第143.5話 それぞれの切り札(後編)
☆★☆★ 本日発売 ☆★☆★
本日「宮廷鍵師」の第4巻および第34、35話が、
先行配信をしているシーモアにて発売されました!
第4巻はついにクライマックス前!
因縁の相手ゲヴァルトとの戦いが始まります!
単話版では、新章「テネグ編」が開幕!
どちらも見逃せないので、ぜひよろしくお願いします。
「どうした、ユーリ?」
「アストリア。もう1度【銀閃】を撃ってください」
「いや、しかし……私は――――」
「アストリアがかつての仲間に向けて撃ちたくないのはわかります。でも、それでいいんです。僕の目的はそこじゃない!」
僕は指差した。
言葉にしなかったが、ニュアンスは伝わったらしい。
アストリアはニヤリと笑う。
「いつもは大人しく温厚なのに……。君は時々、大胆なことを考えるな」
「よく言われました」
「君の仲間にだな」
「はい!!」
僕たちは立ち止まる。
その瞬間を、ゲヴェイムさんは逃さなかった。
脇から伸びる【審判領域】の砲門が光る。
光の槍が僕たちを捉えた。
アストリアは銀剣を構えると、その光の魔力を吸収する。
「【銀閃】!!」
吸収した刃を斬撃にして飛ばす。
最初こそ虚を突いて、被弾を許したゲヴェイムさんだったが、今度はひらりと躱した。
回避しながら、さらに【審判領域】を撃ち込んでくる。
無茶苦茶だ。
照準も何も合っていない。
それどころか完全に人の限界まで魔力を搾り出していた。
一方、アストリアは冷静に吸収した魔力を跳ね返していく。
ダイムシャットの鼻先、アラムさんの肩の横、ゲヴェイムさんの足の下。
光の斬撃が、仲間たちの横スレスレを飛んでいく。
「どこを狙っている、アストリア! それともあれか? かつての仲間に恩情をかけているのか? ククク……。ハハハハハハハ! 変わったな。『円卓』の刃といわれた女が!! 男でも知ったか?」
「まったく……。ドリネーといい。お前といい……」
男は馬鹿ばっかりだ!!
壁際にまで追い詰められたアストリアはニヤリと笑った。
その瞬間、ゲヴェイムさんの【審判領域】が撃ち出される。
アストリアは剣こそ構えたが、吸収しない。
銀の髪を揺らしながら避ける。
黒牙城の壁に、まともに【審判領域】が突き刺さった。
大穴が開く。
しかし、それだけでは済まない。
他にも黒牙城には無数の穴が空いていた。
「まさか……。アストリアの【銀閃】か!!」
ダイムシャットは気づいた時には遅かった。
大穴から走り続けたヒビは、無数の穴を伝い、天井に向かう。
さらに大樹が枝葉を繁らせていくよう横に伸びていった。
音を立て、ついに天井が落ちてくる。
そもそもこの先の天井はすでに落ちていたが、それが黒牙城の構造的な耐久度を一層弱めていた。
「まずい! 黒牙城が壊れる!! アラム! すぐに聖剣ヒルリングで……」
「いいのか?」
アストリアは問うた。
「聖剣ヒルリングの力もまた魔法……。発揮するのに【静謐の祝祷】を解かなければならないぞ」
「あ――――ッ!」
ダイムシャットは今やっと気づいたらしい。
「最初からそれを……」
「その通りだ」
アストリアは聖剣エアリーズを大上段に構えた。
こうしている間にも、黒牙城は崩壊しようとしていた。
玄関フロアに瓦礫の山が積み上がっていく。
そこにさらに大きな瓦礫が落ちてきた
崩壊は時間の問題だった。
「【静謐の祝祷】を解いた瞬間、私はお前たちに【風砕・螺旋剣】を撃つ。今度は絶対に外さない!」
「世迷い言! お前に仲間を撃てるものか!!」
「撃てる!! 私は信じる、仲間!!」
「黙れ! アラム!! ヒルリングを使え!!」
ダイムシャットは叫ぶ。
アラムさんは【静謐の祝祷】を解く。
続けて、聖剣ヒルリングをかざした。
瓦礫が元に戻っていく。
一方、アストリアは大上段に聖剣を構えたままだった。
その手は震えている。
撃てなかったのだ。
「愚かな女だ。撃っていれば潮目が変わったものの……。お前は最大のチャンスを逃したのだ」
「そうだ。僕も、そしてアストリアもこのチャンスを待っていたんだ」
シャンッ!!
緑色の軌跡がダイムシャットの横を飛んでいく。
「何ッ!?」
ダイムシャットの顔が歪む。
その瞳に映っていたのは、緑色の聖霊に包まれた僕――ユーリ・キーデンスだった。
「馬鹿な!! 聖霊の加護だと!!」
驚くダイムシャットの顔を見て、風の聖霊ラナンは満足げに笑った。
「本来、聖霊は契約者以外に加護を与えない。でも、この子は特別なのよ」
僕は右手に付与された風の聖霊ラナンとの契約印を見せる。
「契約――――」
【完了】!









