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35話 怪しい雲行き

「ますます状況が悪化している」

「会長…」

窓から飛び出していった暗薬(あんや)と終集家に拉致された馬午(うまご)を除いて、生徒会室には各機関のトップが勢揃いしている。そんな中で生徒会長は、打開策を思案していた。

「空気感も変わったし、ここはもう学校じゃないですよ」

狂(きょう)は分かりきったことを口にしながら、横になっているよもぎを心配そうに見つめている。

「そうだよ、今は裏世界にいるんだ」

「誰だ!」

見知らぬ声に会長が反応し、皆の注目を集めるが、その場所には誰もいない。

「う、うわ!何これ」

風紀委員長の史麻(しま)が異変を察知し、驚きを隠せない。なんと、史麻の見る先にはわたのような白い煙が渦を巻いている。

ーシュボボボワ

「気をつけろぉぉ!」

煙の膨張速度が異様に増し、会長が叫んだ頃には、部屋中を煙が覆っていた。

「会長!私はどうしたら良いですか!」

「探知(さち)さんは敵の居場所を!」

「承知しました!」

探知は会長の補佐のような立場である。命令の元に何も見えぬもやの中で目を瞑り能力を発動させる。

「見つけました!」

「どこだ!」

「わ、私のうし…」

ーボンッグチ

「ぅぅ」

ーパタン

「さぁちぃぃぃ!」

探知は奇襲に遭い、ダウンしてしまった。

「くそっ、私の能力が使えなくなった!」

「あと3人」

「もうやけくそだぁ!」

この危機を打破するため、会長は能力を解放する。手から針金が伸びて周囲を串刺しにしていく。

「うわっあっぶね」「きゃっ」

「すまない。極力避けるから、そっちもかわしてくれ!」

「僕にも気を配るなんて、流石会長」

背後だ!後ろを取られた!

「ふらぁぁ」

攻撃はさせまいと、再び針金を操り、差し込んでいく。

「所詮はこんなもんだ、ね!」

ーボンッグチ

「ぐはぁっ」

つ、強い!恐らく相手は拳で殴ることに長けている。

受けた箇所は青紫色に変色し、骨、筋繊維諸とも破壊された。

「まだ、意識があるんだ」

ーバンバンッグシャシャ

「かはっ」

ードタン

殺意がぎっしりと詰まった攻撃を数発受け、会長もダウンしてしまった。

「あと2人」

「史麻先輩!扉の方へ走ってください!」

「あ、うん!分かった!」

「お前の相手は俺がする。俺を倒してから次を狙え!」

狂は声を張り相手を威嚇する。注目を狂に向けて史麻を逃がそうと試みる。

―ガタン

「あと1人」

「ゲスが…正々堂々かかってこい」

恐らく史麻もやられてしまった。ならば、俺がみんなの仇を討ってやる。…きた!

ービュッン

「見切ったぜ」

自分を狙う拳を僅差で躱わした。視界も悪くても、攻撃が繰り出される瞬間を察知出来れば、狂は避けることが可能なのだ。そう、彼の能力は〈誤差〉なのだ。

自身の位置や飛んでくるものを僅かにずらすことができる。

―ビュンシュシュ

「あっぶ」

避ける、避ける、生きるために、仇のために。

ービュアァ

隙だ!こっちも逃げているだけでは埒が明かない。なので、反撃を仕掛けていく。

ーボワワァ

「…」

おかしい、当たらない。さっきまで、そこに居て位置も分かっていたのに…この煙が原因か。

ーシュワァ

今のはギリギリだった。

ーピチャン

なんだ?あぁ俺の鼻血かぁ。早く決着をつけなくては、能力の限界が来てしまう。

―ドゴーン

「まじかよ」

狂に攻撃を避けられてしまうため、手段を変えてきたようだ。もやの塊を圧縮させ、押し潰してくる。なんて物理攻撃だ。

ーピチャ

「やば…」

ードグッ

「うぐぱぁ」

「撲滅完遂した。が、少し時間を食い過ぎてしまった」

能力使用限界に達し、注意の逸れた狂を一撃で気絶にさせた。これはテクニックのようなものではなく、圧倒的な威力に意識がぶっ飛んだのである。

「ふぅ」

生徒会室のメンバーをノックアウトさせた存在は白い煙で壁を破壊して、そのまま重症者を廊下に吹き飛ばす。強烈な拳により痣のある生徒たちは廊下でなす術なく転がっている。それらを跨ぎながら生徒会室から出てきた。

「俺は遅かった」

突如発せられる声に反応し、目が合った。その男はどんどん近づいてくる。そして、1人の前でしゃがむと、

「史麻先輩…」

左胸上部、鎖骨付近が赤黒くなり、酷い見た目になっている。その体を抱え、壁に寄せる。

「お前に生きてきたことを後悔させる」

ここから、双林(またぎ)暗薬(あんや)の反撃が開始される。暗薬は長い廊下全体を見渡し、力を解放する。

ーシュンッ

勢いよく男に斬りかかる。

「貴方は名乗らないのですか」

ーギギギギィィ

男は攻撃をいなし、コンクリートの壁へと促した。するとその壁は泡を立てて蒸発し始める。

「私は終集家見習い、ヒョウクウと名付けられました。恐縮ですが、貴方についても教えて下さい。先ほどの弱者とは雲泥の差がある。名を聞く価値があるのです」

「弱者だと…?」

「すみません。それは語弊がありました。成長途中ですね」

「…そんなお前に名乗る名はない」

仲間を侮辱したことに暗薬は怒っている。そして、次で決めようと体に闇を纏い、ヒョウクウに襲いかかる。だが、それと同時に白煙を展開され、不発に終わる。廊下は煙で満たされてしまった。

「毒使い、貴方は私を倒せませんよ」

「こんな子供騙し!俺には通用しない!」

暗薬は煙を黒に染めるぐらいの力を出し、廊下をぶち破り校庭が丸見えになった。

「…そうですか。2つ持ちですか」

ーガガガァァ

ヒョウクウは能力を使用した暗薬の隙をつき、拳を放ったがナイフで防がれる。

「これを史麻先輩にやったんだな」

復讐心が頂点に達する。

「ぶっ飛べぇぇ!」

ナイフで防いだ拳をどんどん押し返し、開いた壁の穴に突き飛ばす。

「屋外戦ですか」

ーブワワワワ

投げ出されて終わりだったと思ったヒョウクウだったが、後を追ってくる暗薬が追撃をかまして腹にナイフを突き立ててくるが

「雲を切断できるとでもお思いで?」

「疲弊を隠しきれてないぞ」

体を雲にするのも体力の消耗が激しい。そんなこんなで、2人は校庭に着いたのだった。

人物紹介

・会長

学校のトップを務めている。視界不良、仲間を守らなくてはいけないという足枷がなければ結構強い。

能力〈針金〉主には針金の操作が出来る。

・探知

会長の補佐を務めている。会長からの信頼も厚く優秀。

能力〈探〉位置を知ることができる。

・史麻

風紀委長を務めている。ちょっと天然だが、人の面倒見がよい。能力〈?〉

・偏在狂

情報委員会に所属している。

能力〈誤差〉自分の中で範囲を決め、その中で僅かに移動したり、させたりできる。使い過ぎると負荷も強くなる。

・ヒョウクウ

終集家見習い。着実にポイントを稼ぐ知略家。能力〈?〉

・双林暗薬

風紀委員会に所属している。皆を守るために奔走している。

能力〈毒〉刃物に毒を付着させて戦う。

〈闇〉闇を自在に操る。

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