↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/60

26話 僕たちの英雄

ーパタンッ

「うぐぅ」

「泣かないで!走って!」

気の強い女の子はそう子供に言い聞かせる。

なぜならば、後ろからは

「甘丸(あま)!危ない!」

ービュボ

豪速球の石が飛んでくるからだ。

現在はきえこと別れてから六人で安全そうな所を目指して歩いていると、見知らぬ男に追われている。

ーヒュボ

「いっ!」

さらに飛んできた石から女の子は甘丸を庇い、肩に石がめり込んだ。

それを甘丸が怯えないようになるべく声を上げず、痛みを堪える。

ーポタッ

だが、血は止まってくれない。

「ゆ、優姫(ゆうき)ちゃん」

甘丸は再び泣き出しそうだ。

「私は、大丈夫。栄都(えいと)…あつき…甘丸を傷つけたら、許さないわ!」

優姫は男たちを呼んで甘丸を託そうとしている。

「優姫…でも…」

自身の怪我の具合は自分がよくわかってる。

今はもうこの四人しか残っていない。

原因は背後からの投石だ。

「…」

まだ、優姫から告げられた別れに栄都とあつきは躊躇っている。

「足手纏いには、なりたくないの…全く、情けない男どもね、早く行ってよ」

優姫は覚悟を決め、きた道を引き返そうとした。

その時

「なんだぁ?もう逃げるのお終いかぁ?」

男の声が極限まで近づいていた。

「ッ!!」

「行って!!」

人を嬲ることに悦びを孕んだ声が近づくと、優姫は歯を食いしばり叫ぶ。

ーペタッ

だが、そこで栄都は絆創膏を取り出し、優姫の肩に優しく貼った。

そして、栄都はあつきに目配せをする。

それが伝わったのか、あつきは甘丸を抱え走り出す。

「いやだよ!優姫ちゃんも!栄都くんも!いなくならないで!」

そう甘丸が喚くも、あつきは足を止めない。

止めたくとも止めることができないのだ。

みんなが信頼してくれたから。

「やっと行ったな…お前は一人で残ろうとするなよ」

あつきが甘丸を連れて行き、もうこの場には栄都と優姫しかいない。

「なによ、格好つけたつもり?」

「きえねーちゃんもそうしたからな」

間髪開けず即答する。

「…きえお姉ちゃんの代わりは私だけで充分よ」

そんな会話をしていると意外な人物が混ざってきた。

「優姫がきえお姉さんだなんて笑わせないで下さいっ」

なんと、さっきいったはずの衣野あつきだ。

「あんたまで…ダミーね」

ーカチッ

安息は続かない。

気づけば、終焉を告げる足音が目前で響く。

「お前らで最後にしてやろう」

子供らに対して、カタイはそう言った。

そして、カタイは負傷をしている優姫めがけて殴りかかる。

「おらっ」

―グニュ

「グニュ?」

ーパフッ

普通に考えて、人を殴ったらこんな音がするわけない。

ならば、俺が殴ったのは何なんだ?

目をやるとメガネをかけた小学生が地面に倒れていた。

なるほど、庇ったのか。

「痛いですっ!」

すると、子供は立ち上がり、決めポーズをとる。

そして

「僕が相手ですっ!ぶへっ」

また、殴られる。

「効いていないな」

カタイの攻撃をまともに受ければタダでは済まない。

だが、あつきは平然とし、ふざける余裕まである。

「でも痛覚はあるんですよっ!」

後ろには負傷を負った優姫、攻撃系統の能力を持たない栄都…僕がこうするしかないですっ。

痛いっ、めちゃくちゃ痛いっ。

けど、痛みだけなんですっ。

なぜなら、これは僕の能力〈人形〉で作った偽物だからですっ!

本体は今頃…


「ここまで来れば大丈夫でしょうっ」

二人から百メートルくらい離れました。

「あつきくん…」

甘丸は泣きそうです。

ですが、僕にはケジメがあります。

「真っ直ぐですっ。行けますねっ?」

「い、行きたくない…」

僕だって君を一人にしたくはありません。

「大丈夫ですっ!僕が二人を助けるだけですよっ!」

だから、平然を装って心配させないようにしませんとっ。

「ぅん、優姫ちゃんたちを助けて!」

やるとは言ったもののできるでしょうか…

「僕に不可能はありませんっ!では!一斉に走りましょうっ!では、また会いましょうっ」

これが、一番格好いい涙の別れですっ。

ースタスタッスタ

甘丸は力強く走っていった。

さて、ここに着けば、僕が痛ぶられているのが見えますっ。

ちょうど二十メートル離れた岩陰に見を隠している。

「よしっ」

僕の能力は、僕が傷付かなきゃ無敵の能力なんですっ!

でもまぁ、自分に似た〈人形〉が痛ぶられているのは見てて嫌な気しかしませんがっ。

「アナタ、仲間を見殺しにするつもりですかぁ?」

ービクッ

あつきの耳元で囁くように恐ろしい言葉が聞こえる。

突然のことに体から震えてしまう。

しかも、背中に何かの感触がある。

ーボキッ

「か、はぁ」

すると、背後からの強烈な衝撃により肺が潰れる。

うぅ息ができない。

「ワタシは仲間を裏切ることが許せません」

その人物はカスカスの小さな声で語りかける。

そして、その病人のような風貌で細身の男は、人形の転がる戦場に向かっていった。

「なんだぁ?お前もやられに…ポッキーじゃねぇかよ!ここにいるなんて考えもしなかったぜ」

血まみれの子供二人とボロボロの人形にした元凶が歓喜をあげる。

「カタイさん…久しいですね」

なんと、ポッキーと呼ばれる人物は終集家のメンバーだったようだ。

「がはは、てっきりまだ牢獄にいるかと思ってたぜ」

「…」

その言葉にポッキーは黙り、子供らを見渡した。

そこには、重症の子供二人。

そして、それを守るように倒れた、胸のあたりが凹んだ人形。

その時にポッキーはこう思った。

まさか、さっきの子供が二人を守っていたのですね…

「ワタシがこの子供を運びましょう。どうせ、戻るところでしょうし」

「けどよ、もう二人逃げちまって…捕まえねぇと」

カタイはあつきと甘丸が行った方向に体を向ける。

「…ワタシが殺してしまいましたよ。すみませんね」

すると、ポッキーは申し訳なさそうにそう言った。

「おぉ、そうか!なら、いいよ。ってか、大丈夫か?折れそうだぞ?」

子供を持ち上げたポッキーにカタイはそうつっこんだ。

「そこのところは気にしないで下さい」

だが、実際はあまりよくはない。

ポッキーは軽い苦笑いをした。

それに対してカタイもガハハと笑っていた。

「臨時拠点はあっちだ。いくぞ」

そうして、先に行くカタイに二人を持ったポッキーがついていく。

その時、ポッキーはバレないように子供たちを包帯で覆っていた。

人物紹介

・蛮堂栄都

人形が動かなくなったあと、カタイを殴ってみたが全く通用しなかった。

能力〈絆創膏〉自由な大きさの絆創膏を創り、貼られた怪我は、自身が怪我自体を忘れた頃に完治する。

・衣野あつき

敬語を使い、緊急時には頼りになるメガネ。

能力〈人形〉自身の身代わりを作り出せる。本体が負傷を負うと人形にフィードバックされる。

・優姫

栄都とあつきが残ってくれたことに対し、内心とても喜んでいた。能力〈?〉

・ポッキー

不健康そうな、ガリガリの男。脱獄犯の1人であり、終集家の幹部。能力〈?〉

・カタイ

子供に対しても残虐な男。きえこを引き渡したのち、子供を発見した次第。

能力〈岩盤〉己の体を岩盤にすることで、攻撃や防御に生かす。重量も増す為移動速度は鈍くなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。