41話 悠久の風
これは学校で熾烈な戦いが繰り広げられている最中、仕事という名の旅行で一区に出かけた、かずま、夏帆の五日間の話である。
一日目
時は真夜中、この世界は暗黒に支配されて、街中は静寂に包まれている。その訳は、一区まで二人の住まう六区から、約七時間かかったからである。道中、交通トラブルや休憩を多く挟んだ為、たどり着くのが、夜十時にもなってしまった。だが、社長が予約していたホテルには無事につき、ちょうどホテルに入る頃だ。
「結局着くまで、こんなに時間がかかっちゃったね」
「あぁ、そうだな。移動時間も俺は楽しかった」
ホテルの前で二人はそんな会話を交わしている。
「うん、私も」
夏帆はかずまがどんなことを言っても、にこやかに反応してくれる彼女だ。
「それにしても、このホテルすごく豪華だね」
特に金銭面で気にしている様では無いが、広さといい、充実した設備に、案内板を見ている夏帆は呟く。
「それは当たり前だろ?どうせ、社長のコネかなんかだろ。夏帆を招くなら、こんぐらいじゃないとな」
「あはは」
流石の夏帆も苦笑いしかできはしない、よって話題を変えることにする。
「あっかずま、チェックインしないと」
すると、かずまもそうだなと頷き、ロビーにある受付の元に夏帆と向かう。
「すいません。正義主導社の旗全体名義で予約しているかずまだ」
「はい、かずま様ですね。少々お待ちください」
正装に身を包んだ受付の女性は名簿をペラペラめくり、かずまの名前を見つけると鍵を手渡した。
「では、八九一号室となります。お荷物をお運び致しましょうか?」
「いいや、結構」
かずまは鍵を受け取り、受付の申し出をきっぱり断った。そして、荷物を持ち、夏帆を連れて部屋に向かおうとする。
「すみません」
夏帆は女性に頭を下げ、かずまの後に続いた。
ーウィーン
二人は部屋が八階にあるため、エレベーターに乗った。その時、夏帆はかずまに先ほどの態度を注意した。
「ねぇ、前から言ってるでしょ、私とか家族以外にもちゃんと優しくして」
「うぅ…」
最愛の夏帆に睨まれてはいくら強くとも萎縮してしまう。
「わかった?」
「…はい」
ーピコンッ
こんな会話をしてるうちに八階に着いていた。そこで、この会話は終了にしてれた夏帆は優しく微笑んで、歩き始める。
「ここが俺たちの泊まる部屋か」
ーピッ、ガチャ
今時のカードキーで扉を開けるとなんとも豪華な仕様となっている。社長にそんなコネがあったのかと驚くほどだ。二人は驚き、一息ついてから室内に入っていった。
「うわぁ、広いし、すごい」
巨大なベットに最新のテレビ、おまけにはテラスからの眺めもいい。八階という高さだが、通常よりも高く作られているため、遠くまで見渡せる。
「あぁ、そうだな。夏帆、今日はもう遅いが、風呂はどうする?このホテルには温泉が沸いてるみたいだぞ」
かずまは素っ気ない返事をし、この後の予定を夏帆に訪ねる。
「んー時間ないし、部屋のお風呂でいいかな。温泉は余裕がある時に入るよ」
「わかった。じゃあ、夏帆は先入っててくれ」
「うん、ありがと」
そうして、夏帆、かずまの順で風呂を済ませて、二人は布団に入って寝ようとしていた。明日の予定は特に決まってはいないが、かずまは夏帆との時間をゆっくり楽しむつもりだ。
「かずま?」
「ん?」
「ふふ、起きてたんだ」
消灯した部屋で小さな笑い声が聞こえる。二人以外誰もいないが、微かな声でかずまは問い返す。
「どうした?」
「うんん、なんでもない」
ーカサカサ、チュ
布団の擦れる音が聞こえてから一瞬、夏帆のいい香りとサラサラな髪が顔に当たった気がした。しかし、これは気のせいではない。
「おやすみ」
「あぁおやすみ。夏帆、愛してる」
「私も」
そして、二人は目を瞑り、眠った。かずまは明日の就寝時は自分からキスしようと心に決めたのであった。
人物紹介
・風解かずま
夏帆を世界一に考える男。いま、仕事という名目で一区に来て、夏帆と幸せな時間を過ごしている。能力〈風〉
・十六夜夏帆
〈w〉に狙われながらも、かずまのおかげで日々を楽しく過ごしている。また、かずまの夏帆や家族以外に対する態度について、改めてほしいと思っている。能力〈夜〉




