだ。
そして、リビングのドアを開けると、
「かずまお帰り」
なんと夏帆が台所でカレーの鍋をかき混ぜていた。
なんとなく、後ろからギュッと抱きしめた。
「あっお兄ちゃん!お帰り!えぇと…」
「どうした?」
水雨の方を向くと、いきなり飛びついてきた。
「お兄ちゃん、ごめんなさい、お金いっぱい使っちゃった…」
「許す!」
「やったー!」
後ろの方を見ると、頭に手を当て、ため息をついている。
「ただいま?」
「…お帰り…ほら、食べるから準備手伝って」
みんなで配膳の準備をし、席についた。
「買い物はどうだった?楽しかったか?」
「ビクッ、うん!もっちろーん!超楽しかった!
そうだ、お兄ちゃん!明日ね、お姉ちゃんと3区にあるビックモールにお買い物に行くんだー!」
3区かぁ…隣の区だが
「霜佳がいるなら安心だな!行ってこい」
そして、4人で囲んだ美味しい食事はあっという間に食べ終えていた。
ようやく、長い1日が終わった。
まぁ夏帆や妹たちと幸せでいられるなら、いくらでも続いても構わない。
人物紹介
・風解かずま
能力を狙われた夏帆を護衛することとなる。夏帆はのちの彼女。妹に甘々な緑髪の高校2年生。
能力〈風〉風を凝縮したものをぶつけたり、風を身に纏い攻撃力や防御力を高める。
・社長
かずまの働く会社の社長。いつも適当に生きている。おかしな仮面をつけているが、社員や知り合いは慣れているので、誰も気にしてはいない。
・的召さん
かずまの知る中では一番の常識人。よく気が利き誰もが頼りにしてしまう会社の秘書。能力〈×〉
・蜜澤
会社の同僚で、会社でしか会わないからか、私生活は謎に包まれている。能力〈?〉




