40話 暗躍した英雄
結界が解き放たれ、それぞれがしなければならないことを始める。
昇降口からこちらに向かって走ってくる存在がいる。
「暗薬くーん!あてっ」
眼鏡をかけた女子が躓きながら、名前を呼んでいる。
ーギュッ
「良かったー。いきなり飛び出すんだから!ヒヤヒヤしたよ!」
暗夜に飛びつき、胸の中に顔をうずめている。しかも、涙を暗薬の制服で拭いているではないか。
「史麻先輩…迷惑かけました。ところで傷の方は大丈夫ですか?」
今、抱きついているのは、生徒会室で倒れていた史麻だ。
「ううん、痛いよ」
半泣きの状態で暗薬を見上げて首を振る。
「なら、なんで…」
「頑張ったんだから、いいこいいこしてあげないとね?あっ!忘れてた」
すると、史麻は背伸びをして、暗薬の頭を撫でている。しまいには、暗薬をしゃがませて、後ろから抱きしめて撫でている。ちなみに、二人は付き合ってはいない。ただ、史麻は天然なのだ。
「ふぅ、ありがとうございます。先輩がいるとなんだか頑張ろうって思っちゃいます」
「むむ!」
この言葉が気に入らなかったのか、撫でてる手は頬を優しく板挟みに変わる。
「駄目だから、今日はもう頑張っちゃ」
声のトーンは下がり、これが本心なんだと感じる。
「すみません。でも、最後にこいつらを会社に運ばないと」
「んーじゃあ、それが最後ね!で?もう行っちゃうの?」
抱きついている形から暗薬の前にしゃがみ込んで首を傾げている。
「そうですね」
下を向いて少し考える。
「校内では異常はありませんでしたか?浮いてる女とか、犬とか猿とか」
「そういうのは聞いてないかな」
「そうですか。なら、俺は会社に行きます。先輩はどうしますか?」
暗薬立ち上がり、史麻に手を差し伸べて持ち上げる。会社に勤めているのは、暗薬だけだが、一応誘ってみる。
「私もついていこうかなー。みんな平気そうだったし」
そうして、暗薬は手から大量の闇を出して、闇に侵食されたスガとヒョウクウをさらに覆い、繭のような状態にした。その二つから糸を張り、ひきづる形で二人を運ぶのだ。準備を整えた暗薬と史麻は校門へと歩き出す。
「ねぇ見て」
途中、史麻は少し前かがみなり、自身の制服の首元を下に引っ張って暗夜に見せつける。
「後で病院ついていきます」
そこには、赤黒くなったあざがあり、痛そうだ。本人は余裕を装っているが、恐らく骨折しているはずだ。
「えー病院かー。それなら暗薬くんは隣で私の手を握っててね」
本人は照れもせずに平然とそんなことを言う。暗薬はさっきあざを見せてきた際に見えた下着で動揺しているのに。そんな初々しい会話をしながら二人は会社に向かった。
人物紹介
・双林暗薬
風紀委員に所属している。常に優しく接してくれる史麻に対してちょっとした恋心を抱いている。能力〈毒〉〈闇〉
・史麻
風紀委長を務めている。ちょっと天然だが、人の面倒見がよい。能力〈?〉




