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55話 世界〈存在〉

あの怪物が世界〈存在〉…果たして、俺たちで倒せるだろうか。

半壊しかけた監視保護施設で廉(れん)はそんなことを考えていた。

「安心しなよ、あれは世界〈存在〉であるけれど、本体じゃない。創り出されただけの存在。弟はまだ、ちょうど封印の真下に埋まってるはずだよ」

弟にぶっ飛ばされて隣で解説しているのは、封印を解いた張本人、稀縞幸造(きいじまこうぞう)だ。

今は自身の能力で先ほどの負傷を治している最中である。

「…」

稀縞はやはり、〈砂〉を自分のものにしていた。

なぜなら、さっきまでは機械を増幅させるように怪我を治していたのが、今は砂から機械を造り治している。

「凄いでしょ?〈砂〉は何でも出来る。〈砂〉は粒子であり、言ってしまえば全てなんだ」

早口で言う稀縞に少し引きながら、廉は問いかける。

「…一つ教えてくれ、何故お前は二つの能力を扱っても平気なんだ?」

「ふふ、その原理は簡単さ。例えば、一匹しか動物を飼っちゃいけないというルールがあるとしよう。でも、僕はペットが二匹欲しい。なら、今飼っている動物にペットを飼わせるんだ。それで解決」

稀縞の例えが具体的すぎて廉は理解に苦しんだが、なんとなく理解した気がする。

「お前の能力は〈創造〉であり、〈創造〉の能力が〈砂〉ってことか?」

「んー!そう、それだよ!」

「…イカれてやがる」

そう言うと稀縞は微笑んだ。

「じゃあ、今からそのイカれた力を見せてあげよう」

そうして、完治した体で立ち上がり、怪物に向かっていく。

ーサラサラサラサラサラ

稀縞の足元で砂が渦巻いている。

目の前には、怪物の世界〈存在〉がいて、互いに間合い目を合わせて立ち止まる。

正確には、世界〈存在〉は稀縞をぶっ飛ばした以来動いていない。

「久しぶり、綾(りょう)」

怪物は兄からの挨拶にも答えるつもりはないらしい。

ただ、返ってくるのは低い唸り声だけ。

「…はぁ」

ービシャー

稀縞のため息を合図として、四方八方から砂が怪物に襲いかかる。

「刺さった!廉、もしかしたら倒してくれるんじゃない?」

近くで見守っていた日奈(ひな)が期待を込めて、廉に問いかける。

「いいや、そんな簡単にはいかない。よく見ろ」

廉の視界の先には、無傷の怪物が佇んでいる。

あの砂を受けて、どうして平然としていられるのかは、理解できていない。

恐らく、稀縞以外は…

「やっぱ、こんなん効かないよねー。じゃあ、これはどうかな?」

すると、砂から様々な武器や機械を生み出して、怪物へとぶつけていく。

銃やミサイルは何発も撃ち込み、ナイフやグシャグシャ動く機械は何度も攻撃をしている。

「ん…」

怪物が負傷を負ったように見えても、すぐさま元通りとなってしまう。

これには、稀縞も悩み込んでいる。

だが、おかしい。一向に攻撃をしてこない。

「うん、そうだよね」

いきなり独り言を言うと稀縞はさらに距離を詰めた。

ーバシーン

目の前の光景に傍観者達は見守ることしかできない。

なんと、稀縞の上半身が突如として消えた。

ーサラサラガシャガシャ

「うん、分かってたよ」

消えた体は砂や機械が集まりながら修繕されていく。

完治するともっと距離を詰める。

「僕の人生って、実験の積み重ねだった。だから、今回もそうさ」

誰にも聞こえない声で呟く。

今は二人の兄弟の差は二十センチにも満たないほどとなっている。

ーブワワワワワワワ

「え…」

日奈が声を漏らす。

「まじかよ」

廉も驚嘆する。

「なんと…」

集致(しゅうち)は頭を抱える。

ーざわざわ

辺境守護者の面々も様々な反応を示す。

それもそのはず、稀縞は不思議な音を立てながら、怪物、世界〈存在〉に呑み込まれていったのだ。

それは、わざとなのか、事故なのかは誰にもわからない。

だだ、一つ言えるのは状況は変わらないということだ。

「くそ、封印ごと呑まれちまった」

稀縞が吸収した〈砂〉は元々は封印の一角であり、その封印も世界〈存在〉の中というわけで、封印という選択肢が消えた。

廉は、もし稀縞がいれば、封印として再活用しようと考えていたのである。

「もう、黙って見ている訳にはいかなくなった!今こそ、我ら辺境守護者としての意地を見せてやろうじゃないか!」

集致は立ち上がり、総司令として守護者達を鼓舞している。

「ラジャー!!」

その勢いで、彼らはやる気に漲り、大勢で立ち向かっていく。

ースタスタ

「すまないが、君ら二人のご助力をお願いしたい」

総司令が直々に、廉と日奈に頼み込む。

同時に差し出された手には二枚のワッペンがある。

「これを身に付ければ少しの能力向上は保証する」

「分かりました。あたし達も戦います。でも、頼まれなくともやってましたよ」

日奈はワッペンを胸に貼り付け、立ち上がる。

「ほら、行くんでしょ?」

廉に手を差し出す。

「…あぁ」

日奈にワッペンを貼ってもらい、二人は覚悟を決める。

「感謝する」

そうして、世界〈存在〉との対決が始まる。

人物紹介

・岡田廉

黒髪でガタイのよい男子。やる気は見せたものの、世界〈存在〉に勝てる自信はない。能力〈拳〉

・日比谷日奈

灰色髪のショート女子。どうなるかは分からなくても、後悔をしないように努力している。能力〈太陽〉

・集致収群

辺境守護者の総司令を務めている。今はこの事態を収束させるために尽力している。

能力〈軍隊〉自身の作り出したワッペンを付けた者の能力向上、位置や状態が分かる。

・稀縞幸造

黄色髪で白衣を纏った痩せ型の男。ぶつぶつと独り言を喋りながら世界〈存在〉に吸収された。

能力〈創造〉自身の理解した機械を自在に操作したり、創り出したりできる。

能力〈砂〉砂を操り、〈創造〉の応用として利用している。

・稀縞綾

稀縞幸造の弟であり、いまだに埋まっている。怪物を創り出した元凶である。

世界〈存在〉??

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