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出口のない手順書  作者: アル治


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19/19

最終話  業務課にて

最終話のなります、今までありがとうございました。

業務課へ異動となり、新しい仕事が始まった。

前職で倉庫業務の経験があった神谷にとって、入荷や出荷の仕事自体は難しくなかった。むしろ製造現場に比べれば、精神的な負担は少ないようにも思えた。

――しかし、そう簡単には終わらなかった。

異動して間もなく、酒井の嫌がらせが始まる。

入荷した原料には管理用のラベルを貼らなければならない。

ところが酒井は、ラベルを貼る前の原料を勝手に持ち出してしまった。

神谷は荷下ろし作業中だったため気付かなかった。

作業が終わり、ラベルを貼ろうと原料を探す。

ない。

一つだけではない。

いくつも見当たらない。

神谷は考えた。

明日使う原料。

担当者。

そして酒井。

嫌な予感しかしなかった。

製造現場へ向かうと、案の定そこに原料が置かれていた。

神谷は無言でラベルを貼り、伝票処理を済ませて戻ろうとする。

その時だった。

「オイ!」

酒井の声が飛ぶ。

聞こえなかった神谷はそのまま歩く。

「オイ! オイ! オイ!」

さらに怒鳴り声が響いた。

「なんだその態度!」

神谷は振り返る。

正直、関わりたくもなかった。

「何ですか?」

「なんだよその態度!」

「ラベル貼ってないで持っていくから、貼りに来たんですが」

「知らねーよ!」

神谷はため息をついた。

「ラベルが無いとQRも読めないでしょう」

「こっちは貼ってあるんだから、こっちも持ってっていいだろ!」

「原料が違いますよね」

「同じトラックで来たんだろ?」

「そうですけど」

「じゃあいいじゃん!」

「だから物が違うんですよ」

「知らねーよ!」

「そうなんですか」

もう話にならなかった。

後から言い掛かりを付けられるのも面倒だったため、神谷は笹木へ報告に向かった。

事情を説明すると、笹木は一言だけ聞いた。

「それで仕事は出来なくなったんですか?」

「いえ、ラベル貼ったので問題ありません」

その瞬間、笹木の表情が変わった。

まるで、

――それで?

と言いたげな顔だった。

神谷は慌てて付け加える。

「後から変な話になるのが嫌だったので、先に報告しただけです」

しかし笹木の反応は薄かった。

仲の良い先輩に相談すると、

「笹木にはあまり関わらない方が精神的にいい」

そう助言された。

神谷も同感だった。

数日後。

仕事が早く終わり時間が空いた。

パートの作業を少し手伝う。

正直、人手は足りていた。

それでも暇だったので、雑談を交えながら作業をしていた。

手は止まっていない。

すると笹木に呼び出された。

「話しながら仕事はしないで欲しい」

開口一番だった。

「手伝うのはいいけど、話しながら作業するのはどう思う?」

神谷は思わず聞き返す。

「それなら仕事もしないでずっと話してる人はどうなんですか?」

「話をすり替えるな! 今は神谷の話だ!」

また始まった。

神谷は心の中でため息をつく。

「仕事はしてましたけど」

「仕事は黙々とやって欲しい。効率も上がる」

効率。

その言葉に神谷は少し苛立った。

仕事をせず雑談ばかりしている人達は何も言われない。

なのに、自分は作業しながら話していただけで注意される。

納得は出来なかった。

それでも。

「判りました」

そう答えた。

笹木は続ける。

「手伝いしてるってことは時間空いてるの?」

神谷は即答した。

「いえ、今日はたまたまです」

「そうか。手伝いはありがたい」

神谷は頷いた。

「あ、判りました」

部屋を出る。

そして心の中で静かに決めた。

――もう手伝いはしない。

善意も余計な仕事も、もう必要ない。

やればやるほど損をする。

それを嫌というほど学んだ。

酒井の嫌がらせは今も続いている。

笹木への期待も無い。

来年になれば、また本社異動の話が出るかもしれない。

その時は辞める。

そう決めている。

だから今は。

言われたことだけやる。

余計なことはしない。

給料を貰う。

それだけでいい。

神谷はそう思いながら、今日も会社の門をくぐるのだった。

――END――


読んでいただきありがとうございました。

細かい事を書けばもっといっぱいあるのですが、流れが悪くなり、愚痴メインになってしまうので、簡潔に致しました。もちろん最後の案件組合に相談しましたが、答えは書かなくても判りますよね?

続きを書くことがない事を祈って完結とさせていただきます。本当にありがとうございました。

最後にこれは、本当に現実に起きた事をお忘れなきように。

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