54話 顕現
「ちょっとだけだよ。君達に付き合ってあげるのは」
そんな軽口を叩けるのは、稀縞幸造がこの空間にいる四人に狙われている状況を楽しんでいる。
ーカチャカチャカチャ
迫り来る廉の〈拳〉、日奈の〈太陽〉を宿らせた剣を華麗にいなして、機械で反撃する。
「あははは!楽しいよ」
「おのれぇぇ。総員、直ちに大監視室!大監視室!」
集致は総司令特権のマイクを使用して、増援を計ったのだ。
情報自体は知れ渡っているはずだが、危険度がしっかりと伝わっていないのか、まだ来ない隊員に後で説教が必要だと考えていた。
「どけ!お前らっ!」
すると、大剣を構えながら、稀縞目掛けて日共水が走っていく。
「爆弾ッ!」
ードガーン
防御のために〈創造〉で大量の機械を造り出し、爆破から逃れようとするも、爆弾の威力は半端ではない。
ーディジャン!
「…やる、ね。ふふっ」
日共水の能力により、機械もろとも稀縞をもぶっ壊した。
身体全体に負傷し、片腕を失っている。
「なんだ、所詮はただのいきりやろうだったのか!笑って余裕ぶってるのが見え見えなんだよ」
「ははっ、ごめんね。勘違いさせちゃった。君が思ってたよりも全然弱くて…クスッ。笑えるよね」
「ッ!なんだと、そんなボロクズの奴に言われたくはない!」
煽られた日共水は逆上して、声を荒げている。
「こんなのは怪我なんて言わないんだよ」
すると、半殺し状態と言っても過言ではなかった稀縞の身体は次々と修復され、消し飛ばされた腕も完治していた。
「は、ぁ…?」
この尋常じゃない光景に空いた口が塞がらない。
「もし、昔のまま、いや、それ以上だったら僕はピンチだったよ。けどね、もう眼中に無いや」
ーガチャチャギチャ
「こ、これは?」
「用済みってこと、また今度頑張ってね」
地中から無数の機械が湧き出し、日共水を呑み込んでいく。
それに圧倒され、日共水はこの場から姿を消した。
また、いくら攻撃しても意味を為さない稀縞に戦意を削がれる中でも立ち向かう者達がいた。
「狙いを外すな。訓練と同じようにやれぇ!」
「ラジャー」
実は、稀縞が戦ってる途中に辺境守護者達は続々と集結し、総勢二十名にもなっている。
二十以上にもなる銃口は稀縞を定めた。
ーバババババババババン
「わぉ」
集致の〈軍隊〉により強化された辺境守護者の一斉射撃も虚しく、稀縞に届くことはなかった。
「はは、お返し」
「うがぁぁぁ!」
最初に駆けつけた職員と同様に稀縞は銃のようなものを造り出し、二十名の体に打ち込んだ。
「はぁ、こんなものか…あぁ飽きてきたよ」
ーパキン
「廉君も殴るだけだし」
隙をみた廉の攻撃も瞬時に造り出された、機械によって稀縞には当たりはしない。
ーブォオン
「日奈君も強いのは能力だけ」
自在に操る〈太陽〉もかわされては意味がない。
「もういいかな」
すると、稀縞は膨大な量の機械で四人を封印とは反対の方へ押し出した。
そうして、封印へと歩み寄る。
「さ、させるな!解かせてはいけない」
だが、もう遅い。すでに〈砂〉があると思わしき光る装置の隣にいる。
「この能力があれば世界に近づける!」
「どうしよう、廉…」
「まだ、何とかなるかも知れない。あいつは〈砂〉を自分のものにしようとしている。だが、ほとんどの人間が持てる能力は一つまでだ」
「あ、そっか。そうだった!」
ーガチャガチャ
稀縞は装置の上に手を乗せて、自身の能力の機械で〈砂〉を覆った。
それは、機械を通り、腕を通り、胴体に行き、吸収されてしまった。
微かに胸部で光っているのが分かった。
「あぁぁ、幸せだぁ!」
「何ともなっていない…」
おかしい、能力は生命力と合わせて二つ。つまり、一つの能力しか、持てないはずなのに、いともたやすく入手してしまった。
「知りたい?おかしいよねぇ!もちろん僕は教えるさ…!…来たよ」
ーゴゴゴゴゴゴワ
「ぅぅぅ」
「何なのだ、あの奇妙な生命体は…」
集致が指差す封印の中心、すなわち稀縞の隣には人間の形を残した四足歩行の怪物がいた。
二メートルを悠に超えて、赤褐色の見た目には悍ましさを覚えてしまう。
「やぁ、弟よ…ブッオハっ!」
ーガッシャーン
なんと、馴れ馴れしく話しかけた稀縞幸造はぶっ飛ばされ、ガラスを破り廉の近くまで転がってきたのだ。
「あははは、やられちゃった…」
「教えろ!あれは何んなんだ!」
廉は稀縞の胸ぐらを掴んで問い詰める。
「あれは僕の弟さ、今は世界が生み出した化け物だけどね」
「それをどうにか…!」
「この世界には〈世界〉がいる。それが世界のルール。弟は生まれ持って〈世界〉の片鱗を有していて、世界のルールがあることによって生まれたルール」
「何を言って…」
「だから、僕は弟をこう呼ぶ」
「…」
「世界〈存在〉」
人物紹介
・岡田廉
黒髪でガタイの良い男子。稀縞に能力が通用しなくとも立ち向かい続けていた。
能力〈拳〉構えをとり、拳の衝撃を飛ばすことができる。また、基礎的な打撃が強化される。
・日比谷日奈
灰色髪のショート女子。稀縞との戦闘の際に、廉に助けてもらった瞬間があり、実は心踊っていた。
能力〈太陽〉小さな太陽を自在に操作したり、太陽のエネルギーを纏わせた剣を扱える。
・日共水
派手な髪型の男。稀縞幸造との会話により、どんどん謎が増えていく。その稀縞に退場させられた。
能力〈爆〉爆のつく単語の力を使うことができる。
・集致収群
辺境守護者の総司令を務めている。今まで非常事態が起きたことがなく、熟練された経験で何とか頑張っている。
能力〈軍隊〉造り出したワッペンを付けた者の能力の向上、また、位置や状態を知ることが出来る。
・稀縞幸造
金髪の痩せ型で白衣を着ている男。今回の首謀者であり、封印の兄でもある。また、類を見ないほどの卓越した頭脳を持つ。
能力〈創造〉自身が仕組みを理解した機械を造り出したり、操ったりできる。それは、強化された弾丸を防ぐほどの硬さがある。
能力〈砂〉砂を操れる。
・稀縞綾
赤褐色の怪物に変貌した人間ではなく、実は、綾が地中から生み出したものである。本人はまだ埋まっている。
世界〈存在〉この世界にルールがあり、世界の力を扱う存在がいる、ということから生まれたルール。




