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32話 緊急事態実践

「みんなよく集まってくれた」

子分を2人連れ、切迫した様子でそう語りかける。

「会長!僕らはどうしたらいいんですか!?」

ここは、かずまも通う国立能力育成高等学校の生徒会室。校内に不審者が不法侵入したのだ。そんな時に限って、今日は

「先生に頼ることもできないなんて…」

そう会長は嘆く。だが、めげずに前向きに考えていく。

「今から全員集まったか点呼を取る」

この部屋に集まっているのは学校の中枢を担う委員会のメンバーのNo.1、2が揃っている。

「では、風紀委員!」

「私たち2人ちゃんと居ます」

眼鏡にワッペンをつけたいかにもな女子が応答する。そして、その傍には双林(またぎ)立っていた。

「次!情報委員!」

「俺だけです。なんせ、緊急招集をかけたのは情報委員長よもぎ先輩なんですから」

今回の事件の発端を説明する彼は副委員長の偏在狂(へんざいきょう)だ。

「なんでそれを早く言わない!?違う!そんな事を言ってる場合ではない。場所は?」

「はい、放送室です」

「承知した。援護が必要だ!偏在さん、馬午(うまご)さん。今すぐ放送室へ!」

「まかせろり」「分かりました」

テキパキと指示をとり、会長は犠牲者を出さぬよう最善を尽くす。そして、命令通り放送室へダッシュで向かっていった。

「じゃあ!最後の委員会!」

「…会長。その委員会メンバーは生徒会に取り込み1ヶ月前に無くしましたよ」

「すまない、混乱していたようだ」

「しっかりして下さい」

慌てる会長を子分の1人が正していた。


「何やってるの」

登校一番に朝の職務に取り掛かろうと放送室のドアをスライドさせると、豪華な服で着飾った男が部屋を荒らしていた。

「もうそんな時間か…結局見つからなかった。まぁ良い」

そして、男が窓の外に目をやると、校庭に待たせた仲間の姿が見える。

「行かせる訳無いでしょ?情報委員長としての裁きを与えてあげる」

ポチッ。男に悟られぬよう、緊急招集ボタンを密かに押す。よもぎの発言に対し、男も反論する。

「やめておけ。俺は終集家の頭、おっと、遠征過激団って言った方が分かりやすいか」

遠征過激団と聞きよもぎには焦りの色が見える。その姿にノボルは相手にするまでも無いと思い…

「ッ!アンタを蹴り飛ばすと仮定する!!」

こっちを指差して俺を蹴ると言っている。そんな事できる訳、

「うっ」

蹴られた?いや、違う。痛みだ、痛みだけがある。なんだ?俺に向かって走って来ている。

「せい!」

近距離まで接近し、完璧な中段回し蹴りを決める。

ードカァ

蹴りが命中したノボルは放送室の機材へと突っ込んでいった。だが、その機材に埋もれ出てこない。

「…」

ーボワッ

「ッ!!」

炎の線が機材の山から発車されるが、ギリギリでよもぎには当たらなかった。

「惜しかったな」

「ア、アンタを、イヤッ」

「二度もさせる訳無いだろ」

能力の使用を阻止するために落ちている廃材を顔面を目掛けて投げたが、腕で防御されてしまった。けれど、白い腕からは赤い血が垂れ流れていた。

「トドメを刺してやる」

「はぁ…はぁ…」

剣を振り翳しても、よもぎはただ睨みつけるだけ。

「終わりだ」

ースパッ

縦に一線、綺麗に真っ二つになった、はずだった。

「よもぎ先輩お助けに参りましたよ」

そこには、よもぎをお姫様抱っこ風に抱える優雅な男の子、偏在狂だ。そして、狂はウインクを決める。

「ふざけない」

「す、すみません」

これは、いつものやり取りのようだ。なぜなら、狂は全く反省している気配はないからだ。

「こいつを倒ひても、よろひーでしょうか?」

会話に割り込み、ノボルへ指を指す馬顔の男子。今でしゃばったのは馬午、会長補佐である。

「雑魚が増えたところで状況は変わらないな」

…だか、あの娘は厄介だ。俺と相性が悪い。次はどんな攻撃を仕掛けてくるのだろう。

「逃げるわよ」

「!?」「!?」「…」

「なんでですか?3対1ならあんなやつ抑え込めますよ」

この状況ならうまくいくとよもぎに説明するも耳にしていない。

「じゃあ、いくわよ。…アンタを撃ったと仮定する」

ま、まずい!さっきと同じことがぁぁ

「うぅぅ」

まるで撃たれたようにノボルはその場で苦しみだし、よもぎはそれを合図に撤退するように促す。

「行くわよ」

「はいはい、分かりました。よもぎ先輩は無茶をするんですから。馬午!いくぞ」

馬午は不適な笑みを浮かべ狂に話し始める。

「置いてって構いません!ワタヒはこいつをボコボコにひてから行きますぅ」

「ダ、ダメよ!来なさい」

「先輩、無駄です。ほったらかしましょう」

負傷したよもぎは馬午が残ることに断固反対し、動こうとしないから無理やりお姫様抱っこして運んでいく。

「さっさと戻ってこいよ」

「分かってます」

そうして、よもぎを抱えた狂は教室を出て、生徒会室へ急ぐ。

「さぁーて、どう調理いたひまひょうか」

「ぅぅあ、はぁぁ、ぐぅ、はぁ」

傷口はないが撃たれたらしい場所を手で押さえ悶えている。

「無様ですね〜♪かの遠征過激団ともあろうお方が♪」

「はぁ、はぁ」

「…8区に住んでいた母の恨み、ここで晴らひてやります!!」

痛み悶えるノボルに攻撃宣言した馬午の足はみるみる馬脚のような見た目に変わり、狙いを定め何発も蹴りを入れる。

「ぐっはっ」

まるで金縛りにでもかかったかのように一方的に痛ぶられる。

「このっこのっ!地獄で後悔ひろーー!」

馬午の足技はどんどん激しさを増し、学校の生徒に地震と錯覚させるほどだった。

「あああぁぁぁぁぁ!!!」

だが、この猛攻も悲痛な叫びに遮られる。

「はい?」

「理解した。そういう仕組みだったのか」

「あれ?」

なぜ?何故?なぜなぜなぜなぜ!なんで!さっきまでボロ雑巾同様だった男が何事もなかったようにピンピンしている!

「うあ?」

痛い?

「うぅぁあぁぁぁぁあ」

外からの悲鳴の直後、体に穴を開けられたような痛みと餅つきされているような痛みが馬午を襲ってくる。


「先輩!よもぎ先輩!どうしたんですか!?」

「ぃぃあいいぁぁぁ」

放送室から生徒会室に向かう途中の階段で、よもぎの悲鳴により狂の足が止まる。

「せ、先輩…」

あまりの痛みによもぎは狂の腕の中で意識を喪失した。

「早く連れていかないと!」

察した狂は駆け足で生徒会室に向かった。


「さっきまでの威勢はどうした?ほら、やってみろよ」

少し前とは打って変わり、ノボルと馬午の立場が逆転していた。

「あがっあ、あぁぁ、うはっ」

「俺の仮説だが、あの小娘の能力は宣言した事象が先に起こり、そして、制限時間内に行わなければならない、とかだろう。どうだ?」

「いたぃ、ひぬぅぅぅ」

「答えられないか?そうだろう、もし時間以内に達成出来なければ、全てフィードバックされるからな」

馬午を見下ろしながらそう語りかける。ここで思いついたように、右手に炎を巻きつけた剣を出して、上を見上げる。

「無事では帰さんぞ」

狂とよもぎが行ったであろう方角にあてをつけ、莫大な火炎を投げつけた。


「先輩って筋肉質な割に軽いですねー」

目的地に近づいたおかげか、緊張が和らぎ呑気なことを呟く。こんなことを言っても意識がないため反論のしようがない。

「ん?」

足元が赤く光っている?これはまずい!炎だ!直撃すれば、火傷じゃ済まされない!もう考えてる暇はない能力を使用する!来る!

ーボファァ

「間一髪セーフ」

「…戻ったのか。ご苦労様。それで、状況は?」

炎から免れた先に逃げた先は生徒会室で、よもぎをお姫様抱っこする狂に戸惑いながらも現状把握を会長は急いだ。そっと並べた椅子によもぎを寝かせ、今起こっていることを話し始める。

「はい、校内に侵入したのは例の遠征過激団です。立ち上った炎の元凶でもあります」

「そうか…分かった。馬午はどうした?」

「あいつはその場で…」

―パリンッ

「なんだ!?」

「外です!逃げるつもりだ!」

一同は窓から校庭に目をやると、馬午を掴んで中央の2人に近づくノボルの姿が見えた。


「遅かったね、頭領。例のものは見つかったの?」

「あぁ悪かった。矯溜(きょうた)の得た情報通り放送室を探したが見当たらなかった」

「そっか、じゃあ、始めちゃおっか。いいよ、スガ」

上司たちの会話を謹聴していたスガと呼ばれる子供に指示を出す。すると、スガの体から黒いオーラが溢れ出し、あっという間に学校全体を包み込んでいた。禍々しい空気が漂い、空は薄暗く不気味な様子だ。

「素晴らしい、流石に大降臨というほどはあるな」

「スガ、出口を出して」

こくりと相槌をうつと、付近に現世へ繋がるゲートが出現する。

「さて、行こう。こっからは試練だからな、俺はたちは必要ない」

ードシャーン

建物に背を向けた3人は、後ろからの破壊音のした方を見る。1人、4階から飛び出しこちらに向かってくる。

「逃すかぁぁあー」

「相手にはしなくていい。ココエらの楽しみを奪うことになってしまう」

「う」

出口を向き直したノボルの後ろから苦しむ声が聞こえる。

「下からやってくるなんて卑怯だね」

なんと、足元からはドス黒い何かがスガを捉え、ノボルやシノギにも襲いかかっていたが、なんとかかわしていた。

「スガもこれくらい避け…まずい、頭領!出口が!僕たちじゃ出れなくなる」

スガが澱んだ何かに蝕まれていると、出口の消失が始まる。

「構わない。シノギ進もう」

猛スピードで終集家に辿り着こうとする生徒がいることよりも、脱出不可ということを恐れ、出口をまたにかけた。同時に出口は消滅し、息を切らす男子生徒と仮死状態にあるスガがその場に取り残された。

「くそぉっ逃した!はっなんだ?この学校内から感じる異様さは」

スガのオーラが包んだ直後、強敵の気配を感じていた。

「早く生徒会室に戻らないと、史麻(しま)先輩が心配だ」

先輩が気がかりなため、双林は校舎へ走り出した。


「さぁ、地獄の試練の始まりだ」

人物紹介

・ノボル

終集家の頭領を務めている。今回は学校を舞台とした大規模な計画を実施しようとしている。

能力〈炎〉炎を剣に纏わせて戦う

感情〈無(第零感)〉

・スガ

終集家に育てられ、大降臨と呼ばれる存在。

能力〈裏〉現実と似たような裏の世界を作り出す。

・よもぎ

情報委員長を務めている強気な女子生徒。

能力〈仮定〉宣言した事象が先に起こり、制限時間内に行わなければならない。もし時間以内に達成出来なければ、全てフィードバックされる。

・偏在狂

情報委員に所属していて、顔はいいが少し抜けた男子。能力〈?〉

・馬午

生徒会に所属する馬顔の男子。最終的に終集家に連れていかれてしまった。

能力〈馬〉四肢を馬のように変化させることができる。

・双林

風紀委員に所属している。閉じ込められる危険をいち早く察して、スガを捉えた。能力〈?〉

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