44話 偽りも大切
四日目
三日目の昼にかずまと夏帆は本音で語り合い、より互いを知ることができた。そんな次の日は、やっとこのホテルの大浴場の温泉に行ったのだ。そこはここの醍醐味と言っても過言ではない。いざ、入ってみると男女ともに、かなりの人が入っていたが、二人はじっくりと堪能することができたのだった。
「いいお湯だったね」
「この温泉にわざわざ来る人がいるのも納得できる」
別館の温泉からの帰り道、二人はとても満足していた。その道中で、かずまはあるものを発見したが、無視して通り過ぎようとする。
「やろうよ、卓球」
しかし、夏帆は見逃してくれなかった。なぜ、かずまが卓球を遠ざけるかというと、いや、卓球だけではない、対決をするもの全般だ。過去に夏帆とテニスをした際には、手をぬけば、本気でやれと言われ、本気でやると、能力を使ったと疑われてしまったのだ。だから、加減が難しくて、夏帆と勝負事をあまりしたくないのだ。
「少しだけだからな」
「うん」
ウキウキで夏帆はかずまの手を引きながら卓球施設に入っていく。入り口でラケットとピンポン玉をもらって台につく。
「私から始めるよ」
ータンッ
夏帆が玉を持ち、軽いサーブを打つ。夏帆は運動神経が良い方ではないが、ほどほどにラリーを続けることができる。
ートンッ
その玉を夏帆が打ち返せるようにちょんと打った。
「手加減しちゃダメだからね」
ラリーをしながら、夏帆はかずまにムッと睨みをきかせる。
「わかったよ」
ースパン
三ターン目がかずまに回ってきた。しょうがなく、強めに打ち返して、夏帆の台でバウンドした後、玉は地面に落ちた。
「ずるい。〈風〉を使ったでしょ。私の〈夜〉はそういう風に使えないのわかってるくせに」
「じゃあ、どうしたらいいんだよ」
夏帆に強めに言われては落ち込んでしまう。
「あ!あれがあった。ちょっと待てよ」
かずまは荷物を置いた椅子のところにいって、バックの中から一つの札を取り出した。
「これは、世界具〈封印〉。貼られたものの持つ能力を使えなくするものだ。これでいいだろ?」
能力の説明をして、かずまは自身の肩に貼り付ける。
「それって、学校から盗んだものでしょ。でも、まぁいいや。もう一回始めからね」
この世界具は、旅行に出かける前の仕事として、学校から盗んだのである。
ータンッ
ースパン
もちろんの如く、かずまは軽々と打ち返して、どんどん得点を獲得していく。ついには、夏帆はラケットを置いて、目には涙を浮かべている。
「…もうやらない」
かずまはすぐに夏帆を抱きしめて、よしよしと頭を撫でるも、不貞腐れてしまっている。
「ごめん」
「…」
謝ったところで許してはくれないが、一応謝罪をする。この時、今度はギリギリの戦いを演じて、負けれるようになろうと決めた。
「んーじゃあ、時間的にもう部屋に戻るか」
夏帆がこうなったらもうどうしようもない。だから、辻褄の合わない言い訳を述べ、夏帆の手を引いて帰る。そして、かずまはいつもより夏帆に触れ合って、寝る時には抱きしめて離さないようにしようと考えたのであった。
人物紹介
・風解かずま
自身の持つ〈風〉の能力は使い勝手がよく、日常的に使用しているのではないか、と疑われることが多い。能力〈風〉
・十六夜夏帆
運動は好きだが、あまり得意ではない。あと、不貞腐れると結構めんどくさい。能力〈夜〉
・世界具〈封印〉貼ったものの能力を封じることができる。




