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28話 侵入危険領域②

ーキィィ、パタン

「今戻ったよ…何か大事なお話し中だったかな?」

体育館で待機をしていたノボルと刻時矯溜(こくじきょうた)の二人。

圧迫に近い会話をしていたところをシノギによって遮られた。

そのことに目を見開いている矯溜に対してシノギは疑問を抱いていた。

「気にするな。カタイは一緒じゃないのか?」

「あの人はあと三十分ぐらいすれば帰ってくるよ」

そう言うと、シノギは体育館の中心に設けられ席に着く。

「そうか」

そして、現状の報告を頭領であるノボルに話始めた。

「んー率直に言うよ…八区には強い能力者が全然いなかった」

声のトーンからしても、シノギのがっかりとした様子は誰の目から見ても明らかだった。

「しかも、数も少ないね。〈地図〉にはもっと載ってたはずなんだけど…だから今回は集められても五十人くらいかな」

「まぁ、仕方がないだろう。とにかく今はカタイを待とう」

「ちょっといいですか?」

すると、矯溜が口を開いた。

「集めた能力者はどうするんですか?」

「まだ見せたことないのか」

「あー、それは頭領が来てからでいいって思ってたんだよ。だから、結構貯まってる」

矯溜には訳が分からないが二人は盛り上がっている。

「そ、それで…」

「焦るな。教えてやる」

ーゴクリ

「俺らの拠点にたくさんの子供が居ただろ。あいつらに渡すんだ」

「?」

ノボルの説明では矯溜はよく理解出来ていない。

「ほんと、たまに勘が悪いよね。殺すんだよ。ガキたちの真ん前で。そこから能力を引き継がせるってこと」

「なるほど。それで相性の良いの能力を持たせて、兵器として使うってことですか」

分かったかのように声をあげてそう答える。

「ふふ、まぁそれもそうだけど、集終家の目的、これを忘れちゃいけないね」

「あっ!」

ようやく、頭の中で一致した。

ーキィ、ガンッ!

すると、勢いよく扉が開いた。

「おい!みんな!見てくれよ!」

開いた扉から、はしゃいでいる声がする。

それはみんな、すぐにカタイだと理解していた。

だが、真隣に縦長のシルエットが見える。

「おぉ、ポッキーか」

その人物にいち早く気付いたのはノボルだった。

「生きていることは、知っていたけど…まさか、ここにいるとはね」

「まったく、災難でしたよ。運良く刑務所から脱獄したと思えば、八区に来たらいきなり炎が降ってきましたから。でも、アナタだとは、すぐ、分かりましたよ」

ポッキーは刑務所から逃げ出した後、たまたま八区に来ていたのだ。

理由としては、他の脱獄者も八区に向かっていたのを知り、ついていったという単純な理由である。

「それはすまなかったな。ちなみに戻ってきてくれるのか?」

そんな苦労をしたポッキーにノボルは集終家に戻らないのかという誘いをしている。

元々、ポッキーは抜けたつもりはない。

任務で忸怩って警察に捕まっただけなのだ。

「そうですね、ワタシは今暇しているので、是非」

だが、ポッキーは過去のことを怒っている様子は見せずに快く了承した。

ーガタッガタ

「ん?カタイは何をしているのかな」

カタイはポッキーをみんなに紹介したあと、すぐに外に出ていった。

そして、囚われの人がいる倉庫から、一人を担いで持ってきていたのだ。

「よくぞ、聞いてくれた。こいつを見てほしい」

ーガタ

カタイはそれを机に置き、全員に見せつける。

それは固く、可憐な乙女の姿をしていた。

薄紫色の麗しい髪も動かない。

「これは…人かい?」

シノギは興味津々に観察をしている。

「俺との勝負の最中にこうなったんだ。早くお前らに見せたかったんだが、ガキどもに時間くっちまってよ」

カタイの出した話題に終集家の面子は机の周囲に集まり、考察始めた。

「なぁ、誰かこれ分かるか?」

「どう見たってこれは能力だね。うん、カチカチだ。何の能力?」

「それが知らなくよー」

当の本人は頭を掻いてにやけている。

「んー難しいね」

シノギは顎に手を当て、真剣に考えはじめた。

ーよくも、あの子たちを…

何処からか声が聞こえる。

「何か言ったかい?…」

ーピキピキピキ

突然、机の上の個体にヒビが入る。

「あ?なんだ!」

「カタイ!変なものを持ってきたんじゃ無いだろうね!」

いっきに亀裂が入り、その少女のようなものは光を放ち始める。

そして、彼らは少女から距離を取ろうとするも、もう遅い。

ー死を以って償って下さい

ーバリーン!!

割れた。

「飛んでくるぞ!」

そして、その場で爆散した。

ーシュウィン!シュウィン!

その破片がそれぞれに飛んでいく。

主な被害はポッキーは腹部に、矯溜は腕に破片が刺さった。

それ以外には、カタイ、シノギにも、刺さりはしたが能力でガードしたため、被害はない。

だが、その中でノボルだけは無傷だった。

「お、驚かせやがって…」

問題を持ち込んだ張本人が一番驚いている。

ーシューーーーーシューーーー

何かの漏れ出る音がする。

「おかしいです。変な匂いがしませんか?」

次に異変を察知したのは矯溜だ。

「こ、これは!みんな!息を止めて、ここを破壊するんだ!」

すると、化学の知識を持つシノギは理解したようだ。

この危険な状況を!

「シノギ、さん。たす、けて、ぐだざい!」

だが、もう苦しみ出している。

この場で耐えているのは、ノボルとシノギのみ。

シノギは〈障壁(バリア)〉で口を塞いでいるが、ノボルはどうやって防いでいるのかは不明だ。

恐らく、第六冠の感情の力だろう。

「ぅ、ぅぅ」

ど、どれほどの毒物質がばら撒かれたんだ!?

シノギはみんなを助けるために頭を最大限に回転させている。

お、多すぎてわからない。

こんな状況でもノボルは未だ動かない。

けれど、それは賢明とも言える。

彼の能力の〈炎〉なんて迂闊に出せば、毒物質と化学反応を起こして爆発しかねない。

すると、痛々しい音が鳴り響く。

ーバキバキバキバキ

「うぅぅあぁぁぁあ!」

突然、ポッキーが発狂し、声を荒げて叫び出す。

そして、見えない何かが飛び出し、体育館に沢山の穴をぶち開けた。

「すぅはぁ。たすっかった。ポッキー」

新鮮かどうかは不明だが、外の空気が入ってきた。

カタイの感謝にいいんですよ、と言いながら体に包帯を巻いている。

「ポッキー、何だそれは?」

興味を示したノボルが問いかけた。

「これは世界具〈包帯〉です。巻けば傷は徐々に癒えていきます。ワタシの〈骨折〉と相性がいいのです。」

「それは、凄い」

ノボルは目を輝かせている。

「そんなことよりも、アナタの方が不思議ですよ。どうして、無傷なんでしょう?」

当然の疑問をノボルにぶつける。

「感情の力を手にした、それだけだ」

納得をしたようにポッキーは頷く。

やはり、感情は大抵の人には認知されているようだ。

「あぁーむしゃくしゃする!さっさとこいつら連れて拠点に戻ろうぜ!」

完全な敗北感を味わったカタイは倉庫を指差し、みんなを急かす。

「もう、生き残りはいないな?」

「はい、ワタシぐらいでしょう」

この時、ポッキーには心残りがあった。

それは自分が最初に攻撃をした〈人形〉の子供だ。

「よし、シノギ」

ノボルの合図でシノギは地図を取り出し、八区に張ったバリアを解く。

そして、目の前にバリアの円盤を造り、それに乗るように促した。

「これで全部ですね。シノギさんお願いします」

総勢四十人を乗せた円盤は高く高く上昇していく。

終集家は八区から、全てを奪い、更地にして帰って行った。

ー私は誰一人倒せなかった…次は全員倒す


円盤はどんどん上にあがる。

「結構高い所にありますよね」

「そうしなきゃ見つかっちゃうからね」

「お前、何キョロキョロしてんだ?」

ポッキーの挙動不審な態度にカタイが指摘する。

「…ちょっと、試したいことがありまして…」

すると、ポッキーは不気味に歯を見せて笑う。

「ひひ」

そして、人の山から、子供を二人引っ張り出してヒョロヒョロの片手で抱える。

「それは、ノボルさんとの一騎打ちです!」

助走をつけ、ノボルへと突進した。

ーガシッ

空いた片手でしっかりとノボルを掴み、地上六百メートルもの地点から落ちていった。

人物紹介

・ノボル

終集家の頭領を務めている。感情の力により不思議な現象が多数起きている。能力〈炎〉感情〈?〉

・ポッキー

終集家に参加すると思われていたが、最後に反逆の行動をとった。体は弱々しく、掠れた声は肺をあまり動かさないようにする工夫。

能力〈骨折〉自身の骨を折ることで大きな力を飛ばすことができる。そのため、骨を折れやすいように脆弱に保っている。

世界具〈包帯〉傷などの下部に巻けば徐々に治癒していく。

・散玉きえこ

終集家に囚われていたが、最後に華麗な攻撃を見せて、散っていったように見えたが、、、

能力〈状態変化〉自身が完全な固体となる前に、毒固体、空気素材の固体を体内に取り込み、自身が個体となったあと、昇華させ、爆発した。

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