第144話 パーティー再会(前編
◆◇◆◇◆
聖剣エアリーズが折れる前――――。
僕たちは剣帝ヴァルトの対策として、色々な戦術を試していた。
専らそれは僕の鍵魔法についての打ち合わせだ。
この時代のアストリアは当然、僕の鍵魔法について詳しく知らない。
鍵魔法の応用について、僕はレクチャーした。
さすがに魔王を封印できることまでは伏せておいたけど……。
「ユーリ、他に何か鍵魔法の使い方はないだろうか?」
「そうですね」
パッとは思い付かない。
鍵魔法はシンプルな魔法だ。
基本は物を固着させたり、剥がしたりすることだからである。
だから、やれることは割と多い。
僕が一般的に使っている方法も、魔王サリアと遊びながら覚えたものがほとんどだ。
「付けたり、剥がしたりできるなら、例えば聖霊との契約はどうなんだ?」
アストリアの何気ない提案に、ラナンはギョッとした。
「ちょっと! アストリア! この風の聖霊ラナンに何か不服でもあるの?」
若干涙を滲ませながら、アストリアに訴える。
当の契約主は苦笑いを浮かべつつ、よしよしとラナンの頭を撫でた。
「例えばの話だ。そもそもそんな簡単に……」
「できますよ」
「「できるの!!」」
アストリアとラナンは声を揃える。
仲良しだな。
こうやって自信を持っていうのも、昔邪霊に取り憑かれたことがあったからだ。
サリアといると、時々とんでもない悪霊や悪魔が寄ってくることがある。
たいていの場合、サリアが追い払われるのだけど、たまたま僕の身体を乗っ取ってしまった。サリアは慌てたけど、試しに鍵魔法で解除してみたら、除霊できたのだ。
サリア曰く、邪霊や悪魔、さらに精霊やその上位種である聖霊たちが、人に取り憑いたり、契約するのは、呪いとなんら変わらないのだという。
「わ、私が呪いですって」
「あ、あくまで鍵魔法はそういう風に認知してるってだけの話だよ」
「なんて生意気な魔法かしら。腹が立ってきたわ」
「面白い。1度試してみたらどうだろう」
「いいわ。やってみなさいよ」
ラナンはどっからでもかかってこいという感じでふんぞり帰った。
「アストリアと私は確かに契約者と聖霊という関係だけど、それ以上に強い絆があるの。……呪いなんて絶対にあり得ない!」
自信満々である。
でも、確かにアストリアとラナンには、契約者と聖霊という関係値以上のものを感じる。
友達というより、姉妹みたいだ。
「じゃあ、やってみますね。契約――――」
【破棄】
「どう? ラナン?」
特に変わったところはない。
ただ徐々にラナンの顔に汗が浮かんできた以外は……。
「ラナン、君の負けだ」
アストリアは右手の甲を見せる。
そこにはラナンとの契約印が刻まれているのだけど、すっかり消えていた。
それはつまりラナンとの契約が破棄されたことを意味する。
「な、なんでよぉぉおおおおおおおお!!」
ラナンはついに頭を抱えて絶叫した。
「なんでこんなにあっさり破棄されるのよぉぉおおおおおお!!」
ついに涙まで流し、またもやアストリアによちよちと慰められる。
ラナンにとって、何よりキツかったのは、自分との契約と呪いが一緒だったことのようだ。
「アストリア、また私と契約してくれるよね」
ラナンは涙目で訴える。
アストリアは「勿論だ」と相棒の頭を撫でながら言った後、こう付け加えた。
「ただもう1つ試したいことがある」
アストリアは僕とラナンをそれぞれ指差してこう言った。
「ユーリとラナンが、鍵魔法で契約できるかどうかだ」
◆◇◆◇◆
鍵魔法による聖霊の付け替えはうまく言った。
今やラナンの契約主は僕だ。
1度僕はラナンの加護の力を受けている。
でも、あの時とは全然違う。身体から力が――いや、大気が溢れてくる。
空気と一体感が強まったことで、どこへだって飛んでいけそうだった。
まだアストリアほどラナンの力は引き出せないけど、ダイムシャットたちの隙を突くことはできた。
風の聖霊ラナンの加護を受けた僕は一気に距離を詰める。
狙いはあの人だ。
「しまった! アラム! 早く【静謐の祝祷】を使え!!」
ダイムシャットは叫ぶ。
だが、もう遅い。
すでに僕の鍵魔法の効果範囲に入っていた。
「魔法――――」
【封印】
魔法を封印する。
アラムさんだけじゃない。
ダイムシャット、さらにゲヴェイムさんもだ。
効果としては【静謐の祝祷】に近い。
【禁止】ではなく、【封印】だからだ。
後者はともかく、前者は概念系の鍵魔法になってしまう。
それではサリアとの約束を破ることになる。
アラムさんやゲヴェイムさんに付与された【仮面舞踏】は消えないけど、これで3人は魔法を使用できなくなった。
さらに、僕が今アラムさんたちの【仮面舞踏】を解除しても、ダイムシャットの付け直しもできない。
ダイムシャットは手を掲げながら、魔力が集まらない現象に苛立ちを見せた。
「くそ! 本当に魔法が使えぬ。こうなったら!!」
ダイムシャットは自分の聖剣を抜き放つ。
黒く染まった大剣を握ると、その剣先をあろうことか近くにいたゲヴェイムさんの首元に向けた。
「ダイムシャット!!」
アラムさんは叫ぶ。
だが、未だに魔法は禁止されても【仮面舞踏・狂宴】の影響化にはあるらしい。
突然、アラムさんが苦しみ始めた。









