帰郷 5
「どうするつもり?」PSI波動砲の準備にかかる直人に、カミラはその目的を確認する。
「泉と一体になってしまった、ファビオさんの魂に、サニの想いを届けます! PSI波動砲に乗せて!」
直人の策に<アマテラス>、<クナピピ>、そして通信を繋ぐ各所の皆が、聞き耳を立てている。
「ファビオさんは、ずっとここに囚われている。囚われにある孤独な魂には……誰かが手を差し伸べなければ……」
自分には父やサニ、仲間達が手を差し伸べてくれた。手を差し伸べてくれる人がいた——その事を直人は、改めて痛感している。
……なおと……それは、貴方も……我に手を差し伸べてくれたのは……貴方……
そう呟くアムネリアの声なき声は、音声変換される事はない。
PSI波動砲のターゲットスコープが展開され、発射管制システムが起動する。
直人は、呼吸を改めて、再び口を開く。
「……抜け出すことなんて……誰かの……他の願いが必要なんだ!」
「だが、PSI波動砲では、下手をすれば、対象者の魂まで変質させる、いや消滅させる可能性すらあるぞ」アランは警告する。「でも、あの深層域に働きかけるには、PSI波動砲の出力でなければ届かない!」直人は、意を決してPSI波動砲の発射トリガーに手をかけた。
『お願い、皆やらせて!』サニは、通信を通して、皆に訴え掛ける。
『アタシはパパを信じる。きっと、アタシの声に応えてくれる!』
「いいだろう、サニ、そして<アマテラス>、君たちに任せる! よろしいですね、所長、本部長?」即座に答えたのは、<クナピピ>隊長のライラだ。
「他に、手はなさそうだな」『うむ』ライラの迷いのない一声が、モーガン、藤川の承認を取り付ける。
「サニ……ファビオを……お願い……」
ロワナは、手を組み、祈りを捧げる——
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『何が起こるか、想定できない。オセアニアIMC、並びに<イワウラ>は、両船の即時回収に備えよ!』東の張り詰めた司令が各所に響き渡る。
『承知した!』ライラは、短く答え、オペレーターらに指示を飛ばす。
『任せとけ! 齋藤、アイリーン! アイツらを絶対、見落とすな!』『はい!』<イワクラ>のオペレーションブリッジにも、俄かに緊張が漲ってくる。
「田中、各所の連携タイムラグ補正は、本部でコントロールする! 彼らの無事な帰還は、君にかかっているぞ」「はい! 任せてください!」
常に運行を見守り、<アマテラス>の出航、及び帰還のナビゲーターを務める本部IMCの田中は、俄然張り切り出した。
「真世。お前は、亜夢とアムネリアのPSIパルスとバイオパラメーターの監視を。<アマテラス>と<クナピピ>を繋ぐ彼女達には、相当な負担がかかるはずだ。あの娘らが折れては、元も子もない」「わかったわ、お爺ちゃん」藤川の指示に真世は、心に巣食った邪気を祓うように、自分の頬を叩くと、仕事に集中する。
「では、作戦行動開始!」「<アマテラス>了解! じゃあ、いくわよ、サニ!」東の発令を受け、カミラは呼びかけた。
『はい!』
泉を正面に、<アマテラス>、その後方で<クナピピ>は船を倒し、船首(最上部)を<アマテラス>の船尾に向ける。
「取舵三〇、下げ舵四〇! PSI波動砲への回路開け!」
「サニ先輩! 船は僕らに任せて! 飛び込んでください!」「ありがとう! いくよ、シドレア! 接続!」
<クナピピ>船首のレンズ状の超次元転送波送信機(本来、<クナピピ>が探索したインナースペース深淵部情報データバンクの大容量データ送信を可能にするため、開発されていた装備)が、青緑の発光を伴い、転送波を<アマテラス>に送り込む。
転送波は、現状、<クナピピ>の拠点、オセアニア支部のホストシステムへの送信のみ可能であり、僚船へのリアルタイムデータ共有システムは開発中であった。<アマテラス>は、アムネリアが、データ共有のインターフェースとなる事で、<クナピピ>のデータバンク情報を共有する。
「えっ? ……サニ??」
亜夢は感じ取ったサニの気配を追って、アムネリアのフォログラムへと向く。フォログラムにサニの姿が重なり始めている。
「サニのPSIパルスを確認! 波動共振フィールドにデータを展開!」直人は、PSI波動砲の発射シーケンスを一つ一つ、確認しながら慎重に進める。
「ナオ、船の操縦を渡すぞ!」「ああ」
直人は船首PSI波動砲の照準を、拳銃型コントローラーの操船機能によって合わせ込んでいく。
「ターゲットスコープ、座標セット! 目標は、前方、虹蛇の泉!」




