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INNER NAUTS(インナーノーツ)第二部  作者: SunYoh
第二章 月と夢と精霊と
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サニ・マティーニ 6

「……わかった。やってみよう」

 

『いいのか、コーゾー』「ファビオの魂が失われてしまっては元も子もない。サニ、お前に賭ける」

 

 藤川の承諾に、サニは大きく頷いた。

 

『任せといて、所長!』

 

「アル、直ちにサニのパーソナルデータを<クナピピ>へ」『……承知した』「それから、<アマテラス>のセッティング変更を急いでくれ」

 

 モニター向こうで立ち上がったアルベルトは、部下らに指示を飛ばす。

 

「真世」「あ、は、はい!」

 

 突然祖父に呼ばれ、真世は、自席から腰を浮かす。

 

「聞いたとおりだ。亜夢、いやアムネリアをすぐに起こしてくれ」「わ、わかったわ、おじいちゃん」

 

 席を立つと真世は、IMC下段の対人インナーミッション受入区画へと降りる、数段の階段を駆け降りてゆく。

 

『セッティング変更にもう少し時間をもらうぞ。到着予定は、プラス十分だ。それまで保たせろ、サニ』アルベルトは、モニターに向き戻って言った。

 

「了解よ!」サニは、笑みを浮かべて答えた。

 

「本当にいいの? 貴女も、隊長のように、なるかもしれないよ……」サニから見ておよそ左手側に座る、<クナピピ>レーダー手、ミアが、サニの方へ振り返り見ながら言った。

 

「いーんでない、それならそれ。お手並み拝見〜〜」前方、左舷側に座る、ミッション装備を担当するマヤは、自身のコンソールパネルをチェックしながら、含み笑いをこぼしている。

 

「だな。あんたは飛び入り参加者だ。隊長席(そこ)に座ってるからって、勘違いするなよ。あんたはシドレアに集中してさえいればいい」マヤの右隣で、操縦桿を握るエリックは、冷ややかな視線をサニに送っている。

 

「わかってるわよ」サニは、平然と言った。

 

「み、皆さん、船の指揮は、IMCから隊長が執ります! だから皆、マルティーニさんに協力してください!」クリバヤシが、腰を浮かせて声を張るが、三人にはあまり響いていないようだ。

 

 この頼りなさそうな『男の子』に、副長とは、何のイジメかしら、とサニが思った時。

 

『その通りだ』通信モニターを通して、よく通る低い声がブリッジに流れてくると、一転、緊張が漲る。

 

『お前達のことは……くっ……IMC(ここ)からしっかり監視している! 下手な事して、サニ(そのコ)の足引っ張ったりすんじゃないよ。細かいことは、リョウの指示を聞く事!』

 

 通信モニターの向こうから、隊長ライラが睨みを効かせていた。

 

「うわっ! こわ……」『いいね! これは命令だ』エリックの呟きが聞こえたのか、その声をねじ伏せるかのような威圧感だ。

 

「Yes,ma'am!」オセアニアチームらは、脊髄反射で応答していた。

 

 ……やっぱ軍隊? ……ってより、女王様と僕達かしら……

 

 サニが薄ら笑いを浮かべていると、僕一号が、ハツラツとして声をかけてきた。

 

「大丈夫、僕がフォローしますので。安心して、シドレアに専念してください!」

 

「あ、ありがとう、クリバヤシくん」なるほど、彼が副長に選ばれている理由が、わかる気がした。

 

「い、いえ……マルティーニさん……」クリバヤシは、はにかんで俯いた。

 

「マルティーニ……ねぇ……おっ⁉︎ きた!」

 

 サニの席のパネルに、サニのパーソナルコードの読み込みを知らせる通知が表示されている。

 

『サニ、貴女のパーソナルデータとシドレア起動コードを紐づけた。これで、シドレアは、貴女を認識する』モニターの越しのモーガンが、説明した。

 

「わかったわ! じゃ、いくよ! シドレア、起動!」

 

『……オーラスキャン……チェック……オールクリア…………』

 

 感情の起伏のない、女性の声が答え、サニの席の中央のモニターがグリーンに発光する。

 

 その中央に、

 

 “the

 Circuit for

 Direct

 Observation and

 Reconstruction of

 Archeringa”

 

 の表記とロゴが浮かび上がる。

 

「うわっ、喋った??」「シドレアは対話型オペレーティングシステムなんです! 大体のことは、話しかけるか、そのインターフェースモジュールを掴んで念じるかすれば、動かせますので!」

 

『パーソナル認識番号X9-59。ようこそ……サニ・マルティーニさん』

 

 シドレアの合成音声が呼びかけてくる。

 

「うわ、アンタも『マルティーニ』? ……やっぱ、しっくりこないなぁ」

 

「えっ……?」クリバヤシは首を傾げる。

 

「名前登録、変えられる?」「え、ええ……喋りかければ……」

 

「シドレア! 登録名変更!」

 

 オセアニアチームの四人は、怪訝そうにサニへ視線を運ぶ。

 

『登録名変更、受け付けました。再登録をどうぞ』音声は、抑揚なく促す。

 

「いい、シドレア! アタシの名前は、サニ・マティーニ! ちゃんと覚えなさいよ!」

 

「はぁっ⁉︎」エリックは、顔を顰め、「マティーニって……」ミアは、呆れ、「ぷぷ、カクテルかよ?」マヤは嘲笑めいた笑いをこぼす。クリバヤシは、呆然として言葉を失っている。

 

『……サニ・マティーニ……登録しました』

 

「よろしく! シドレア!」サニは、満足気なしたり顔を浮かべていた。

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