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17話 待ちぼうけ②

「はぁー遅いなぁ。まさか、途中で死んだんじゃ無いのか?」

ここは国家警察署の真ん前、座り込んだホームレスの見た目の男がそう吐き捨てる。

明らかに見窄らしく、白髪に伸びすぎた髪には不潔感が溢れ出ている。

ーダッダッダッ

すると、階段を駆け上がる音が聞こえる。

「ふっ、一週間も待たせやがって!」

ホームレスは友との再会を喜ぶかのように、声高らかに話しかける。

「む?誰だ!貴様は!」

「なんだよ、ノボルじゃないのかよ!まぁ流石に体全体に布巻いた奴な訳ないかぁ」

なんと、全く知らない人だった。

しかも、その人は警官でありながらも、身体中に包帯が巻かれている。

「今、ノボルと言ったな。…ということは貴様は仲間なんだな」

「どうだろうな?」

警官の問いに対して笑って返す男。

ノボルと言う名の人物は、機密情報であり、上官と署長しか知らないはずだ。

ならば、目の前にいる男は、裏で暗躍し、民を恐怖に陥れる組織、遠征過激団の…

ーゴンッ

「ぶはぁ」

結論が出た瞬間、警官は何か岩のような硬い何かに殴り飛ばされた。

「敵を前にして油断してんじゃねぇよ」

やはり、殴ったのは他でもなく目の前のホームレスだ。

ただ、相手がホームレスではなく、悪党であるというならば、こちらもそれなりの対応をしなくてはならない。

「俺は警察署唯一の処刑人!角口誠一郎(かどぐちせいいちろう)!署長に頼まれ、ここへ参上した!」

「俺はお前に興味ない。だが、暇つぶしにはなってくれよぉ!!」

自己紹介をし終えると、不敵な笑みを浮かべた男は角口に近づき殴りかかる。

ードスッ

お、重い!

それを咄嗟に拳を受けた刀は折れそうだが、変形はしない。

「ちぇりぁぁあ!」

刀で重い拳をいなし、腹部に斬撃を打ち込む。

ん?おかしい。今の感触は…斬れていない!

「驚いた顔をしているなぁ。いいことを教えてやろう。俺が今まで生きてきて、俺を傷をつけた奴はいない!」

信じたくは無かったが、あの強度には信じてしまいそうになるぐらい硬かった。

「ふぅぅ」

角口は呼吸を整えて、冷静さを取り戻す。

そんなことがあるわけない。ならばと刀に魂を灯らせて、もう一度試してみるまでだ。

「たぁぁぁりぁぁあ」

ーギギギギギギ

男は頭から振りかぶってくる刀を片腕で受け止める。その時、僅かに火花が散り、少し削ったように思えた。

「それが、本気ならお前は動くサンドバッグだな」

効いていない!こんな相手初めてだ。

もしかすると、この先の未来でもこれ以上の相手に会うことが出来るのだろうか?

「でも、褒めてやろう!最初の攻撃よりずっと強くなっていたぞ。だがな、お前は俺の前でボロクズとなるだろう。その前に、能力を教えてはくれないか?」

「ふふふっははは、いいだろう!冥土の土産に教えてやる。そして、今の発言を!俺の攻撃と共に黒歴史として刻んでやる」

「…面白い」

男は笑っている。

「俺は、俺が殺めた魂を使用し、刀を強化する。だが今回は特別に全ての魂を宿らせてやる!」

もうここで全部使ってもいい。

こんな強敵を前に後悔を残してはいけない。

そして、大量の魂が刀に宿り、黒く赤く染まっていく。

「次もまた斬らせてくれるのか?」

冗談混じりに角口は聞いてみる。

「あぁもちろんだ。なんせ、蟻に噛まれるくらいどおってこともない。満足させたら押し潰すだけだ」

「いくぞ!」

そういうと、男は手を広げ、好きな所を斬るといいと笑っているようだ。

「では、遠慮なく!」

ーギィギィ、ギ、ギ、ギギ、ギ、ギィィ

刀はいろんな角度から斬撃を浴びせる。

だが、それに異変を感じた男は飛び後ろに飛び距離を取る。

「お前何を企んでいる?まるで文字でも彫っているようだぞ」

「ご名答!」

「…」

ボロボロだった服がもっと破れて、男の胴体が露見する。

そこには、しっかりと読み取ることは難しいが、何らかの文字が彫られていた。

それを見ると、男は顔を顰め拳を堅める。

そして

「かはっ」

頭の中で火花が散り、角口の意識が朦朧とする。

ここで諦めてはいけない!

そう脳内で繰り返される。

だが、男は手を緩めることもなく、ひたすら殴り続ける。

や、やばいまだ、技を完成させてない。

「くはぁ!」

い、いまだ!

ーギィキィ

「また、お前ぇ!」

ーバババババッ

男の猛攻が再び始まる。

だが、すでに地面には角口の大量の血が広がっている。

ふらふらになるも、なんとか刀を地面に刺し、倒れないようにする。

あと、ひと刻みで、刻みさえすれば…

「うがっ、ぐぅは、ぁぁぁ」

損傷が酷く、呼吸もまともに出来はしない。

「はぁもう飽きてきたなぁ。ノボルは来ないのか?」

ふと、男は欠伸をしながら炎で開いた穴の方を見る。

いっ、いまだぁー!

ーキィィ

そして、男の前で倒れ込み、角口は声高々に

「殺人字剣!!」

と叫んだ。

声はカスカスだったが能力はしっかりと発動したみたいだ。

男の体に変化が現れる!

角口が命を懸けて刻んだ文字が!

「殺?」

身体に光って浮き出る!

「お前ぇー!」

この不思議な能力に男は怒り心頭し、殴りかかろうとする。

「い、いいの、か?能力を、聞かなくて?」

眼前まで迫った拳がピタリと止まる。

「…」

「これは、な、刻まれた、相、手が、一年以内に、屈辱的に殺される呪いだ!」

角口は男を下から見下しながらそう言い放った。

「ッ!!」

「噛まれた蟻は毒持ちだったようだな!!」

ーグチャ

「…ぅ」

ーグチャ

「…」

ーグシャ

「…」

「ふん!手を煩わせやがって」

男の足元には肉塊が転がっている。

そうして、角口誠一郎は原型を損なって生き絶えた。

ただ、最期の瞬間まで刀を離すことはなかった。

そして、光る粒子のようなものが死体から天に昇っていった。

「…待たせたか?」

ちょうど角口を殺害した後に声が聞こえた。

「なんだよ、見てたのか。さっさと拠点に戻ろうぜ。ここにいると胸糞悪い気分になる」

「あぁそうだな」

ホームレスの男が待ちに待っていた存在、ノボルはゆっくりと歩き、男の隣に並んだ。

「で?あれはもちろんあるんだろ?見せてくれ!」

さっきまでの怒りは収まり、男は心弾むような気持ちでノボルに問いかける。

すると、ノボルは懐から地図を出して男に見せた。

「あぁ、懐かしいな。…あと二つはどうした?」

「探したが見当たらなかった」

「そうか、でもまぁ、それにしても、遅かったな」

男はノボルの肩をバシバシ叩いている。

「いろんな邪魔が入ってな。警察どもが寄ってたかって、俺の行手を阻むわけだ。ん?」

角口を殺害した男と合流を果たした囚人、ノボルは体に違和感を覚え、その部分に剣をあて何かを切った。

「どうした?」

「いいや、なんでもない。早く拠点に案内してくれ」

「おう」

そうして、二人は崩壊した国家警察署をあとにし、邂逅を果たしたのであった。

人物紹介

・ホームレスの男

ノボルが脱獄するのを一週間、警察署前でホームレスをしていた。誠一郎につけられた呪いはハッタリだと思っている。能力〈?〉

・ノボル

ホームレスと仲間の囚人。刑務所内に居たのはなんらかの目的を果たすためのようだった。能力〈炎〉

・角口誠一郎

警察署の上官。主に処刑人の立場。実は彼は、能力を持っておらず、世界具を使用している。

世界具〈殺〉生命を殺し、入手した生命力を使用して闘う。大きな代償を払えば相手の命を確実に奪うことができる。


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