21話 行きつけの公園
「はは、ちょっと早く来すぎちゃったね」
「そうだな。でもいいよ、俺は夏帆といられるだけで幸せだから。まぁベンチにでも座ってようぜ」
遊園地から真っ直ぐ来た、かずまと夏帆の二人はとある公園に寄り道をしていた。
なぜ、ここに寄ったのか、それはこの公園によく来る知り合いに会いに来たからだ。
けれど、いつ来るかは分からないため、かずまは目の前の自動販売機にいき、飲み物を二本買った。
そして、その一つのココアを夏帆に差し出す。
「はい」
「ありがとう」
「あぁ」
かずまも夏帆の隣に腰掛け、緑茶を口にする。
「こういう時間もいいな」
「うん。落ち着く」
誰もいない公園で二人はちょっとした安らぎをした得ることが出来た。
そうして、たわいもない会話をしていると、三十分なんてあっという間だった。
「あ!来たんじゃない?」
公園の入り口には、同年代に見える女子と小学校低学年くらいの子供が並んでいる。
女子は薄紫色のロングでサラサラの髪を靡かせながら歩いている。
一方で子供は、かずまを見つけた途端に満面笑みを浮かべ、薄紅色の髪を無邪気に揺らしながら走ってくる。
「かずまにぃに!」
ードサッ
子供は座るかずまの上に跨るように座り、かずまの胸に顔を埋めた。
その行動に対して、かずまは頭を撫でて受け入れる。
「久しぶりだな。甘丸、元気にしてたか?」
「うん!元気だよ!」
幼い声で元気よくそう答える。
この甘丸という子供はかずまが家族以外に優しく接する珍しい存在である。
「あ!ここあ!」
すると、甘丸は夏帆の手にある飲み物に興味を示した。
「ん、飲みたいの?」
そう言われて夏帆はココアを差し出そうとする。
余程飲みたいのか、目をガラス玉みたいに輝かせ、手を伸ばした。
「はい、どうぞ」
夏帆からもらったココアをとても美味しそうに飲む。
「こら!甘丸、夏帆さんにありがとうは?」
横から薄紫色の髪の女子が甘丸を叱った。
すると、はっと思い出したように、かずまから夏帆の膝上に乗り換えて
「夏帆ねぇね!ありがとう!」
と感謝を伝えた。
夏帆はあまりの可愛さに抱きしめていた。
そして、夏帆はまだ立っている女子へと顔を向ける。
「きえちゃん、久しぶり」
「夏帆さん、お久しぶりです。かずまさんも」
「あ、あぁ。えーと、散玉…さん」
「?」
一瞬、名前で呼ばれたと思った甘丸はかずまを見て首を傾げた。
だが、甘丸ではなく、きえちゃんと呼ばれている人物に挨拶をしたのだ。
「あはは…」
その彼女は苦笑い。
「別にきえこでも、いいんですよ?」
彼女を困らせるので、夏帆がかずまを睨みつける。
「きえさん…」
仕方なく、敬語で呼んでおく。
実は、きえこは最初に会った時に、きえこと呼ばれるより、きえと呼んでほしいと言っていたのだ。
だが、かずまは毎回そう呼ぶことを躊躇っていた。
それは、夏帆や家族以外を名前呼びするのに抵抗があるのと、すこし照れてしまうからだ。
なので、夏帆が別に気にしなくてもいいと言っても、一向に直すことはなかった。
「そういえば、きえちゃんは仕事最近どう?」
夏帆が気を利かせて話題を振ってくれた。
「そうですね、仕事というよりはボランティアに近いんですけど、順調ですよ」
きえこは自主的に問題を解決する仕事をしている。
それは、事件から個人的なことまで、何でも取り組むような仕事だ。
「そうなんだ!」
「はい、これは甘丸のおかげでもあるんですよ!ほら甘丸?」
すると、きえこはビー玉を取り出し甘丸に見せる。
甘丸はそれをじっと見つめ、きえこは微笑んで頭を撫でた。
そして、そのビー玉を甘丸が食べたのだ。
かずまと夏帆は知っていた、甘丸には〈飴〉という能力を所持しており、球体を見れば飴に変えられることを。
「甘丸のその能力となんの関係があるんだ?」
かずまは問いかける。
「これを私の能力で応用して、毒とかを取り除くのに便利なんです。前あったのは、工場で発生した有害物質を取り除く仕事で、それはもう十分もかかりませんでしたよ」
きえこは得意げにそう語った。
「やっぱりの俺の見込んだ通りだ。ぜひとも、俺の会社に来てほしいよ」
これは毎回会う度にかずまは言っている。
きえこはかずまに認められるほどの才能がある。
「かずまさんは買い被りし過ぎですよ」
だが、いつも照れながらも断られてしまう。
そして、かずまは毎度こう思っている。
本当にきえこは謙遜し過ぎだ、と。
実際のところ、かずまはきえこが自分と同じくらいの実力を持っているとも思っていた。
「あっ私、お二人に紹介したい物がありまして…」
きえこは話を変えるため、バックから一冊の本を取り出した。
「世界粒子論?」
「そうです!この研究のお話、凄く興味深くて、私もうケウ先生の大ファンなんです。お二人もよかったら読んでみてください!」
ケウという名前には聞き覚えがあった。
確か、博士ランキング一位だとか…
熱意のこもった宣伝をきえこがしている時、甘丸が
「ねぇ、かずまにぃに、これ?」
と、かずまのカバンに付けてある巾着袋を指を指した。
「なんだ?これか?多分俺の大切なものだ。欲しいのか?」
「うんとね、えとねぇ」
言いづらそうに、夏帆の上でもじもじする。
「もー甘丸、ねぇねが買ってあげるって言ったでしょ?」
「もしかして、同じやつ無くしちゃったの?」
「はい、そうなんです。二週間前ぐらいから見当たらなくて、かずまさんの物とよく似ているんです。でも気にしなくていいんですよ」
それを思い出して甘丸は悲しくて俯いてしまう。
そんな甘丸を夏帆はギュッと抱き寄せ
「かずまあげたら?使ってないでしょ」
と甘丸の味方をした。
「そうなだな…甘丸ならいっか」
そして、何の躊躇いもなく、カバンから外して甘丸に渡した。
だが、甘丸はきえこの顔色をうかがって受け取ろうとしない。
「本当にいいんですか?」
「あぁ、きっとこの巾着もちゃんと使われたいだろ。大事にしてくれるか?」
「うん!!」
甘丸なら大事にしてくれると信じ、託した。
「あっそろそろ行かないと!」
夏帆が公園の時計を見ると一五時になっていた。
今出発しなければ、帰りが遅くなってしまう。
「もういっちゃうの?」
「そうですよね、確かお住まいなのは六区で、時間かかりますよね」
「じゃあ、俺たちはもう行くから。またな」「またね」
「さようなら」「バイバイ!」
散玉たちは二人が見えなくなるまで手を振り続けていた。
「かずま、また来ようね?」
「あぁ絶対にいこう!」
このあと、会社に報告を済ませてから家に無事帰宅した。
人物紹介
・風解かずま
夏帆や家族と同じくらいに甘丸を可愛がっている。能力〈風〉
・十六夜夏帆
たまに、かずまに強く言って言う事を聞かせる時がある。能力〈夜〉
・散玉甘丸
誰に対しても無邪気な笑顔を見せる世渡り上手な7歳児。
10年前に行方不明おじいちゃんも飴の能力者だったそう。
能力〈飴〉自分が飴にしようと思ったり、飴に見えた球を飴にする。
・散玉きえこ
昔に、きえこと言う名前をおばあちゃんだとからかわれ、今でも気にしている。子供以外、誰にでも敬語を使うのはおばあちゃんの真似だそう。能力〈?〉




