48話 常連客
「ねぇ…あたしたちどうやっても行けばいいの…」
列車から降りると、そこには荒野が広がっていた。駅周辺には店なんかが点々とあるが、少し離れると自然しかない。仕事により、七区へやってきた日奈と廉予想外の事態に困惑している。事前に調べた情報だと、もっと栄えていたはずなのだ。
「どおりで列車から降りる人がいないわけだ。とりあえずあそこのバーにでも行ってみるか」
「そうだね」
ライトアップされ、いかにも営業中のようなバーに行ってみることにする。もしかすると、人はそこに集まっているのかもしれない。
ーガチャリ
入ってみると、暗い雰囲気の中にバーテンダー二人と客が数名いる状態だった。カウンターで一人のバーテンダーはコップを磨き、もう一人は派手な髪型ででかい剣を背負った客を相手にしている。なので、暇な方に聞いてみることにした。
「お二人ですか?」
「そうだ」
流石に情報を聞くだけだと申し訳ないと思い、注文することに決めた。ちょうど、昼食後で間食程度に何か頼もうとメニューを見つつ、カウンターに座る。
「このオリジナルコーヒーを一杯。日奈はどうする」
「あたしはフルーツジュースしようかな」
「少々お待ちください」
すると、ダンディなバーテンダーは目の前で飲み物を作り始めた。
「…あなた方は何をしに七区にいらっしゃったのですか?」
お湯を沸かせながら廉に問いかける。
「それといった用はない」
「そうですか。私は毎回、お客様に質問をしているんです。もちろん興味もありますが、お役に立てるならお力になりたいと思っていまして…」
目的地は七区の果てにある保護監視施設。楽に行く乗り物や能力を持たない二人が行くためには荒野の中を歩いていくしかない。ならば、助けを求めてみる価値はある。
「俺たちは保護監視施設を目指している」
「なるほど」
「でも、あたしたちがここから行く手段が見つからなくて…」
ーガシャン
「お前ら!いーねぇ、俺が連れていってやる!」
隣でジュースを飲んでいた派手な髪の男がカウンターを叩いて、廉と日奈に話しかけてきた。
「…」
二人は少し考える。はたして、こんな男を信じてよいのだろうか。だが、頼らなければ時間がかかってしまう。
「何故俺たちに手を差し伸べる?」
すると、男はジュースを一気飲み干し、晴々とした顔で述べた。
「俺はな、ずーっと待ってたんだぜ、あそこに行くやつをよぉ」
日奈は疑いの眼差しで見ているが、どう見ても嘘をついていない善人にしか見えない。埒が明かないので廉が仕掛けてみる。
「なら、どうやって連れていってくれるんだ」
年齢は三十代くらいだと思われ、乗り物を出すのか、それとも能力なのか、気になるところだ。
「ちょっと待て」
すると、男は椅子に座り直して目を瞑って眠り出した。
ーブゥゥゥゥン
何やら店の外が騒がしい。
「さて、迎えが来たぞ!ついてくるがいい」
男は二人分の代金も支払い、店を後にする。扉を開けると、いかにも動物園にあるような後方が檻となっている車が止まっていた。
「俺らが安全に運んでやろう」
男は運転席にいる人物を指しながら、笑顔で振る舞っている。ここまでされると、逆に信じられなくなってきてしまう。
「本当に大丈夫?」
男が怪しいのもあるが、車内にいる人物が寝ているように見えるのもおかしい。
「一応確認だが、俺たちに危害を加えようとするならばこちらも容赦はしない」
「んなことは分かってるよぉ。さっさと乗った乗った」
警戒は怠らないようにし、檻の中に二人は入った。当然のように男も入ってきて、運転席の背もたれに寄りかかる感じで座った。この時ばかりは日奈と廉はできるだけ密着して座ったのだ。
「よし、いざ!保護監視施設へ!」
ーブブゥキキィブルルン
運転者は黙ったままエンジンをかけて進み出した。
人物紹介
・岡田廉
黒髪のガタイのよい男子。疑り深いが、日奈のことは結構信頼している。能力〈?〉
・日比谷日奈
灰色髪の気の強い女子。廉が代わりに言ってくれるため、大人しい。能力〈太陽〉
・派手な髪の男
バーでジュースを飲んでいた、大剣を背負った男性。話すとフレンドリーさが滲み出て、初対面は接しやすい。能力〈?〉




