↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
INNER NAUTS(インナーノーツ)第二部  作者: SunYoh
第四章 ノヴス・ドミヌス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

338/367

邂逅の時 4

 午後三時頃。鳥海まほろば市北側検問——


 日本海沿いの道路に置かれた北側検問は、元々出入りが殆どなく、初日、二日目こそ多少のデモ隊が流れてきたものの、彼らが順次解散を始めている今……


「はぁ〜〜……暇ぁ! 大浦さぁん。ここの検問、もういらないですよねぇ〜〜!」あまりに退屈すぎて、広域捜査一課の女性新人、伊勢は大袈裟にぼやいてみる。


「んー、ま、そうだなぁ〜〜」人は良いが、対して面白みもない年配刑事、大浦は、気のない返事を返した。地元警察も、デモの引き上げが始まったのをみて、徐々に引き上げ、この検問に残ったのも、伊勢、大浦と警備アンドロイドが一体。晴れ渡った空に日本海から吹く、のどかな秋風。絶好の行楽日和に、なんでこんなところに……と、検問の簡易テントの下で、ただ腰掛けていれば眠気も襲って来る。


 伊勢が、テントから見える日本海をぼんやりと眺めていると、突然、腹の底を震わせるような低い音が、潮風に乗って鳴り響き、伊勢は、瞼の落ちかけた目を見開く。


「汽笛⁉︎」テントを出て、海の方へと駆け寄り辺りを見回せば、北の方に巨大な船影が見える。


「大浦さぁん! 船、船ですよ‼︎」


「んん?」言いながら、大浦も腰を上げ、ゆっくりと海の方へと近づく。


「こっちに向かってる?」「ああ、そうだなぁ〜」


「まさか、新手のデモとか?」「どうかなぁ〜」


「ちょ、大浦さん‼︎ とにかく連絡を……」


 そう言っている間に船はどんどんと近づいて伊勢らの目先へと差し掛かる。よく見れば、船首のあたりに太極図を六角形にデザインしたマークが見えた。


「あれは、IN-PSIDの⁉︎」


 船のデッキにクルーであろうか? 数名の人影が見えた。彼らは、伊勢らに気づいて手を振っているようだ。大浦は、反射的に手を振っている。


「ちょ、大浦さん⁉︎」



「Ohwww‼︎ Hello‼︎ コンニチワ〜〜‼︎」<テメノス>上甲板に立つサラは、両腕を高く上げて、キャップを手に大きく振っていた。


「オハヨ、ゴザイマス〜〜オヒガラ、ヨク〜〜」沿岸の道路に立つ、色黒の顔の男がにこやかに手を振替してくれるのに気をよくしたのか、適当な日本語で呼びかけている。


「おい、サラ! 本部との通信はこれからだ。まだ、何があるかわからない。はしゃぎすぎだぞ」サラの一歩後ろに立つマイケルは、サラのあっけらかんとした行動に眉を顰めるが、その顔はだいぶほぐれていた。


 サラは大きくのびをして、日本海の空気を思いっきり吸い込む。


「ふぅ……いいじゃん、もう。ずっと緊張しっぱなしで、息が詰まりそうだったんだもん!」


「ったく……」マイケルは、サラと並んで甲板のヘリに立つ。左舷側に立つ二人は、眼前に聳える出羽富士とも呼ばれる霊峰、鳥海山の優美な姿に目を奪われる。万年雪の白い稜線と秋晴れの爽やかな青空のコントラストに感嘆が漏れる。


「綺麗なところね……」「ああ……」


 接岸の準備に、一緒に甲板に出たクルーら四人もしばらく、皆、初めて訪れた、自然豊かな日本の景色に動きを止めていた。


『ブリッジから総員へ。本部から入港許可を得た。まもなく接岸作業に入る! 繰り返す、これより接岸作業に入る!』


 甲板作業員が動き出す。<テメノス>の行先に、IN-PSID専用港の管理施設や倉庫が建ち並ぶ岸壁と、大型船舶用の埠頭が見えて来る。埠頭を挟んで向こう側には<テメノス>同型船の<イワクラ>が停泊していた。



 ****


「兄貴! サラ!」「あっ、ティム!」「おぅ」


 IMCへと駆け込んだティムは、先月、ミッションを共にしたばかりの二人の姿を認め、目を丸めた。


 IMCには、<テメノス>の到着を受け、藤川は関係者を召集していた。本部側は、IMCスタッフから藤川、東、アイリーン、田中、インナーノーツからカミラ、アラン、サニ、ティム。技術部長、アルベルト、そして港からここまで案内してきたIMSの如月と齋藤。<テメノス>側は、マイケル、サラの二人に、NUSA支部IMSから、リーダーで<テメノス>キャプテンを兼任するロバートと、<テメノス>ではチーフパーサーを務めるクレアが同行した。


「まずは受け入れを感謝する」と、ロバートが最初に声を上げ、挨拶の後、マイケル、サラ、クレアを紹介し、それに応えて、藤川も集った本部のメンバーを簡単に紹介した。その間に、アイリーンとサニ、そして田中は、予備椅子や、休憩ブースから椅子を集めて、皆の席を準備する。掛けてくれという藤川の言葉で、皆、着席し、ロバートは話を切り出す。


「なんのアポイントもなく、このような訪問になってしまったが……我々の状況は、大方、把握されてますな? 藤川所長?」とロバート。


「うむ。NUBIから、我々にも通告があった。君たちの支部を差し押さえたと……テロ準備の疑いがある、とのことだったが……」


「テロォ⁉︎ オゥ! マイガッ‼︎」真っ先に反応したサラは、素っ頓狂な声を上げ、額に手を当てる。他の三人も顔を青ざめさせた。


「君たちの方は、まるで状況を知らぬようだな」そういう藤川に、ロバートとマイケルは、眉を顰めて頷く。


「……我々も事態の全てを把握しきれているわけではないが」そう、前置きをして藤川は話し始める。


 NUSA支部に突然、NUBIの強制捜査が入ったのは四日前。国連筋の情報では、世界的なIN-PSIDバッシングの風潮が高まる中、IN-PSIDの保有するPSIクラフトへの危険視する動きが出始めていた。真っ先に動いたのはNUSA政府で、特にワープ機能を持ち、現象界でも活動できる<リーベルタース>の兵器転用の可能性を危惧されたらしい。それとタイミングを同じくして、世間の批判を汲み、組織改革を進めている体裁を取るため、特に批判の的となっているIN-PSID日本本部の本部機能をEU支部に移し、現在は、EUが暫定本部となっていることを伝える。その間にも世界各地での支部や関連施設は、避難の矛先を向けられ、暴動の被害も出ている。ここ、日本本部にも、デモが押し寄せていたことを、藤川は付け加えた。


 <テメノス>の四人は、自分たちが逃避行をしている間にも、IN-PSIDへの風あたりが日増しに悪化している事を改めて実感する。


「対して、世界は急速に一つの潮流へと纏まろうとしている。『黄金の女神』という……新たなる神の下に……」藤川は、皆が取り囲むIMC中央の卓状モニターに、この一週間ほどの世界の動きをまとめた資料をホログラムで投影した。


「要するに……オレたちは、この女神の敵、悪魔に仕立て上げられたというわけか……」マイケルは唇を噛む。


「……で、どうするんだ? オレたちは、このまま、世界のヒールに成り下がるつもりなのか?」「ちょ……マイケル! 言い方!」ぶっきらぼうなマイケルの物言いに、本部側の皆が、ハッとなる空気を察して、サラが口を挟む。


「……な、わけないだろ、兄貴。……っで、ですよね、所長?」マイケルの鋭い眼差しから逃げるようにして、ティムは藤川を窺う。


「……無論だ」そう言って、藤川は、ゆっくりと腰を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。