↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/59

42話 不安要素

二日目

目を覚ますと、隣で夏帆(かほ)が寝ていた。白く美しい髪の彼女の吐息が当たって少しくすぐったい。毎夜一緒に寝ているから、癖で入ってきてしまったのだろう。時刻は七時五分、かずまはいつもこの時間に起床する。

「あぁ、よく寝た。えと、朝食は七時四十五分か。夏帆、起きろ、朝だぞ」

軽く肩を揺すってみるが

「んん」

としか言わず、全く起きる気配がない。なので、イタズラをしようと手を伸ばすもギリギリで止める。特に意味はない。

「ほら、朝ごはん終わるぞ」

再度、呼びかけるも応じてくれないので、かずまは夏帆をお姫様抱っこして、強制的に起床させた。そのまま、トイレや洗面台に連れて行き、支度を整えると朝食の場に向かった。このホテルは一階の半分がバイキング会場となっていて、人もそれなりにいる。

「俺たちの席はこれだ。先に食べたいの取ってきていいぞ」

席に印を置いて、かずまは飲み物や食器を撮りに行こうとしたが

「私も一緒に行くから」

と頬を膨らませて、かずまの浴衣の袖を掴んだ。諸々を準備して、ようやくバイキングを楽しむことができる。

「その前に、ヨイショ」

「ありがとう」

夏帆の長く垂れ下がった髪を一つに束ねてあげてから、バイキングコーナーに行き、二人は料理を見回る。

「全部美味しそうだな、夏帆は何食べんだ?」

目の前には、ローストビーフやお寿司、中華料理なんかが並んでいる。

「んーどれにしよう。たくさんあって迷っちゃう」

他にも、サラダや唐揚げ、パスタなど様々な料理があり、とても豪華である。そして、各々が食べたいものを取り、最初の席に戻った。

「それ、少なくないか?」

夏帆の皿の上にはニ枚のパンケーキとその上にフルーツが乗っかっている。隣には、ブラックコーヒーが注がれたカップがあった。

「別にいいの、美味しいのをおいしく食べることが大切なんだよ」

そうして、小さく手を合わせて、パンケーキを丁寧に切って食べ始める。

「…そっか、まぁそうだよな。じゃあ俺もいただきます」

かずまは肉と野菜をバランスよく盛ったプレートとなっていて、飲み物は緑茶だ。

「ん!これ、私好みの味だよ。かずまに一口あげるね」

綺麗にカットされたパンケーキをゆっくりとかずまの口元へ運び、食べさせてあげている。

「おぉ、これはうまい。夏帆にもお返しよう」

肉を一口サイズに切り分けて、夏帆に食べさせる。

「そっちも美味しいね」

そんな楽しい朝食はあっという間で、気づけば皿の上の料理は綺麗さっぱり食べ終わっていた。二人はバイキング会場を後にし、八階の部屋に戻り、着替えてからホテルを出た。

「ねぇかずま、今日って何をするの?」

一区はこれといった有名なものや観光スポットがあるわけでもなく、ただの街という感じだ。挙げるとするならば、少し前までは油業で盛んだったという印象がある。今も会社は経営してはいるが、あまりいい噂は聞かない。

「そうだな…のんびり散歩でもいいか?」

「うん、いいよ。もしかしたら、何か面白いものが見つかるかもしれないしね」

行く先々には、屋台や喫茶店など懐かしいものが沢山あった。中でも、一際目立っていたのが

「これが、この国一でかいトイレか…」

「すごいね。なんか、国からも登録されてるみたい。国立便所って名前だって」

まるで、ショッピングモールかと思ってしまうぐらい大きなトイレだ。その横にある石碑を、夏帆ら読んでいた。

「少し見て回ろう」

「そうだね、ん?でも待って。トイレだから男女別れるよ」

こんなに巨大に作られ、観光スポットかと思ったが、実際はトイレであり、見て回るものではなかった。

「しょうがない、じゃあ、俺はトイレしてくるから待っててくれ」

「わかった。そこのベンチにいるね」

そうして、かずまは巨大な建物に入っていく。内装はシンプルな作りで、とても落ち着く空間だ。ここは個室が多く、ほとんど空室だった。その中の一つを選び、かずまはトイレを満喫する。

「さすが、国立なだけはある」

普段見ないようなボタンに広い個室、充実した三分間を過ごせたと言えるだろう。そうして、温水で手を洗い、トイレから出た。すると、夏帆が待っていると言っていたベンチに数人の人溜りができている。

「ん?」

よく見ると、座る夏帆を囲んでいるではないか。かずまは、急いで駆け寄り、夏帆の安全を確認する。

「夏帆!大丈夫か、チッお前ら何やってんだ。」

そこには、困惑して苦笑いの夏帆と、似たような服を着て箱を抱えた男達がいた。

「我々は魂精敬拝(こんせいけいはい)教と言うものです。設立からまだ浅いですが、募金をお願いします!」

どうやら、ここにいる数名は下っ端のようだ。

「えぇと、よく分からないので、すみません」

夏帆は苦笑いで信者の頼みを断る。そんな夏帆を連れ出そうと手を掴んだ時、信者は話し始める。

「ちょーと、お待ちください。なんと、我々の教団には、博士ランキング二位の混対(こんつい)博士にもご助力いただいているのです!」

博士ランキング?それはどうせ、非公式だろう。と言うか、そんな奴が居ようが居まいが、関係ない。

「俺たちは帰らせてもらう」

掴んでいる夏帆を引き上げ、謎の集団、魂精敬拝教から距離を取る。

「後悔しますよ!我が組織はこれから飛躍を遂げ、更なる拡大をします!」

「そんなことに興味はない。やりたければ好きにしろ。…もし、夏帆に何かあれば、お前らの組織なんて簡単に潰せるということを覚えておけ」

風は吹き荒れ、鋭い殺気が下っ端たちを襲った。それに怖気付いた下っ端どもは、二人を非難するように睨むことしかできない。そんな彼らを置き去りにして、かずまと夏帆はホテルへ戻って行ったのだ。

人物紹介

・風解かずま

緑髪の高校生。基本的には、夏帆に危害を加えなければ攻撃はしないつもりでいる。能力〈風〉

・十六夜夏帆

白く長い髪の小柄な女子高生。好きな食べ物は、果物全般。能力〈夜〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。