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53話 世界に一人だけの弟

僕は稀縞(きいじま)家の長男として生まれた。

家庭的な母と研究熱心な父がいて、愛されていたと思う。

幼少期から、天才的な頭脳を持ち、この世の誰よりも賢い自負もあった。

探究心に溢れ、この世界の全てを知りたいとも考えていた。

だけど、そんな小さな僕にも転機が訪れる。

それは、綾(りょう)という弟の誕生だった。

最初は特に気には留めていなかったのだけれど、ある日を境にして興味の対象となったんだ。

「見てあなた!綾が力に目覚めたわ!ここにあったおもちゃを全部吹き飛ばしてしまったのよ」

「そうかい。まだ、能力を与えていなかったよね。…だったら大降臨の可能性が高いな。僕の知り合いで持ってる能力を知ることが出来る奴がいるから合わせてみよう」

「きっと、そうに違いないわ。だって、私達の子供何ですもの!」

父は能力関係の研究をしていて、僕は父からいろいろ教わっていた。

大降臨…そうだ、僕もそう考えていた。

自身に一番合った能力を授かることができる大降臨。

起こるのは奇跡的な確率だけどそれしか考えられなかった。

「んー。私にはこの子の所持している能力を判断することが出来ない。何故か分からないんだ」

「そんなこと無いだろう。今だってこうして能力を使っているじゃないか」

「すまないが、私は能力を超えた何かだと考える」

父は知り合いに尋ねたものの、綾のことを知ることが出来なかった。

そうして、月日は流れ、僕は大学生になっていた。

この時には、創りたい物を創り出せる〈創造〉を手に入れ、僕は有頂天だった。

けれど、綾は僕を悠に超える力を持ち、屈辱感すら感じるほどだった。

「俺の使える力は何なのか全く分からないけど、何かしら意味があると思う」

「それを僕に言って、見下しているのかい?」

「知りたくないのか?俺の能力」

もちろん知りたいよ。

そこから、僕は研究に明け暮れた。

二十年という長い月日が経過したけれど、成果はゼロ。

でも、ようやく異変に気がついたんだ。

「綾、君はふざけているのかい?」

「俺が知りたいよ」

「二十年と顔だけでなく、体まで成長していないなんてね」

あり得るはずがない。

だから、着眼点を変えて、もう一度調べてみた。

この時にやっと理解できたよ、世(・)界(・)と世(・)界(・)の(・)ル(・)ー(・)ル(・)の存在についてね。

どんな能力も存在するこの世界、ならば世界という能力もあるはずだ。

でも、それは神のような立ち位置にあるから、自身ににた存在を世界中に散らばらせ、ルールを制定したのではないか?

たまたま、それが稀縞綾だったという訳だ、と考えた。

そうすれば、全てに説明がつく。

「もっと知りたいな」

この時には、七十歳を過ぎ、体はもうボロボロだった。

一応、手や足に補強の機械を入れてはいたけど、それも通用しない。

で、僕は思いついた。

自分を能力で改造すればいいんだなって。

そうして、見た目は二十歳で体が機械の稀縞幸造が爆誕した。

「相変わらずだね」

「そっちは懐かしいな」

いまだに、容姿の変わらぬ綾に対して、僕はもう興味が無くなって、存在が邪魔と考えるようになっていた。

でも、消そうにも自分でも歯が立たないから、ここでも時間をかけて悩んだんだ。

そうだ、消さなくてもいい、封印しちゃえばいいんだ。

この策を決行するには、強力な能力者を媒介とすることが条件だった。

僕は必死に戦い、この時代に強い能力者を上から順に捉えていった。

〈再現〉〈砂〉〈龍〉〈力〉……

けれど、一人だけ苦戦をしいられてもなお、倒せなかった人がいた。

それは、日共水(ひきょうすい)の持つ〈爆〉だ。

彼は英雄紛いの活動をしていて、爆のつく字の能力を使えるっていうイカれた能力故に倒すことが出来なかった。

だから、最後は寿命で死んだと思ってたよ。

まぁ、そんなこんなありながらも、綾を七区誘い出すことに成功した。

「俺をここに連れてきた訳を教えてくれ」

「いいよ、それは綾を封印するためさ」

「…本気で出来ると思っているのか?この全てを自在に操る俺を?」

ーゴゴゴゴ

「バイバイ、弟よ」

予め地中に埋め込んでいた四つの能力者を顕現させた。

「まかさ、そこまでするなんて…でも無駄だ。人は命は脆い」

知ってるさ、人はいつか死ぬもの、死ねば封印は解かれてしまう。

じゃあ、死の定義って何だろう?

答えは、各々が生まれ持った生命を失うことだ。

「う、動けない」

まだ、人間は気付いていないのだけれど、能力は二つ有することができる。

その一つが生命力として枠が埋まっているんだ。

だから、生命力と能力が抜けないように改造したんだ。

「当たり前だよ。この封印は外からしか、解くことが出来ない」

「くぁ、あ、ぁぁ」

「最後に、弟が綾でよかったよ」

そうして、身動きの取れない綾を埋めて、ここを去った。


「どうかな?面白かった?」

口を挟まずに聴いていた日奈(ひな)、廉(れん)、集致(しゅうち)、日共水(ひきょうすい)に問いかける。

「じゃあ、封印しているのはあんたの弟…」

「そうだよ」

「…」

「まだ、お前がきた理由は言っていない」

「そうそう、この話にはまだ続きがあったんだ」

廉の質問を受け、笑いながら答える。

「ここを去ったあと、僕は研究を重ねて、世界になる方法を見つけた。それが、あそこの封印の一つの〈砂〉が必要なんだ。それを取りに来た」

「…」

予想だにしない回答に廉は唖然としてしまう。

「あと、弟に会いに来た」

「…ならば、その野望、砕いてやろう!」

タイミングを伺っていた集致が声高らかに稀縞に宣戦布告した!

「皆よ!かかれー!」

この合図により、封印をかけた戦いが火蓋を切った。

人物紹介

・稀縞幸造

黄色髪の白衣を纏った痩せ型の男。能力〈砂〉の入手と弟に会いにきた。能力〈創造〉

・稀縞綾

稀縞幸造の弟で、今は封印という状態で七区に埋まっている。世界〈?〉

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