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47話 区間列車

ーガタンッゴトンッ

「んー?」

ちょうど九区から七区までの列車に乗っていると、強い揺れを感じて目が覚める。寄りかかっていた何かから頭を起こして、窓の外を眺めてみる。

「まだ、八区の中間区域だ。着いたら起こしてやるから寝てろ」

すると、隣で座るガタイのよい黒髪の男子が低い声で話しかけてきた。その男子、岡田廉(おかだれん)は腕を組んでおり、乗車してから一睡もしていないなようだ。

「ん、いや、いいよ。あーよく寝た。廉も寝ていいんだからね」

先程まで寝ていたのは、日比谷日奈(ひびやひな)であり、二人は七区にある保護監視施設の調査という仕事を任されたために、絶賛移動中である。ここまで来るうちに、日奈は岡田廉を名前呼びできるぐらいの仲を深めることができたのだ。

「俺は平気だ」

ーガラガララ

「お客様、お飲み物はいかがですか?」

日奈と廉が話をしていると、前方からたくさんの飲み物が乗ったカートを押す乗務員が、前の席の客に飲み物を提供している。廉は何を飲みたいか目線で問いかける。

「あたしは…どうしようかな」

ーガラガララ

悩んでいると、二人の順番が回ってきた。

「お客様、お飲み物はいかがですか?」

「ブラックを一杯、アイスで」

「かしこまりました」

廉は間髪入れずに即答した。前見かけた時も飲んでいたが、今は眠気覚ましなのかもしれない。コーヒーを注いで廉に渡すと、日奈の方を向いて注文を待っている。

「じゃあ、あたしも同じので」

「はい、ではお砂糖やミルクはおつけしますか?」

コーヒーを注ぎながら、砂糖を見ている日奈に問いかける。

「…いえ、大丈夫です」

少し悩んでから、断ると冷えたコーヒーを慣れた手つきで渡す。すると、隣から

「二つずつ頼む」

と廉が申し出たのだ。

「かしこまりました」

乗務員は砂糖とミルクを渡してから、後方の乗客の方へカートを転がしていった。その時に廉は後ろを振り向くと、乗客が全くいないことに気づいた。恐らく、みんな八区で降りたのだろう。

「そういうの入れるんだ…」

「悪いか?」

「いや、全然」

そうして、二人はコーヒーを片手に一息つく。

「…」

「…」

「…入れないんじゃん」

廉は黙り、日奈の簡易テーブルの上にさっきもらったものをそっと置く。そして、日奈の顔を見つめてこう言った。

「やっぱり、俺には必要なかった。コーヒーを飲むなら美味しく飲んだ方がいい」

「…ふっふふ。そうだね。じゃあ、ありがとう」

廉が乗務員から砂糖とミルクをもらった時から、こんなことだろうと思ってはいたけれど、そんな遠回りの優しさが日奈を笑わせた。もう一度、新たに飲み直して、本当の意味での一息をつくことができた。そこで、廉が話を切り出す。

「日奈、今回の仕事の裏には何があるんだ?」

意味深に日奈な目を見て問いかける。廉は疑問を抱いていた、社長は何か企んでいるのではないかと。

「…?普通の仕事じゃないの?」

問いに対して日奈は純粋な眼差しで、廉を見つめ返す。その時に廉は思った、これは社長一人の計画であると。

「悪い、俺が変なことを聞いた。会社に行った時に、日奈が社長が行けばいいと言っていたことに違和感を覚えたんだ」

「そういうことね。なら、教えてあげる。社長のこと」

廉の警戒は解けてはいないが、日奈は誤解が解けたと思って、顔がほぐれて緊張した雰囲気が和んだ。

「社長はね、瞬間的に移動できる能力を持ってるの。どういう原理とか、何の能力は知らないけど」

廉は深く頷いて、日奈の話にもっと話してもらえるように促す。

「このことは社員は知ってるけど、それ以外の人には内緒だから。他に言えることは…あっ、あの仮面を付けてる理由はみんな知らないから」

「そんな力を持っているのか…言ってくれてありがとな」

「い、いいよ。別に」

顔を近づけて感謝を伝えると、日奈は赤面を隠すように顔を背けていた。照れ隠しでコーヒーカップを掴み、それを一気に飲み干す。

「にがっ、けほっけほっ」

「何をしてるんだ…」

廉は日奈の背中を軽く摩り、やれやれと呆れている。だが、満更でもなさそうだ。

「えっ、まって…」

苦いってことは今飲んだのって、廉のコーヒーじゃん!

「ごめん、廉のやつ飲んじゃった…あたしのあげる」

誤って飲んでしまった空のコップを置いて、甘いコーヒーを廉に差し出す。廉は少し躊躇ったが、受け取って一口分くらいを飲んだ。

「やはり、甘いな」

間接キスをさせたことに照れながらも、日奈は飲んでくれたことに対して、内心喜んでいた。

ーまもなく、七区に参ります。当列車は七区の境界線にある駅が終点となっておりますので、ご了承ください。

列車内にアナウンスが鳴り響き、乗客は下車の準備をし始めた。二人もさっきまでの気持ちを切り替えて、七区に降りたつ支度をするのであった。

人物紹介

・日比谷日奈

灰色のショートヘア女子。気は強いが、しっかりと照れてしまう。甘いコーヒーの方が好み。能力〈太陽〉

・岡田廉

黒髪のガタイのよい男子。今までの中で一番多く接した女子は日奈である。ブラックコーヒー派。下車する際に日奈がくれたコーヒーも持っていった。能力〈?〉

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