5話 騒がしい帰り道
「あぁぁ、夏帆がいないと本当に寂しいな」夏帆のいない帰り道に嘆きながら、かずまは無意識にリュックに付いている巾着袋を触っている。
何故かこれを触ると、孤独感が軽減される気がする。
「これいつから付けてたんだっけ?」
だが、全くわからない。不思議だ。
そんなことを思いながら重い足を上げて、今日来た道とは違う道を歩く。
「会社でも寄って行くか」
あまり顔を出すことは無いのだが、たまに寄らないと社長に叱られてしまうので、仕方なく寄るのだ。そんなことより、今は夏帆のことでも考えよう。
「帰ったら抱きしめて…」
「抱きしめて?」
「誰だお前!!」
突如、家の塀からあるはずのないエレベーターが真横から出てきたのである。
その中から、声の主が出てくると、エレベーターは地下へと潜っていった。その人物は白衣の下のズボンに手を突っ込んでいて、見た目から華奢で弱そうな印象が強い。
「やぁ!風解かずま君だよね?」
「…」
その人物からの問いかけにかずまが無視をすると、黄色の髪を横に揺らすように首を傾げ、再度話しかける。
「やぁ!風解かずま君だよね?」
「…」
「無視かぁ、君と同じで寂しいな。てっきり、君の風の能力でぶっ壊されるかとおもったよ!ははっ!被害妄想!被害妄想!ごめん、かずま君と会えてテンションが上っちゃって」
「なんで、俺のことを知ってるんだ?」
かずまの能力を知っている人は少なく、しかも初めて会った人が分かるはずがないのだ。
「調べてわからないことなんて、この世界にはないんだよ?あれ?夏帆君はいないの?あー買い物って言ってたね」
「…狙ってる、のか?」
もしかすると、こいつが〈w〉かもしれない。
「いぃや?ただの興味だよ?そんなに怒らないでほしいな。んーそうか、まだ名乗って無かったね」
危険を感じて、すぐ攻撃を出来る体勢になるかずま。
「僕は、自称世界科学院のただ1人の研究員、稀縞幸造。…知ってる?知らないのかぁ。僕がした研究内容とか本で出版したりしてるのになぁ」
世界科学学院?稀縞幸造?何一つ聞いたことがない。こいつは危険だ!今すぐ対処しなくては。
風の力を一か所に集中させ、それをたくさんぶつけてやる!
ービュン
「は?」
ーバリバリ
風の玉が稀縞に接近した瞬間、横の壁から機械の塊が盛り出し、攻撃を防いだのだ。
だが、その機械も粉々だ。今のが当たれば致命傷のはず…もっと力を込めても死にはしないと確信して、新たな攻撃を展開しようとした矢先。
「こうなっちゃうよね。かずま君のことをもっと知りたかったのに…じゃあ、撤退だ!また会おう」
次は、稀縞の真下に機械的に作られた空洞が発生し、瞬く間に入っていなくなってしまった。
「一体なんなんだ」
「って、違うよ。こんなただおちょくるために来たんじゃないってば!」
また現れた。
「僕がここに来たのはね、かずま君に聞きたいことが会ったんだよ。」
「…俺に、聞きたいこと?」
全く心当たりがない、何を問われるのだ。
「世界って知ってる?」
「?」
「じゃあ世界のルールについては?」
「さっきから何を言っているんだ!」
「なんだ知らないのかぁ。せっかくだし教えてあげちゃお!世界ってのは、そのまんまの意味で全てってこと。そしてこれが大切!世界のルールというのは、既に決まっていることを指している。まぁ僕の見解では、自己解釈って考えているんだ」
「…」
「ふ、ごめん笑っちゃった!僕はね、もうじき世界のルールになるんだ。凄いでしょ?」
「わけがわからない」
「そうだよね。でも、君は違うはずだから後で理解できるよ!これを伝えたかっただけだから!あっ、かずま君からは僕に聞きたいことある?」
「…なら、お前の能力を教えてくれ。」
「ははっ!まだそんなことを知りたいのか!いいよ!教えたげる。今知ったところでどうにもならないけど…僕が使ってるのは〈創造〉だよ。何とは言わないけど頑張ってね。今度こそ、バイバイ!」
この時、かずまは次会ったら生かしてはおかないと決めた。
一応会社にも報告しようと思い、残りの道のりを走っていくことにしたが、頭から稀縞の言っていた、世界、世界のルールという言葉が頭から離れる事はなかった。
人物紹介
・風解かずま
能力を狙われた夏帆を護衛することとなる。夏帆はのちの彼女。とにかく夏帆が大好きな緑髪の高校2年生。
能力〈風〉風を凝縮したものをぶつけたりする。
・稀縞幸造
探究心、好奇心旺盛な科学者。かずまに対してとても興味津々。彼は世界のルールになるらしい。
能力〈創造〉機械を意のままに造り出し扱うことができる。




