↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/59

19話 欠けたクラスのお楽しみ会

「おいー?おーいー?」

声をかけても返ってくるのは、生徒たちの困惑の眼差しだけ。

「…先生もな、困ってるし、分からないんだー」

この言葉を最後にみんなが俯き、とうとう目すら合わせてくれなくなった。

実は静寂の中、教壇に立って頭を抱えているのはクラス担任のゲン先生だ。

どうして先生がこんなに張り切っているかというと、天涯迅斗(てんがいじんと)が授業を遊びに変えてほしいと懇願してきたため、わざわざ先生が時間を作ったからだ。

だが、当の本人は欠席している。

「…あ、そうだー。風解(ふうかい)か二条離(にじょうり)は仲良かったよなー?天涯がなんで学校来ないか知ってるかー?もう三日も来ないんだー」

問いかけられ二人は目を合わせるが、答えは出ず

「すみません、僕たちも分かりません」

と、二条離が代弁くれた。

「そうかー。せっかく今日の五.六時間目を自由にして、お楽しみ会をしたいって、天涯が言ったのなー」

「そうですが、天涯くんも自分せいでやらないと知ったら、悲しむかも知れませんよ?なので、一応やったほうがいいんじゃないですか?」

遊ぶと言っていたものを授業に戻されてはたまらないため、二条離はゲン先生を肯定する。

「そうだなー。じゃあ、みんなー!校庭にレッツゴーー!」

すると、二条離が味方になってくれたと勘違いしたゲン先生はテンションをあげいったのだった。


「なんで、あんたがいるの?」

校庭の隅で退屈そうに立っていると女子生徒が話しかけてきた。

「こっちは無理やり連れてこられたんだ」

夏帆(かほ)、二条離と共に教室に残っていたところを、ゲン先生に見つかり、無理やり連れてこられたのだ。

その時に教室で二条離がかずまに何かを聞こうとしていたが、先生の乱入により中断された。

そして、二条離に対しては

「二条離が一応やったほうがいいって言ったんだぞー?」

とゲン先生は落胆しながら、俺たちを校庭に連行したのだ。

かずまがここにいる経緯をざっくりと話しても、女子は興味無さそうに聞いている。

「ふーん。…ねぇ、あんたのクラスの岡田廉(おかだれん)って、あんたと仲良いの?」

すると、かずまと同じく校庭の隅に腰をかけているガタイのよい男子を見据えながら女子は問いかけてきた。

岡田廉とは裏門に現れた怪人を殴り飛ばし、生徒を守ろうとした陰で活躍をしていた男子生徒だ。

「日比谷、あいつのどこが好きなんだ?」

彼女がいるかずまには分かった。

恋をしていると。

「ッ!!」

ージュ

「あっち!!」

これは、どうやら俺が触れてはいけない問題のようだ。

「わかったよ。あいつは根暗だ。やめておけ。ぅあっちぃ!!」

「もういい」

機嫌を悪くした彼女は日比谷(ひびや)日奈(ひな)。

俺の会社の同僚だ。

もう怒って居なくなった日奈は、かずまとはいつもこのなやり取りを繰り返している。

「さてと。火傷をした時は夏帆に癒してもらって………ぁあぁ!」

なんと、夏帆はクラスの女子友と話をしていた。

俺の都合で邪魔をするのは、しょうがない、やめておこう…

ーうおぉぉぉお

「うるさいな」

その時、校庭でリレーをしている奴らが歓声を上げていた。

特に興味も無いが、二条離も集まっているみたいなので、近くに行って見てみることにした。

「これの何が面白いんだ?」

集団に紛れている二条離の横に並ぶ。

「さぁ?僕もいるだけで全く共感はしていないですよ。ただ、周りは伸縮(しんじゅく)くんが走っているのが見ていて面白いようです」

視線を中央に向けると競争をしている男達がいた。

かずまはその中の伸縮に注目して見てみる。

今、ちらりと見えたが、あいつは能力を使用し、何人もごぼう抜きにしている。

確かあいつの能力は…

「〈バネ〉ですよね?きっと、足を変形させて無双しているのでしょう。このぐらい私でも分かります。ですが、あれは痛くないのですか?」

能力は二条離も当然知っている。

他の生徒も知らない人はいないだろう。

何せ、大体の生徒は自身の能力を隠してはいないからだ。

その中で例外なのはかずまと夏帆ぐらいだろう。

「俺は身体を風にしたりはしないから知らないし、能力はあんな風に使わない方がいい。多分あいつは、能力〈バネ〉との相性が良さそうだ」

身体を能力で変形させるのは誰でも簡単に出来ることではない。

かずまは出来なくはないが、ただやらないだけ。

「あれ、ということは風解くんと同じですね」

二条離にはかずまと〈風〉の相性が良いことは教えていた。

「俺は特別だから違う。あれと一緒にすんな」

もしかすると、教室で話が中断されたことに不貞腐れているのかもしれない。

「ところで今ちょっと話…」

「おい!風解、俺様と勝負をしろ!」

突然、第二レーンから名前を呼ばれだ。

なんと、伸縮がかずまに勝負を仕掛けようとしているようで、かずまに注目が集まる。

これにかずまは、二条離との会話を妨げられたことに苛立ちながら

「なんで、俺がお前と遊ばなきゃいけない?」

と冷たく返した。

「俺様はな、ずーっと思ってたんだ、十六夜を俺のモンにしたいってな。だから、この勝負を風解かずまともあろうものが断るはずないだろ」

この時、かずまの何かが爆発する。

「すまない、二条離話はまたあとにしてくれ」

「…」

「おい、勝負の内容は?」

「もちろん四百メートル走だ。勝ったら十六夜は俺の彼女として、迎えてやろう!」

「早くしろ」

そうして、かずまと伸縮の勝負が決定される。

二人がスタート地点に立った頃には、校庭全体の視線を集めていた。

「面白いものが始まるぞー!みんな見ろよ!十六夜を賭けた伸縮と風解の対決だ!」

野次馬がそこら中に叫び回っている。

その頃、夏帆は、

「いいの?行かなくて?」

女子友から心配をされていた。

「うん。かずまが勝っちゃうから。…怪我させなきゃいいけど…」

夏帆は胸中不安でいっぱいだった。

今までにも同じようなことは何度もあり、かずまは悉く相手をボコしていったのだ。

「あはは!風解、お前は分かっていないようだ。今日の俺様が調子が良いことを!」

伸縮はレーンでしゃがんで足を摩っている。

「…お前、あんな使い方をするのは初めてだろ」

身体を変形させていたことをかずまは指摘する。

「なんだよ!負けるのが怖くて能力禁止ってか?笑わせやがる!」

「んなわけあるか」

「よぉしー、2人とも位置に着いたなー!ありがとうなー!お楽しみ会を盛り上げてくれてー!」

どうやら、スターターの役割はゲン先生がやるようだ。

「じゃあ、始めるぞー?」

「あぁ」「俺様は勝つ!!」

すると、伸縮の足がみるみるうちにバネに変わっていく。

恐らく、胴体あたりまでにも…

「位置に着いてー、よーいー、ドンー!!」

ーバンッ

出だしは順調だ。

だが、速いな。

かずまは、それなりに足は速い方であったが、しかし、伸縮は圧倒的なスピードで距離を離していく。

なので、息をそっと吐き、風を身につけ、後を追う。

「くふふ、負ける気がしない!…ぶわっ!風解!何しやがる!それは卑怯だろ!」

突如、伸縮は爆烈的な向かい風に襲われる。

ーシュンッ、シュンシュン

しかも、校庭にあるものまで飛んでくる。

ーシュンシュン

もちろん、かずまの仕業だ。

「あぶっあぶねぇ」

石やナイフなども風に乗って飛んでくる。

伸縮が避けることに集中したその隙に、かずまは伸縮を追い越し、残り百メートルとなる。

「かぁあ、絶対負けないぃ!!」

ーグウィン

「は?」

なんと、妨害をしているにも関わらず、かずまの横を並走する伸縮がいた。

手や首元までバネになっているが、観衆には見えていないだろう。

そして、風解へと話しかける。

「知ってるか?バネは伸ばせば、向かい風なんて、関係ないんだよ!!」

そんな、伸縮がかずまの一歩先を行く状態で、残り二十五メートルとなってしまう。

そこで、かずまは最終手段を使うことにした。

「おいおい!洒落にならないだろ!」

なんと、伸縮の後ろに、巻き込む吸引する風を発生させたのだ。

それにより、風の引力により足が取られ、伸縮は転けてしう。

それを、わき目で見ながら、かずまはゴールテープを切ったのだ。

「お前は二度と夏帆に近寄るな」

下に転がる伸縮を見下ろしながら、かずまは圧をかける。

「くっ…」

その頃、能力同士の争いが距離的に見えてなかった観衆は、伸縮が転けて負けたものだと思っている。

「お疲れ様です。僕は風解くんが勝つと予想していましたよ。賭けておけば良かったと、思う程に…」

走り終えた後、二条離の隣に戻るとそんなことを言われた。

「あぁ、ありがとう。それで、はな…」

「はーいー。これにて、お楽しみ会はお終いだー!盛り上げてくれた風解と伸縮もありがとうなー。もうみんなは解散していいぞー!あー風解はちょっと来てもらうぞ」

また、遮られてしまった…

ゲン先生が俺に用事って、一体何なんだろう。

「…行ってきてください」

二条離は間を開けて、寂しそうな声でかずまに先生の元へ行くように促した。

だが、その必要も無く、ゲン先生の方から近寄ってくる。

「何ですか?」

「今から教室で話があるんだよ」

話し方から理解した、どうやら真面目な話らしい。

「分かりました。夏帆、付いてきてくれ」

少し離れた所にいる夏帆を呼び戻す。

「ちなみに、二条離。風解は遅くなるから先に帰っててくれー」

二条離は一瞬驚いた。

その後、諦めたような顔で頷いた。

「…はい。…では、また来週」

納得がいっていない返事だったが、二条離はゆっくりと帰宅していくのだった。


「あーちょっといいかー?すぐ終わるから十六夜は外で待っててくれー」

目的の教室に着くとゲン先生は夏帆抜きで進めようとする。

けれど、それは心配だ。

もし、俺がいない間に何か危険なことがあったら、対処が遅れるかもしれない。

そんなことを考えている時、かずまは濃い紫髪の知り合いを発見して、その名を呼ぶ。

「双林(またぎ)こっちに来い」

その声に反応し、こちらを睨みつける。

「俺は今から委員会に行くんだ。邪魔するな」

ふと、目線を夏帆に向ける。

「…そういうことか、少しだけだからな」

その言葉を聞き、安心したかずまは先生と教室に入っていった。

ーガラガラ

「…あの、私のこと知ってる人?」

外で二人きりになってしまった夏帆は話題をふる。

「あぁ、あなたの事情は会社内では共有されているから」

なんと、双林という男子生徒はかずまの同僚らしい。

「そう、なんだ」

「…」

「…」

仕事とはいえ、初対面だからか全く話が続かない。

―ガタンッ

「なんだ?風解は喧嘩でもしているのか?」

「いやー、流石に、うん。無いと思う?」

絶対とは言い切れない夏帆。

「少し、様子を見てくる」

そして、双林がドアに手をかけた途端、扉が開く。

ーガラガラ

「待ったかなー?」

一番最初に出てきたゲン先生は何も変わらない様子だった。

「変な音がしたが?」

そこを詳しく問い詰める。

「それはこの教科書が落ちた音だよー」

見るとかずまの手元には山のような教科書があった。

「…なら、いい。俺はもう行く」

納得とまではいかないが、それといった興味もないため、颯爽といなくなってしまう。

「じゃあ、それをよろしくなー」

さらに、ゲン先生はそう言いながら帰っていった。

そして、指定された場所に教科書を置き、夏帆との帰途につく。

その道中、二条離と話せなかったことに後ろめたい気持ちを抱くかずまであった。

人物紹介

・風解かずま

夏帆を賭けた勝負なら、どんな事をしても勝つ!

能力〈風〉風を扱い、物を飛ばす。

・日比谷日奈

かずまと同じ会社に働く同僚。やはり、岡田廉が気になる。能力は熱に関する。能力〈?〉

・伸縮

ずっと夏帆を彼女にしたいと思っていたが、その気持ちを悉く砕かれた。体をバネに変えて使用したのは初めて。

能力〈バネ〉バネを出したり、バネを作るのが得意になる。自身をバネに変形させ、移動や攻撃に使用出来る。

・双林

かずまと同じ会社に働く同僚。かずまが容易く夏帆を任せられるぐらい強いのか?能力〈?〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。