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INNER NAUTS(インナーノーツ)第二部  作者: SunYoh
第二章 月と夢と精霊と
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レインボーサーペント 1

「アムネリア! 今だ! 戻って!」

 

 直人の呼び掛けに応じるように、へたり込んで項垂れたアムネリアが、再びフォログラムに戻ってくる。

 

 一方で、インナースペースの、サニの無意識記憶から作り出されていた、水織川研究所の様相は、次第に溶け出し、再びファビオの心象風景が戻ってきた。

 

『え、いや⁉︎ 何⁉︎ ああああ‼︎ センパイ‼︎』

 

 同時に、虹色を放つサニの巨像も、溶け出した空間様相に巻き込まれるように、姿を消してゆく。

 

「にゃにゃにゃ! ……あれ?」喧嘩相手を失った亜夢の意識も肉体に戻される。亜夢は、ブリッジを不思議そうに見回して、見失ったサニを探している。

 

「サニ⁉︎」直人は立ち上がり、モニターに目を凝らす。

 

「アラン! 追跡は⁉︎」「やっている! くっ!」普段、冷静なアランの顔に焦りが滲む。

 

「そうか、まかりなりにもヤツの術が、サニの魂を引き留めていたのか!」ティムは、握りしめた拳を操縦桿に打ち付け、歯を食いしばった。

 

『くっくっくっ……そう……う事だ』

 

 ティムの言葉に答えるように、夢見頭の声が聞こえてくる。音声変換された声は掠れ、弱くなっている。術者が、ミッションへの干渉力を失いかけているのだろうと、カミラは推察した。

 

『残念……が、私の術……すぐ解け……あの娘はもう、戻り……せぬわ……』

 

「なんだと! サニを、サニを返せ!」直人は、叫ぶ。

 

『ふふふ……いず……た、お目にか……ろ……ご機嫌よう、<アマ……ス>……童達よ……』声は、インナースペースの彼方へと消え入る。

 

「アンノウンPSIパルス消失……どうやら、完全撤退したようだ」「サニは⁉︎」アランの報告に、カミラはすぐに切り返す。

 

「ダメだ……見失った」

 

『すまぬ……戻るだけで精一杯でした……』

 

 直人は、正面を向いたまま、フォログラムのアムネリアに、小さく首を横に振って脱力してシートに落ちる。アムネリアは、口を閉ざし、俯く。亜夢は、キョトンとしたまま、そんな二人(・・)を見つめていた。

 

「<クナピピ>、そちらはどうだ?」アランが問う。

 

『こちら、<クナピピ>。シドレアの監視機能で何とか、追えてますが……この船の装備では、どうする事も……お願いします! ファビオさんと、サニ先輩を助けてください!』

 

「サニ……先輩⁉︎」ティムは、怪訝な表情を浮かべた。

 

「ええ、もちろんよ。座標は?」まだ希望はある。カミラは、表情を緩めて問う。

 

『かろうじて! データリンクします!』座標データが共有され、<アマテラス>の情報モニターに表示された。

 

「……サニ……ごめん……オレのせいで……サニ……」直人は項垂れたまま呟いている。

 

「ちっ、またか。あのへっぽこエース……おい……」通信モニター越しに、その姿を認めた、<イワクラ>の指揮をとる如月は、苛立ちのまま、通信マイクのスイッチを入れようとしたが、それより先に<クナピピ>のクリバヤシが口を開いていた。

 

『そう、思うなら……早く行ってくださいよ。風間先輩』

 

「え……キミは……」顔を上げ、モニター向こうの初対面の青年を見る。

 

 クリバヤシは、自席のモニターに視線を落としながら、再び口を開く。

 

『僕もちょっとの間、日本のIN-PSID附大の特課にいましたから。なんか……悔しいな……こんなの…………サニ先輩は、貴方しか救えないんじゃないですか?』

 

 クリバヤシの言葉に、直人は息を止めた。

 

 ミッションに関わる各所の通信モニターに映る直人に、皆の視線が集まる。その中で真世は、一人、モニターから視線を逸らして、俯いていた。

 

「リョウちゃん……」サニの動かない身体の傍に付き添うマヤは、顔を上げてクリバヤシを窺う。ミア、エリックも息を殺して、クリバヤシを見守った。

 

 不意にクリバヤシは立ち上がって、緊迫した空気をかき消すと、今度は顔を上げて<アマテラス>のブリッジに向け、声を張った。

 

『僕らは、ここに止まって<アマテラス>をナビゲートします。でも、PSIパルスの減衰から見て、残り時間は、長くても一時間。だから、早く!』

 

 真っ直ぐ見つめてくるクリバヤシのライトブラウンの瞳を、直人は正面から受け止めた。

 

「……わかった。キミの言うとおりだ。オレが、二人を助ける! 必ず!」

 

 直人の誓いに、クリバヤシは、小さく頷く。

 

 如月は、小さな笑みを浮かべ、マイクのスイッチから指を離した。

 

「行こう! 隊長! 皆!」

 

 直人は、決意を仲間に共有する。

 

「ええ」カミラは、微笑んで返した。ティムとアランも同意して頷く。

 

「あいつぅ! ぜったい捕まえてやるぅうう! ふぅううう!」『亜夢……』

 

 俄然張り切る亜夢をアムネリアは、静かに微笑んで見つめていた。

 

「ティム、行き先は?」「航路は策定済み……けど、ちょっとヤバいぜ」

 

 ティムは、<クナピピ>からのデータを元に策定した時空間マップを、メインモニターに表示する。マップは、本部IMC始め、各所に共有されていた。

 

『うむ。その座標次元はLV6、これまでのミッションでも未踏の最深限界次元、集合無意識界面付近だ。PSIバリアも、良くて一時間程が限界だろう。損耗に注意して進め!』モニター越しの東の表情は、いつにも増して硬い。

 

「了解です、チーフ」カミラは凛として答えた。

 

『サニと、ファビオを頼む』藤川が念を押す。

 

 <アマテラス>の一同は、大きく頷いて答えた。

 

「<アマテラス>、目標座標へ向け、直ちに発進!」

 

 カミラは、直ちに発令する。主機の高まりが、<アマテラス>の船体を心地よく揺さぶり始めた。

 

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