27話 侵入危険領域①
ーシーン
ここは体育館。
八区にある大きな学校に隣接されたものだ。
そこは風通しの悪いことだけが欠点な巨大な体育館。
そして、今は沈黙に包まれている。
「…あの…頭領にお聞きしたいことが山ほどあるのですが、よろしいでしょうか?」
だが、ある男が耐えられなくなり、この沈黙は破られた。
「いいだろう。しかし、答えられる範囲でだけだ」
今、この馬鹿でかい空間には、ノボル、そして、刻時矯溜が待機していた。
ここは仮の拠点として使われている。
その他の面子は狩りに出かけ、捕獲した人は体育館前の倉庫に収納している。
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて。幹部方の腕に書いてある模様について教えていただけますか?」
座るノボルの腕を見ながらそう言った。
「あぁそれか。矯溜は他国に行ったことはないのか?」
すると、ノボルは懐かしみを含んだ声音で答えながら、腕を摩っている。
「はい、ございません。生まれてからずってこの国で暮らしていました」
「俺の国ではな、二人組という制度をとっている。それは相手を決めて、その相手の能力を印として体に刻む仕組みだ」
「…そ、そうなんですか…」
その話を聞いて理解したような気がした。
ノボルの腕にはマークがない。
つまり、そういうことだろう。
流石にその話題に触れることはできない。
「なんで俺には無いのかって?」
気まづさが伝わったのか、ノボルは笑いながら言った。
「伺ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、俺には刑務所に入る前まではあったんだ。だが、ちょうど半年前に消えたんだ。お前も分かるはずだ、半年前に何があったか」
「…武器などの支援が止まりました」
元々この終集家に密かに投資を行っていた会社があった。
だが、その代表が死亡したことで支援が中止された。
代表は六年前から行方不明になっていたが、半年前に死体が発見され、容疑者も捕まった。
なんと、その容疑者は高校生だったと聞く。
しかも、代表の息子だそうだ。
「そういうことだ。俺たちは最初シノギ、そして、今はいないもう二人を含めた六人でこの国に来た」
恐らく、拠点にある空席の二人だろう。
「俺たちが来た理由は分かっているだろう?話せるのはここまでだ。他に聞きたい事は?」
次のことは聞いていいのだろうか…もし、逆鱗にでも触れてしまったら…
「…」
「なんだ、俺が聞いていいって言ったんだ。好きに言えばいい」
ならば、遠慮なく聞くしかない。
「…この前、国邸で頭領に触れた時、頭領の記憶を知ることが出来ませんでした。なぜか、お聞きしても」
「そんなことか、答えは一つだけだ。俺は強くなった」
「強く?」
答えが抽象的すぎる。
「矯溜は第六冠ついては知ってるか?」
確か、能力とは別の類のものだ。
「はい、感情を冠するものとシノギ様から教わりました」
「大体は合っている。俺はそれになったんだ」
まさか、それになっていたなんて…
一体どの感情なんだろうか。
「そういえば、刑務所内でもいたな」
「まさか、第六冠が!?」
あり得ない…そんな貴重な存在が二人も揃うなんて、と矯溜が驚いていると、ノボルは誰かと話している素振りをしだした。
「…いや、違うらしい。感情〈悲〉だと?しかも、未完全…」
誰かと話しているように見えるが、ここには二人しかいない。
「ちなみに教えてやる。第六冠が扱うのは感情だけじゃ無いんだ」
感情なのに感情だけじゃない?
つまり、能力を二個持っているのと同じことなのか?
「というと?」
「身体の一部に関した力も宿るんだ」
ん?よく分からない。
だが、ここは頷いておこう。
「初めて知りました!それで…」
ーキィィ、パタン
「今戻ったよ」
すると、軋み音を立てながら扉が開いた。
そこにはシノギがおり、二人の話はシノギが帰ってきて、話は中断されたのだった。
人物紹介
・ノボル
終集家の頭領を務めて、仲間に対しては少し優しい。能力〈炎〉第六冠〈?〉
・刻時矯溜
シノギの助手であり、終集家の幹部も務めている。計り知れないノボルの実力に恐怖している。能力〈記憶〉
・感情〈悲(未完全)〉涙を見た者に過去一番悲しい記憶を思い出させ、それに応じて胸に傷を与える。その涙には人の目を奪い、注目させる効果もある。




