16話 待ちぼうけ①
「おいおいおいおい!こんなん犯罪じゃねぇか………はぁ…はぁ…はぁ…」
自分が壊したと思われる警察署を目の前にし、迅斗の息が荒くなる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう。
「お、俺は、悪くない……やらされた、だけなんだ…」
風解に騙された。
俺は警察が来たら逮捕されてしまう。
…逃げないと…
そして、迅斗は来た道を全速力で引き返す。
「はぁ……はぁ…」
走りながらも、後ろが気になってしまう。
誰かが俺を追いかけて来てはいないのか、と。
「待ちなよ」
「はっ!」
ちょうど後ろを振り返ると声は前からした。
しかも、その人は警官だ。
「警察署を壊したのは…」
混乱していて、状況を飲み込めていないが、とにかく否定する。
「ち、違うんです!知らなかったんです!やら、されただけなん、です」
「でも、逃げた反応は一人だけだった。どういうことだい?」
その警官は坦々と質問を続ける。
「いや、ほんとに、知らなくて…多分、刑務所に…」
行った。
そう言いたかったが、次の質問がくる。
「じゃあ、その共犯者のことを教えてくれ」
「っ…み、緑髪…」
「そうかい、ありがとう。でもね、君にも一応署長としての制裁をしなくては」
なんと、目の前にいたのは、国家警察署の署長である
極楼だった。
「ひ、ひぃ」
極楼の手のひらが迅斗へと向けられ、手のひらには煌めく何かがあった。
「これは、宇宙という枷だ。人を包み込んだら無気力になってしまう」
ひたすら怯え、迅斗には全く聞こえていない。
ー!
「ん?すまない、部下からの緊急級救助要請がきてしまった。次会った時には、解除してあげるから」
そう言い残し、手にある宇宙が迅斗へ迫る。
ーシュ
だが刹那、赤髪の女性が前に現れ迅斗を守った。
「まったく…迅斗坊ちゃんは…手間のかかる子です!」
「あ、鮮乃?なんで、こんなところまで…」
「あなたが遅くなると言って、帰ってきたことが無いからですよ」
ギリギリで迅斗を助けたのは、天涯家でメイドを務める鮮乃だった。
かずまが迅斗を連れていった時から尾行をしていたらしい。
しかも、その尾行はかずまに気づかれてはいない。
「君は共犯者なのかな?ん?私の宇宙を何処へやった!?」
極楼の手にあった宇宙は鮮乃が身代わりになり、鮮乃の体が宇宙に侵食されるはずだった。
「あら、私ですか?そうですね…迅斗坊ちゃんの人生の共犯者、とでも言ったほうが分かりやすでしょう。あなたの宇宙に関しましては…」
すると、鮮乃は視線を自身の手に移し、一つの蕾が花を咲かせたのを確認する。
それは、星空色をした綺麗な花だ。
「まさか、養分にしたのか…」
そして、納得をしながら極楼は周囲に民間人がいないか確認して
「小規模ビッグバン!!」
手のひらから光を放つ。
周辺が光に包まれ、付近の物はみな吹き飛ばされた。
「これが一番手っ取り早い」
流石に死んではいないと、二人の方へ目を向ける。
そこには、光が直撃し、ボロボロの迅斗を右腕を負傷した鮮乃が抱えていた。
そして、鮮乃に白い花が咲き誇る。
ーグシャーン
何の前触れもなく、何本もの肥沃した蔦が極楼に襲いかかった。
それは様々な植物の蔦であり、ただの人であれば難なく倒せるだろう。
だが、極楼は能力を駆使して、なんとか全てかわしきった。
「驚いたよ。…だが、私はもう部下の元へ向かう。代理の上官をここへ呼んでおいた。では、失礼する」
悪人より部下が優先の極楼は部下を助けることを選択し、早々に立ち去ろるとする。
そして、人一人入る大きさの宇宙空間が開く。
「…逃す、ものか!よくも、坊ちゃんをぉ!」
気を失った迅斗を大事に抱えて、左手を極牢に向ける。
そして、鮮乃の左手から白く眩い光が極楼の胸にあたる算段だった。
「ぁぁ、外し、た…」
コンマの差で極楼は宇宙に身を隠し、光は掠りもしなかった。
力を使い果たした鮮乃は、無事な左手で迅斗を撫で、意識を失った。
人物紹介
・天涯迅斗
かずまに巻き込まれてしまった被害者。電気を扱うことができる。
・極楼
国家警察署の署長を務めている。
能力〈宇宙〉宇宙規模の力を扱い、当たれば生命力を蝕む呪いのような攻撃も可能。
・鮮乃
天涯迅斗の家でメイドを務めている。そして、今はもう迅斗の親のような立場にいる。かずまと迅斗を尾行した際に、かずまにきづかれないなど、かなりの強者。極楼に向けて生命力を代償にした攻撃をするも失敗し、意識が戻らない。
能力〈花〉蕾を作り、エネルギーや攻撃を吸収し、花を咲かせる。また、蔦なども扱える。




