表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
INNER NAUTS(インナーノーツ)第二部  作者: SunYoh
第一章 久遠なる記憶
56/256

龍鳳呈祥 4

 アランが見詰めるスペクトル解析波形の中で、一点、感知レベルは低いながらも、毅然と突き出す剣峰がある。

 

『……そう……貴女は……諦めたりしない……貴女は……そういう人……麗ちゃん……』

 

 ブリッジに響く雨桐の声に、アランはハッとなり、すぐにその波形のサンプリング、及び照合を行った。

 

「そうか、このPSIパルスは……間違い無い! 容支部長!」アランは、PSIパルスを取っ掛かりに、<天仙娘娘>との同調を調整していく。

 

『……<アマ…………ス>……聞こ…………すか? ……ちら……<天……娘……>……』「<天仙娘娘>⁉︎」

 

 <アマテラス>ブリッジに、ようやく<天仙娘娘>からの通信音声と、不鮮明な映像が届く。最後の通信から僅か六時間足らずではあるが、インナーノーツの皆は、遥かな時を超えて、ようやく再び巡り会えた……そんな感慨深さすら込み上げてくる。

 

 劉は、口早にメッセージを伝えてきた。

 

『カミラ……長。こち……の……ステムは、[エレメンタル]の侵入……許し、この……信も……ずか……間です。支部長……意志が……相柳……飲み込……れる前に、可能な残り全…………エ……ルギーを持って全周……拡散仙術波を撃……ます。我……とタ……ングを合わ……ブラ……ターを……』

 

「わかったわ!」

 

「脱出に必要な推力は? 確保できるのか?」アランは険しい表情を浮かべ、問う。その言葉に、<天仙娘娘>の一同は、顔を俯け、口を固く結ぶ。

 

 劉は、眉を顰め、顔を硬らせたまま、口を開く。

 

『……仙術波……えば、我が船の推……は、もう…………ですが……<ア……テラス>に、牽引……てもら……えれば……虫が良い……頼み……す……れど……皆の命を……』

 

「わかってる、劉。私たちは、同じインナーノーツの仲間! 必ず助ける!」

 

『仲間……』

 

 カミラの力強い言葉が、<天仙娘娘>の一同の顔を上げさせる。<アマテラス><天仙娘娘>両チーム皆の眼差しが、固く結ばれる。

 

『あな……方を……信頼します……』

 

 劉は、ぎこちなさの残る笑顔を見せた。精一杯の彼女の想いを、カミラは頷いて受け止める。

 

「すぐに、やるわよ! 劉!」

 

「亜夢、アムネリア! もう一度、力を貸して!」

 

『うん‼︎』『はい!』

 

 すっかり元気を取り戻している亜夢は、ここ一番に"燃え"上がる。アムネリアは、再び集中を深め、雨桐、そして娃の想いを船の隅々に行き渡らせ始めた。

 

「智愛、システムは? 全周仙術波は撃てますね?」「はい! 支部長の意志が、アイツを食い止めちゃってま〜す! 支部長が、保っている間は、何とか!」

 

「よし、総員! 全周仙術波に集中! ダイレクト接続し、全員で撃つ!」「了解!」

 

 <天仙娘娘>チームは、シートユニットを散開させ、各担当の仙術波砲台の準備に取り掛かる。

 

「チッ……」「明明」悔しげに舌打ちする明明を、楊は優しく嗜めた。

 

「……わかってますよ。やるしかないよね。へますんじゃないよ、直人!」小さく頬を膨らませながらも、自身の作業に集中する。その姿に、楊は小さく微笑むと、気持ちを引き締め直した。

 

「セットカウント六十! 直ちに作戦行動、開始!」

 

 鳳凰の翼をはためかせ、獲物に襲いかかる猛禽のように、<アマテラス>は、共工の頭部目指し、急降下する。

 

 首をのけぞらせ、相柳の頭が頭上を向く。

 

 再び、相柳の思念が、<天仙娘娘>のPSI-Linkシステムの中で蠢き出す。システムにダイレクト接続する<天仙娘娘>チームの精神を刺激する。

 

「うっ……仙術波管制……システムに! また、入り込んでくるぅ〜!」

 

「させては……なりません! 総員! 意識集中‼︎」

 

 迫り来る<アマテラス>を<天仙娘娘>に迎撃させようとする相柳の思念と、それを押し返しながら、全周PSI波動スプレッドの発射に備える<天仙娘娘>チーム、そして<天仙娘娘>にリンクする容の意志が、PSI-Linkシステムの中で、(せめ)ぎ合う。

 

 相柳の頭は、舌打ちでもするかのように苦々しく顔を歪めると、一転、目と口を大きく見開いて怨嗟の如き唸りを立てる。

 

『ヒャハ! ヒャハ! ヒャッハハハハハ! 死ねやぁあああ‼︎』唸りに触発された熾恩の首が伸び出し、まるで蛇の鎌首のようになって<アマテラス>に襲い来る。

 

 ティムの巧みな操船で、その攻撃をかわすものの、一手、熾恩の動きが速い。

 

「チィ!」避けきれない!

 

『ヒャッハァアア! もらったぜぇ!』

 

 熾恩の大口が迫る。

 

『ヒャッハ、ヒャッハってぇ! うるっさいんだよ! お前ぇええ‼︎』

 

 亜夢の叫びと共に、鳳凰の翼が大きく羽ばたく。羽ばたきが、熱と太陽の光の塊を熾恩の顔面に叩きつける。

 

『ギョァアアアアアア‼︎』

 

 たまらず、熾恩の首は、目を眩ませ、右往左往しながら縮んでいった。

 

「今よ! 全速前進‼︎」「ヨーソロー!」

 

 怒りを露わにする相柳本人の美顔は、忽ち醜悪な形相と化し、<アマテラス>に向かって、怨嗟の咆哮を叩きつける。

 

『ぉおおぉおおぉ〜〜……』PSI-Linkシステムに、魂を呪わんとする思念が、入り込もうとする。その気配は、精神への鈍痛となって<アマテラス>チームを襲う。

 

『お前もぉ! あっち行けぇ‼︎』亜夢の昂揚が、相柳を押し返す。

 

「このまま突入する‼︎」

 

 <天仙娘娘>が囚われる、共工の頭部へ<アマテラス>は、突き進む。

 

『……人は、奪いすぎたのじゃ……罪を贖わねば』『……雨桐! ……売女の娘なんかとぉ! 穢らわしい人間になどぉおお!』『雨桐……助けてくれ、雨桐……』相柳の怨嗟に、各々の頭部が、蠢き、口々に恨み節のような言葉を発している。

 

「ランデブーまであと三〇! 二十九!」<アマテラス>クルーらは、相柳の首が発する怨嗟の声が、ブリッジに響き渡る中、サニの緊迫したカウントダウンだけに集中する。

 

 アムネリアが深く祈るように、集中を高めていく。それに伴って、雨桐の声が現れてくる。

 

『……麗ちゃん……』

 

 雨桐の穏やかな声音が、次第に相柳の首達が吐き散らす、禍々しい声を柔らかく包み込む。

 

『……わかってる……あなたは……諦めない人……"おそれ"を……乗り越えてゆける人……』

 

 その声は、<天仙娘娘>のブリッジにも聞こえ始めていた。

 

『だから、私は見せたかった……見せなきゃいけなかった……"おそれ"を形に変えてしまう……仙水の闇を……試練を……科学者として……』

 

「二〇! 十九!」<天仙娘娘>チームは、楊の明瞭なカウントダウンに集中し、脱出の時に備えていた。

 

 <アマテラス>が目指す共工の顔をした頭部は、鯀の顔に変容し、その鯀の顔は、さらに容の表情を作りだし、語り出す。

 

『……でも……私は……人は……たくさん奪ってきたのだから……貴女から……自然から……大切なものを……仙水が恐れを見せるなら……それは……"罰"……』

 

『そうじゃない……生きるため、他から何かを得る……それは人も自然も変わりはしない…………私は……そんな力強く生きようとする貴女に……憧れていた……』『雨……桐……』

 

『罪も……罰も……人が人の社会を守るために作り上げたもの……』

 

 雨桐の声に、娃の声が重なる。

 

『人の魂深くに渦巻く、"おそれ"を根源として……それは、"おそれ"が映し出す幻……』

 

 <アマテラス>の放つ光が、燃え立つ朝日の如く、相柳の九つの顔を照り付ける。

 

『やぁ〜めぇ〜ろぉ〜〜……お〜そ〜れ〜よぉ〜〜……』相柳の中央の顔が、グネグネと蠢き、もはや顔の形をも失っていく。同様に、その周りを取り巻く顔達もグニャグニャとしたヘドロのようになって崩れゆき、もはや意味をなさない唸りを上げるのみだ。

 

「五! 四!」サニと楊のカウントダウンが、完全に重なる。

 

『だから……』

 

「三! 二! 一!」

 

「PSIブラスター、発射!」「仙術波! 発動‼︎」カミラ、劉の号令は同時だ。

 

 直人が放つ、<アマテラス>のPSIブラスター、そして<天仙娘娘>全員で撃つ、全周PSI波動スプレッドの衝突が生み出すエネルギーが、崩れかけた相柳から生み出される、ヘドロの奔流を押し拡げ、<天仙娘娘>を浮かび上がらせた。

 

「<天仙>浮上!」「今よ! 誘導PSIパルス! リンク接続、脱出‼︎」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ