25話 今よりも、この先を
一体いくつの死体を見たのだろう。
十を超えた時から数えるのはやめた。
そんな中でもふと考えてしまう。
甘丸たちは無事だろうか?
まずは、この現状をこれより悪化させないことが大切だ。
ーボワッ
「うくっ、あつい」
まだ、町は燃え続ける。
今のは付近にあった家の炎が急激に膨れ上がってやけどをした。
それの繰り返しできえこは何度も炎に焼かれ、顔や衣類は煤で黒く汚れている。
それは八区を歩き回った印でもある。
だが、ここまで来て、人っこ一人会わない…
なぜだろうか、みんな焼かれてしまったのか?
「お!ガキがいんじゃねぇか!」
すると、右の方から声がした。
誰だろう、もしかして、生き延びた能力者なのかな?
…いや、違う。
奴の右手には倒れた人の髪を二人引きずっているのが見えた。
つまり、敵だ。
「お前の能力はなんだ?言うのが嫌なら見せてみろ!」
その見窄らしい髪の男は近づいてくる。
しかも、その男からは数多の戦場を潜り抜けたようなオーラを感じる。
そう、なぜならばこの男は集終家のカタイであるからだ。
「今すぐこんな事はやめて下さい!」
きえこは叫ぶ。
まだ、生きている人がいるのだから。
「もう遅いだろ?」
カタイは笑いながら言った。
「…」
この人は手遅れだ、そうきえこは考えた。
「俺は生き延びた能力者を捕まえろって命令に従っているだけだ。まぁ、こんな楽しい事、指示されなくてもやるけどなぁ」
「…あなたの仲間はどのくらいいますか」
きえこは呼吸を整えて真面目に聞いた。
「わるもんに敬語っておもしれーな!いいぜ、教えてやる」
きえこは息を呑む。
「四人だぁ。どうだ?」
四人…思っていたより少ない。
けれど、この被害を見れば相当なもの。
じゃあ、この事件を解決するためには私はこの人を倒し、その後、残り三人を倒すが良いか。
それとも、一度囚われてから、一網打尽にするが良いか…
ーザザッ
まずい!男が走ってきた!
ーバゴッ
「はぐぁ」
痛い…まるで、石の塊に殴られたような痛み。
私は武力はあまり得意じゃない、でも能力がある。
あと、勘も鋭い。
だから、今の攻撃で分かった。
あの人は自信で漲っている。
なら、油断を誘いやすい。
ーガゴン
「ぅうぅ」
鳩尾、いや、もっとひどい。
骨も他の臓器もやられた。
ーシュウィン
ーグギッグッボゴッ
「ぐっ、うっ、ぶはぁぁぇ」
「抵抗しろよ。あの炎を受けて生きていたんだ。もっとやれんだろ!」
ーシュウィン
カタイは声を荒げながら、ひたすら殴り続ける。
血が、流れている。
ーシュウィン
まだ、足りない。
ーズバン
「くっ、はぁぁ」
「なんだこの女…」
よし、岩陰に飛ばされた…今食べてしまおう。
そして、ポケットにしまっていた飴を五粒飲み込む。
これは仕事で回収してポケットに入っていたものだ。
「おい…今何食った」
これで勝てる!
さて、最後に
「すぅぅぅぅぅ」
空気を!もっと!
「すぅぅぅぅぅぅぅ!」
これで、足りるはず!
でも、念のため、さっき作った物も飲み込む。
だが、おかしなことに、きえこの行動をカタイはただ見ているだけ。
「…何も、しないのか…」
恐らく何らかの攻撃をすると思っていたカタイは何もしてこないきえこに落胆するように嘆いた。
「えぇ、あなたとは、これで最後になります。宜しければ、お名前を教えてはくれませんか?」
こんな女初めてだ、と思いカタイは油断した。
「最期なんだな。…俺は、カタイ。能力は〈岩盤〉。お前についても興味がある。教えろ」
すると、きえこは淡く微笑み、倒れた姿勢から体育座りなり
「私は散玉きえこ!と申します!能力は…」
ーヒュカー
〈状態変化〉と、言っても聞こえてはいないのでしょう。
カタイはいきなり話さなくなったきえこを見つめる。
「面白くないぞ」
返事はない。
当然だ、きえこは全身を固体へと変えたのだから。
「…きえこか」
すると、カタイは悩み、硬くなったきえこを持ち上げて持って帰ってることにした。
そうして、もやもやした気持ちを抱えたままカタイ拠点へと向かっている
「三人か、少ないね。間違えってことにして、殺した?」
道中にシノギに会ってそんなことを聞かれる。
「今はお前と話す気になれねぇ。この三つは運んでくれ」
そして、手にしていた、きえこを含む三人をシノギへと渡す。
一方のシノギはバリアの檻の中に六人入っていた。
「俺はあと少し狩ったら、体育館に戻るってノボルに伝えてくれ」
「あいあい」
会話のあと、二人は別々の道を歩む。
この時、二人は会話を聞かれているとは、思いもしない。
人物紹介
・散玉きえこ
弟たちと別れ、今回の事件の首謀者を懲らしめる選択をした。そした、カタイとの戦闘の最中、固体となり戦闘を放棄した。
能力〈状態変化〉全ての物体の状態を変化させることができる。主に気体、液体、固体。
・カタイ
今までに戦闘をしない選択をした者はいたが、それは、諦めなどが多かった。だが、今回の勝負はでは、きえこは無抵抗且つ勝ち誇ったまま放棄した。そのことに驚きと疑問を隠せない。
能力〈岩盤〉己の体を岩盤にすることで、攻撃や防御に生かす。重量も増す為移動速度は鈍くなる。




