最終話 業務課にて
最終話のなります、今までありがとうございました。
業務課へ異動となり、新しい仕事が始まった。
前職で倉庫業務の経験があった神谷にとって、入荷や出荷の仕事自体は難しくなかった。むしろ製造現場に比べれば、精神的な負担は少ないようにも思えた。
――しかし、そう簡単には終わらなかった。
異動して間もなく、酒井の嫌がらせが始まる。
入荷した原料には管理用のラベルを貼らなければならない。
ところが酒井は、ラベルを貼る前の原料を勝手に持ち出してしまった。
神谷は荷下ろし作業中だったため気付かなかった。
作業が終わり、ラベルを貼ろうと原料を探す。
ない。
一つだけではない。
いくつも見当たらない。
神谷は考えた。
明日使う原料。
担当者。
そして酒井。
嫌な予感しかしなかった。
製造現場へ向かうと、案の定そこに原料が置かれていた。
神谷は無言でラベルを貼り、伝票処理を済ませて戻ろうとする。
その時だった。
「オイ!」
酒井の声が飛ぶ。
聞こえなかった神谷はそのまま歩く。
「オイ! オイ! オイ!」
さらに怒鳴り声が響いた。
「なんだその態度!」
神谷は振り返る。
正直、関わりたくもなかった。
「何ですか?」
「なんだよその態度!」
「ラベル貼ってないで持っていくから、貼りに来たんですが」
「知らねーよ!」
神谷はため息をついた。
「ラベルが無いとQRも読めないでしょう」
「こっちは貼ってあるんだから、こっちも持ってっていいだろ!」
「原料が違いますよね」
「同じトラックで来たんだろ?」
「そうですけど」
「じゃあいいじゃん!」
「だから物が違うんですよ」
「知らねーよ!」
「そうなんですか」
もう話にならなかった。
後から言い掛かりを付けられるのも面倒だったため、神谷は笹木へ報告に向かった。
事情を説明すると、笹木は一言だけ聞いた。
「それで仕事は出来なくなったんですか?」
「いえ、ラベル貼ったので問題ありません」
その瞬間、笹木の表情が変わった。
まるで、
――それで?
と言いたげな顔だった。
神谷は慌てて付け加える。
「後から変な話になるのが嫌だったので、先に報告しただけです」
しかし笹木の反応は薄かった。
仲の良い先輩に相談すると、
「笹木にはあまり関わらない方が精神的にいい」
そう助言された。
神谷も同感だった。
数日後。
仕事が早く終わり時間が空いた。
パートの作業を少し手伝う。
正直、人手は足りていた。
それでも暇だったので、雑談を交えながら作業をしていた。
手は止まっていない。
すると笹木に呼び出された。
「話しながら仕事はしないで欲しい」
開口一番だった。
「手伝うのはいいけど、話しながら作業するのはどう思う?」
神谷は思わず聞き返す。
「それなら仕事もしないでずっと話してる人はどうなんですか?」
「話をすり替えるな! 今は神谷の話だ!」
また始まった。
神谷は心の中でため息をつく。
「仕事はしてましたけど」
「仕事は黙々とやって欲しい。効率も上がる」
効率。
その言葉に神谷は少し苛立った。
仕事をせず雑談ばかりしている人達は何も言われない。
なのに、自分は作業しながら話していただけで注意される。
納得は出来なかった。
それでも。
「判りました」
そう答えた。
笹木は続ける。
「手伝いしてるってことは時間空いてるの?」
神谷は即答した。
「いえ、今日はたまたまです」
「そうか。手伝いはありがたい」
神谷は頷いた。
「あ、判りました」
部屋を出る。
そして心の中で静かに決めた。
――もう手伝いはしない。
善意も余計な仕事も、もう必要ない。
やればやるほど損をする。
それを嫌というほど学んだ。
酒井の嫌がらせは今も続いている。
笹木への期待も無い。
来年になれば、また本社異動の話が出るかもしれない。
その時は辞める。
そう決めている。
だから今は。
言われたことだけやる。
余計なことはしない。
給料を貰う。
それだけでいい。
神谷はそう思いながら、今日も会社の門をくぐるのだった。
――END――
読んでいただきありがとうございました。
細かい事を書けばもっといっぱいあるのですが、流れが悪くなり、愚痴メインになってしまうので、簡潔に致しました。もちろん最後の案件組合に相談しましたが、答えは書かなくても判りますよね?
続きを書くことがない事を祈って完結とさせていただきます。本当にありがとうございました。
最後にこれは、本当に現実に起きた事をお忘れなきように。




