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46話 助け合いの心

時は学校での監禁事件後に遡る。場所は二階の空き教室で、日奈(ひな)と廉(れん)は暖をとっていた。そして、喑薬(あんや)の活躍よって、学校を覆う結界は解除され、二人は寒さに怯えることはなくなった。

「あれ、空が明るくなった」

「雰囲気も戻ったようだ。やっと、学校を取り巻く能力が解除されたらしい」

毛布にくるまって温まっていた二人は立ち上がり、窓から外を眺めていいる。すると、廉は何も言わずにドアの方へ歩いていく。

「どこ行くの?」

「危機は去った。もういいだろ」

どうやら、自分の教室に戻ろうとしているようだ。

「まだ終わってないから。私には今日の出来事を会社に報告しなきゃいけない義務があるから」

「なら一人で行けばいい…」

「ボロボロの女の子を一人で行かせるわけ?」

「お前には友達がいただろ」

恐らく、和波(かずは)のことを言っているのだろうが、安全を考慮してクラスに置いてきている。

「ふん、じゃあいいんだ」

わざとらしく、怪我人のような歩き方をしながら、廉の横を通って、教室を出ようとする。

ーザワッ

「これでいいんだな」

すると、日奈の左腕が持ち上げられ、廉は首に手を回す。そして、左手にはガタイの良い首輪周りの感触がある。さらに、日奈の右脇腹を廉が右手でがっしりと掴んでいた。

「ちょっ、ここまでしなくていいから…」

最初は強く言ったものの、最後には恥ずかしさで声が小さくなっていた。

「全く…お前の会社まで連れていくだけだからな」

廉は日奈をちゃんと支えながら教室を出てると

「そうだ、あの亀の人も持っていかないと」

日奈は思い出して、先程の戦場に向かう。

「…いない」

あったのはボロボロになった廊下だけ。

「結界の解除とともに逃げたんだろ。おそらく、アイツの能力は亀の怪物の皮を生成し、分厚い肉壁で身を守りつつ、攻撃をしていたんだ。だから、最後の〈太陽〉も本体には当たっていなかった」

「あたしがちゃんと貫いてれば…」

「今、後悔をしても仕方がないだろ。その反省を次に生かせばいいんだよ」

「そうは言っても…」

「もともとは俺が相手をしてたんだから、お前は関係ないんだ。気にするな」

「…ありがと」

日奈を励ますために、口数の多くなった廉に日奈は心を打たれていた。そうして二人は現場を後にし、階段を下っていく。

「…そのお前って言うのやめてよ」

「…」

「次からは日奈にして」

「わかったよ」

果たして、廉が日奈と呼ぶのかはわからないが、二人はちょっとずつ距離を詰めていく。会社に向かう途中、廉は口には出さないが、所々で思いやりのある支え方をしていた。日奈の歩くペースに合わせたり、車道側を歩いていたりと、さりげない優しさに日奈は再びときめいたのであった。


「的召(まとめ)さん、社長をいますか?」

二人が会社に入ると、髪を結んだ社長直属の秘書の的召が座って本を読んでいた。

「はい、奥の部屋にいらっしゃいますよ。そちらの方は?」

的召は日奈の隣に立つガタイの良い廉について聞いてきた。廉は部外者なので当然のことだ。

「この人は新しく入ってくれる岡田廉くん」

「っ!俺はやるなんて一言も…むごっ」

ーギュッ

ボロボロの体で廉に飛びつき、日奈は喋らせないようにしている。体格差はあるが、なんとか口を塞ぐことができた。

「あら、お二人は仲がよろしいんですね。廉さんには後で書類をお渡しします」

「おっ、新入りじゃって?でかしたぞ。ちょうど、お前さんに頼みたい仕事があってな、人が足りてなかったんじゃ」

話し声を聞いた社長が、気分が良さそうに奥の部屋から出てきた。

「仕事って何をするんですか?」

あまりの社長の勢いに廉は呆然とし、日奈は横目に見ながら仕事の内容について問いかける。もしかしたら、社長のつけているおかしな仮面に驚いているのかもしれない。

「それはの、七区の果てにある保護監視施設の調査じゃ。二人いれば大丈夫じゃろ」

すると、懐から地図を取り出して、目的の場所を指を指しながら説明している。七区とは、ちょうどかずまと夏帆(かほ)が行った一区とほとんど距離は変わらない。そこで、日奈は疑問を抱く。

「そんなに遠いなら社長が行けばいいじゃないですか」

「まぁまぁ、そこはお前さんたちに任せたいんじゃ」

そして、社長は日奈の耳元に近づいて、そっと囁く。

「デートを楽しんできなさい」

「わっ…分かりました。ところで、その調査はいつですか?」

少し溜めてからイタズラな声音で

「今じゃ!今から行って来ーい!」

と言った。何かの間違えではないのか?なんの準備もしていないのに。的召まで頭を押さえて、やれやれとため息をついている。

「あの…」

「あぁ廉くんじゃったな。頼んだぞ」

ようやく口を開いても、社長に遮られてしまう。だが、廉はこの時、社長の雰囲気が変わり、何かを自分に託されたように感じた。その強い意思から、日奈について行かなくてはいけないと考えた廉である。

「ほれ、じゃあ、無事に帰ってくるんじゃぞ」

そして、費用が入った封筒を日奈に手渡して、日奈と廉を送り出すのであった。

人物紹介

・日比谷日奈

岡田廉に思いを寄せている灰色の髪の気の強い女子。今回受けた仕事を楽しみにしている。能力〈太陽〉

・岡田廉

日奈に巻き込まれて仕事を受けることになった黒髪の男子。人と関わることは苦手だが、とても心は優しい。能力〈?〉

・社長

かずまの働く会社の社長。おかしな仮面をつけているが、社員や知り合いは慣れているので、誰も気にしてはいない。

・的召さん

会社一番の常識人。よく気が利き誰もが頼りにしてしまう会社の秘書。能力〈×〉

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