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22話 炎を灯した暖炉

「お待ちしておりました。頭領。こちら、お召し物になります」

明るく絢爛とした部屋で、部下は方膝をつき、跪く。そして、渡された物を身につける。

「少し派手じゃないか?」

それを着た男は鏡を見て、部下に問いかける。

「いえ、頭領にはとてもふさわしいと、幹部の方々がおっしゃっております」

その服は赤を主張としていて、冠までついた豪華な装いだった。

「あいつら、俺で遊びやがって」

「お着替えが終わりましたら、ホールで皆様がお待ちです。案内は御必要ですか?」

部下は、まるで初めてここに来た人に聞くようなこと言った。

「…あぁ頼もう」

「御意」

一度深々と礼をし、主人をホールへと案内すると、大きな扉の前で立ち止まった。

「皆様方!頭領ノボル様のご帰還でございます!」

ゆっくりと扉が開き、その中では四人が中央のテーブルを挟んで席に座り、談笑をしていた。

そのテーブルは八人席で、四つの席が空いていた。

なので、そこには誰が座っていたのだろう。

特に一つの空席は華やかに彩られている。

「遅いじゃないか!まじで岩盤になりそうだったぜ!ってか、似合ってんじゃねぇか!」

その中の一人、ボサボサの髪型に見合わない衣服の男が話しかける。

それは、今まで風呂にも入らないような生活でもしていたようだった。

「やはり、カタイの趣向だったか」

そして、高い位置にある華やかな椅子に座り、全体を見渡す。

「新入りか?」

ノボルは恭しく座るメガネをかけた若者に目をつけた。

「はい、私は刻時矯溜(こくじきょうた)と申します。能力は〈記憶〉で、シノギ様の助手を務めております」

すると、その隣から誰かが話を割って入ってくる。

「この子はね、この国で探索をしている時に見つけたんだ。凄く使えるよ。クスッ」

どうやら、このオールバックの男がシノギと言うらしい。

当人は思い出し笑いをしている。

「なんだ?そんなに面白いのか?」

「こいつ、触れた相手の記憶を読み取ることができるんだ。今から国邸に行かないかい?」

シノギは神妙な顔つきで提案をする。

「国邸…ふむ、いいだろう。だから、俺が来るのを待ってたのか」

ノボルに意図が伝わったのか、快く了承した。

国邸とは、国の枢軸を担う場所と言っても過言ではなく、又、国家保安隊が働いている場所でもある。

「じゃあ目的は決まったな、ラクシは待機な!」

話をニヤニヤして聞いていたガタイは立ち上がる。

「どうせ、そうなると思ってたっすよ。別に四人で行ってくればいいじゃないっすか」

すると、チャラい口調のラクシがため息をつきながらそう言った。

ラクシは常に雑用を任されることが多い。

だが、これは嫌がらせではなく、仲間からの信頼からくるものだ。

特に、人の面倒を見ることに長けている。

「シノギ、ここから国邸までどのくらいかかる?」

目的の決まった彼らは操縦を担当しているシノギを急かす。

そうだ、ここはただの建物ではなく、飛行船に近いものなのだ。

「そうだね、四時間はかかるよ。なんせ、ここはニ区。国邸は九区だからね。流石の僕でもそんぐらいは必要だね」

「なら、それで頼んだ。さて、これから俺ら、終集家の再稼働だ!だがまぁ、到着までの間、俺は俺が刑務所にいた時の出来事でも、聞くとしようか」

そして、それぞれが定位置に着き、役割を果たしていく。

「そういえば、ここの奴らは皆、俺たちを遠征過激団と呼ぶのだ。なぜか分かるか?」

ノボルは刑務所での出来事を思い返している。

「名乗ってないからっすよ」

すかさずラクシがツッコミを入れる。

「いいや!あいつらのネーミングセンスが安直だからだ!」

「…頭領が、捕まらなければ、そもそも僕たちの存在も露見しなかったんじゃないの?」

シノギは正論を言った。

実際のところ、ノボルが捕まった時に存在がバレてしまったのだ。

「何回も言ってんだろ!ミチヒキが取られたんだぞ!それを取り返して何が悪い!」

ーバン

カタイは声を荒げ、シノギを殴りつける。

シノギは顰めっ面のままでカタイにはやり返さない。

殴られた事に対して怒りはないようだ。

しかも、痣もない。

「僕たちが争っても、泥試合なだけだから…」

「まぁ、待て。それはもう解決したはずだ」

そして、ノボルは飾られた地図を指差す。

これはノボルが戻ってきた際に置かれた物だ。

「わぁーたよ、俺も悪かった」

「ん?…でも、なんで一つしか無いんだい?」

シノギが疑問を呈する。

その言葉を聞き、ノボルは即答した。

「もともと三つあると潜伏させていた部下から聞いていた。恐らくその一つは〈牢屋〉だろう。で、残りはお前が知ってるらしいぞ」

首をクイッとカタイの方へ向けた。

続々と皆がカタイを見つめる。

「んだよ?俺は知らないぜ」

「布を巻いたやつだ。お前が殺したやつだと」

「チッ」

嫌な記憶を思い出したように舌を鳴らし、どうりで、と頷いていた。

「皆、着いたよ」

すると、シノギが声をあげた。

その合図で三人が席を立ち上がる。

「留守番任せた、ラクシ」

ノボルは頭領として、ラクシの肩にポンと手をやった。

「了解っすー」

そして、シノギがホールの壁に近づくと、穴が空いた。

その穴からは綺麗な青い景色が広がっている。

「俺が先に行こう」

「!!」

その場の全員がノボルの言葉に驚いた。

まるで今まではそうしていなかったとでも言いたげに…

「はぁ?ノボル耐えられるのか?」

「俺もただ幽閉されていたわけではない」

ーヒュン

すると、ノボルは穴に一歩を踏み入れ、真っ逆さまに下へ落ちていった。

知っての通りここは飛行船であり、飛び降りは自殺行為である。

「やるじゃねぇか!」

だが、彼らは違う。

常に死と隣り合わせの組織。

これも楽しみの一環でしかない。

そうして、カタイは穴に向かって飛んでいく。

それに続き、シノギと矯溜は同時に落ちていった。

人物紹介

・ノボル

数年前に牢屋に幽閉されてから脱獄を果たし、終集家の頭領の座へ戻った。能力〈炎〉

・カタイ

ノボルとの付き合いが長く、キレやすい性格。終集家の幹部を務めている。能力〈?〉

・シノギ

拠点の管理を主に任せれている。終集家の幹部を務めている。能力〈?〉

・ラクシ

誰に対しても軽口で接して、雑用を任せれることが多い。終集家の幹部を務めている。能力〈?〉

・刻時矯溜

シノギにスカウトされ、シノギの助手兼幹部となる。

能力〈記憶〉触れた相手の記憶を読み取ることができる。

世界具〈地図〉

世界具〈牢屋〉

世界具〈殺〉


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