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29話 プライドは折れない

今、ワタシたちは落ちています。

しかも、身動きの取りにくい空中で子供二人をかかえています。

けれど、それは攻撃をしない理由にはなりません。

ーボキッ

ポッキーは足の指をノボルに向けて、すぐに折り曲げた。

「こんなものか、勝つ算段もないのによくやったものだ」

それは、骨折部分から見えない衝撃波が飛んでいたのにも関わらず、ダメージを与えられなかった。

付け加えると、ノボルは落下中に至近距離のポッキーの攻撃を剣で捌いたのだった。

「何故、こんなことをする?教えてくれ、俺にはわからない」

かつての仲間が反旗を翻したことにノボルは訳がわからない。

「…」

何故でしょう?

そうですね、強いて言うならば、これは恩返し…

いや、ワタシはきっと感動していたんですね。


これは八区で炎が落ちた時に遡ります。

ワタシはただ歩いていました。

集終家の仕業だろうとか考えながら。

そして、子供を発見したんです。

その最初に見つけた子供は、臆病で卑怯で仲間を見捨てていると思いました。

けれど、実際は己の能力を最大限活かし、友を守っていたんです。

次のカタイさんに半殺しにされていた二人も、最初の子供が倒れた後、自分のできる最善の行動をしていたんです。

ですが、それだけではありませんでした。

実は三人の子供が一人の子供を逃していたのです。

それには、驚きと感動、いろんな感情が湧き出ました。

そんな、世界のあるべき姿を子供たちが体現しているなんて…ワタシはワタシ自身を許せなくなった。


「アナタに言っても分かり合えないでしょう。ですから今から宣言いたします。もう、ワタシはアナタの仲間ではありません!」

ポッキーにもう、迷いはない。

「そうか、好きにしたらいい。お前を生け取りにしても、能力は使えないから殺してやる」

これで両者の気持ちに整理がついた。

「ヒヒヒ、口で言うぶんには自由ですから。アナタはこの落下の衝撃に耐えられますか?」

下を見ればもう地面だ。

だが、ポッキーには作戦がある。

そして、即座に地面へと体を向け、右腕を折った。

ーバキンッ

すると、骨折部位から放たれた衝撃波により、落下にかかる重量は相殺される。

ースタッ

そして、軽く着地成功した。

一方、ノボルはどうだろうか?

地面と触れた途端に肉の塊へと変貌し、呆気なく勝負がついてしまうのか?

そんな光景が見れるのも、もうすぐだ。

ーサッ

「!?」

なんと、羽が地に落ちたような優しい接触音。

なんなら、ポッキーよりもお淑やかに着地してした。

当人のノボルは泰然とした態度でこちらを見据えている。

「こ、これが、感情ですか」

一つの希望が潰されて、本心の言葉が漏れてしまった。

「凄いだろ。俺でも驚いている…いいや、驚いていない」

意味不明な自問自答にポッキーは理解が追いつかない。

「さてと、お前にサービスをしてやろう。これも元仲間としてのよしみだ。俺の感情についてヒントを言ってやる」

この時点で勝ちを確信して、ノボルは余裕の様子だ。

「…まさか、そのことを知れるなんて光栄です」

こんな、世界で少数しか知れない情報が開示されるなんて、死んでもいいと口にしてしまいそうな幸せがある。

相手が敵であっても心の中で感謝の念を抱いていた。

「では、話そう。これは、俺が幽閉され十日が経過した頃。することが無くなり、瞑想を始めた。そして、気がつけば一ヶ月が経っていた。そして、その時に俺は無の極致に辿り着いた」

ーゴクリ

思わず、息を呑んでしまう。

「そこで、俺は教えられた。第零冠、感情〈無〉になれたのだと」

「だ、誰にですか?」

ポッキーは好奇心でつい聞いてしまった。

「そうだな、見せようにもお前らには見えないんだったな。口で説明するとすれば、白くてちっさい生き物だ」

ノボルは何もない空間を手で扇いでいる。

恐らく、そこにいるのだろう。

「他にも教えてくれたっていいんですよ」

これはただ単に貴重な情報ってだけで何の攻略のヒントにもなっていない。

「ふん、そうだな。なら、攻撃をさせてやる。これでわかるだろ」

本人は自信に満ちている。

万が一でも、やれるかも知れない。

なので、さっき折れた右腕を向ける。

そして

ーグシャァ

「ぐっ」

右手を粉砕骨折させ、前方に威力の塊が飛んでゆく。

だが、ノボルに異変はなかった。

「…終わったのか?そう言うことだ」

「駄目でしたか」

すると、ノボルはただ目を瞑りだした。

「ガキどもは、もう治ったはずだ。いつまで仮病を続ける?」

なんと、ポッキーが連れ出した子供たちを世界具〈包帯〉で治癒していたことを知っていた。

「そこまで、分かっていたのですね」

時間稼ぎに気づきながらも、わざと付き合ってくれていたようだ。

そして、そっと子供らに巻かれた包帯を巻き取る。

「え、ぇ?」

子供はまだ混乱していて現状を把握できていない。

「逃げて下さい。ワタシはアナタ方に償いをしたい」

まだ、理解できてない子供たちは、困惑している。

そこで、その中の子供、栄都(えいと)の意識が鮮明となった。

「助けて、くれる、のか?」

「はい」

「なら、これを」

ポッキーの青黒くなった右手を見て、栄都は絆創膏を貼った。

気がつけば、優姫(ゆうき)も覚醒していた。

「わ、私はこれをあげる」

左手には、健康第一と書かれたお守りが置かれている。

「今は何が起きてるかよく分かんねーけど、俺たちを助けてくれるんだろ?ありがとな」

そう言い残し、栄都(えいと)は優姫(ゆうき)の手を引いて走っていった。

「アナタたち…」

見ず知らずでもあり、敵だった存在にも、優しくするなんて…

「ワタシも腹を括らなければいけませんね」

また、子供たちに感化されてしまった。

ここでノボルを倒せるなら、やってみる価値はある。

「逃げれるとでも…」

ノボルが剣を取り出して、子供らに構えている。

「待ちなさい!」

そう叫ぶポッキーの右手に絆創膏、左手にお守り、そして、口に世界具〈包帯〉を噛んでいる。

「やるのか?果たしてお前に耐えられるかな?」

その様子を見たノボルはポッキーが何をしようとしているのか悟っていた。

「ヒヒ」

やってやりましょう!

覚悟を決め、世界具〈包帯〉を飲み込む。

「うぅぅく、きぐぅぁあ」

喉を通ってくれ!

「う、う、う」

ーゴクン

「さぁどうなる」

ノボルは期待の眼差しで眺めている。

すると、ポッキーはもがき始めた。

「うがぁ、うがぁぁ」

その唸り声が尋常ではなかった。

「うがぁぁぁぁぁあ」

みるみるうちに、ポッキーの体中から包帯が湧き出して、それは海藻のように揺ている。

「うはっ、はぁはぁはぁ。これ、で、やれる」

意識を取り戻したポッキーはノボルを見定め、目に覚悟の意思が宿った途端、包帯が体中を縛り上げた。

ーミチミチ、キュッ

そして、そこには包帯をキツく縛られた男がノボルの前に立ちはだかる。

「申し遅れました。ワタシの名は永久機関ポッキー。弱点を克服した、真の姿でございます」

「それで、勝てるのか?」

その包帯は赤く染まり上がっている。

きっと、キツく締めたことによる出血と二つの能力を体が拒否し、血が湧いて出ているからであろう。

なので、早急に決着をつけたいところだ。

ーキュュュ!バキバキゴキバキバキバキゴキゴキグシャバキゴキバキブチグチョゴキバキバキ

包帯が締まると骨の折れる音が止まない。

それと同時に、破壊するエネルギーが溢れ出て周りの環境までも壊されていく。

いくら感情〈無〉であれど、限界が来るはずだ…

ースタスタ

来るはずなのに…こちらへと歩みを止めない。

「一度効かなければ、手段を変えるのが得策だぞ」

ノボルは手に炎を構える。

ーバッ

だが、それはすぐに衝撃破により弾かれ消えてしまう。

そして、衝撃波なんてもろともせず、ノボルは再度剣を構え

「無駄遣いとはこの事を言う」

ースパンッ

ポッキーの首を呆気なく落とした。

ポッキーからは大量の血と普通の倍の量の粒子が空へ舞い上がっていった。

それにつられて上を見上げると、迎えに来たカタイたちが上空から降りてきていた。

「逃げた奴らはどうするの?」

「もういい、時間の無駄だ。早く次のフェーズへと移ろう」

そして、ノボルは円盤に乗り、終集家は遥か高い空へと昇っていった。

人物紹介

・ポッキー

自分のした行いに対する償いをするために、終集家に反旗を翻した。骨折と治癒を繰り返すことで、骨折の弱点を克服した。ノボルに首を落とされなくても、のちに血が吹き出し、能力過多で死んでいた。

能力〈骨折〉自身の骨を折ることで大きな力を飛ばすことができる。そのため、骨を折れやすいように脆弱に保っている。

能力〈包帯〉巻いた箇所を治癒することができる。世界具と同じ能力のまま引き継いだ。

・ノボル

第零冠であり終集家の頭領を務めている。裏切り者は直ちに粛清する。

能力〈炎〉そのまま出したり、剣に纏わせて戦う。

感情〈無(第零冠)〉自身の感じていないことは、一切ダメージとならない。見えなければ効かないし、聞こえなくても聞いていない。

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