後継者
ドサッ。
霊媒を終えた真宵ちゃんが膝から崩れ落ちそうになるのを、横からナナちゃんと由紀ちゃんが支える。
「大丈夫?」
「うん。
…久しぶりに霊媒したから、ちょっと疲れただけ…」
そんな中オレは、背中に意識がもうろうとしている浅川と、肩から大量に出血している奈斗を抱き上げて、皆を連れて祖母の家に向かった。
かなり防御力の高いスーツのおかげで、何とか立っていられるらしい。
「おばあちゃん。
…久しぶりだね?
オレ。
宝月蓮太郎。」
「あっ!!
久しぶりね。
後ろにいるたくさんのお友達さんも、入っておいで。」
「蓮兄ちゃん…だよね?
初めまして!!
弟の宝月良太郎です♪」
「よろしくな。
…いろいろ面倒かけるけど。」
「兄さんもアイドルでしょ?」
「あぁ。
…まあな。」
「はみちゃん!?
何でココにいるの?」
「真宵さまっ!!」
「この子は、綾里 春美。
あたしは"はみちゃん"って呼んでるけどね。
この子はもうね、天才なんだよ!!」
「そんな紹介をしていただくなんて、恐れ多いです…」
はみちゃんと言われるこの子、超礼儀正しいな。
「…ひどいおケガを…なさっていますね…
少々お待ち頂けますか?」
そう言うと、3人分の烏龍茶にある小瓶に入った液体を垂らし、飲むように薦めた。
すると、奈斗やオレの、肩や腕や足にあった深い傷が跡形もなくなっていた。
「綾里家に伝わる秘伝の薬です。」
「スゲー。」
「…蓮太郎…ありがとうな。
そんな…ケガをしてまで…俺のこと守ってくれて…」
「お礼を言うのは俺のほうだって。
奈斗のソードがなけりゃ、あのスカイドラゴンは倒せなかったさ。」
「…幼学部の頃、蓮太郎が教えてくれたんだろ?
スカイドラゴンの弱点は翼だ、って。」
「そうだったっけ?笑」
その後、オレたちは奈斗がなぜこんなに変わったのかを聞いた。
「……教えてくれ。なんでお前はそんなに変わっちゃったのか、その理由を。」
オレがそう問いかけると、奈斗はゆっくりと話し出した。
「10年前、オレが学級裁判で有罪になった日の一週間後かな。
母さんが心臓の病院で亡くなったんだ。その後、オレは親戚のおばさんの家に預けられたんだけど、その人に毎日のように暴力振るわれてさ。
それでだんだんオレまで人を憎むようになって、ちょっとしたことでも周りに当たって……
オレはだんだん変わっていったんだ。
父さんも多額の借金を残して家を出て行ったから、裁判で有罪になったついでにオレも学校を辞めたってワケ。」
「……奈斗、ごめんな。」
「なんでお前が謝るんだよ!
謝るべきなのはこっちのほうなのに…」
「ん?思い返してみれば,学級裁判の前後から様子おかしかったからな。お前がそんな状況なのに気付かなかったオレらも悪いだろ。でもまあ,お互い様だな。相談しなかったお前も悪いし。」
「…ごめん。」
「サンキューな。ツラいことなのに…話してくれて。」
「別にお礼言われるほどのことじゃないって。どうせ更生のときに話さなきゃいけないことだし。」
「ああ。まあな。
そうだ!
お前らが更正したらさ、
グループでも結成しようぜ!」
「イケるよ!結構カッコイイし。」
「じゃあやるか!
でも3人じゃなあ…」
「さっき話してたレンの弟と、オレの弟入れるから大丈夫だろ。
オレらより3歳年下だが、なんとかなるだろ。俺が良太郎くらいの年齢の時、こんなにしっかりしてなかったからな。」
そのとき、こんにちはって声が聞こえた。
「お、勇馬。
元気だったか?」
「元気だよ。
お兄ちゃんこそ、最近全然顔見せないけど、大丈夫だったの?」
「ああ。
あ…そうだ。
俺と、このお兄ちゃんと、良太郎くんと…アイドルグループとか組めたらいいなって話してたんだけど…どうかな?」
「え?
あ…ホントに…俺でいいの?
ホントいうと、良太郎くんがアイドルだから憧れてたんだ!!
そういえば、外に男の人が2人来てるよ?」
「多分…お兄ちゃん達に用事だろう。
半年くらい経たないと帰ってこれないけど、それまで待っててな?」
「うん!!」
家の玄関に向かいながら、奈斗が話しかけてくる。
「帳 勇馬。(とばりゆうま)俺の弟。
…ところで…俺たち、アメリカで何するの?」
「ん?
更生のためのカウンセリング。」
外に出ると…
村西さんと遠藤さんが。
「ご苦労様、蓮太郎。」
「よく…頑張ったな。」
「いえ…
あ…俺…期末テスト終わった日にそっち行きますから。
7月22日に…幼なじみ連れて。」
「おう。
…じゃあ…俺たちはこいつらを空港に向かわせるから。」
それだけ言うと、村西さんと遠藤さんは奈斗と将輝をヘリに乗せ、飛び立った。
おばあさんの家に戻ると、何か浮かない顔をしている皆が。
「どぉしたの?」
「あ…あの…ね?
私…好き…なの…
奈斗のこと…」
突然の…あみちゃんのカミングアウトにビックリしたけど…
要は、会ってそのことを伝える勇気がないらしい。
「行けばいいじゃん。
あみに支えられてやっとのことで奈斗が立っているとき、まんざらでも無さそうだったよ?
それに…嫌なら普通、支えてもらわないはずでしょ……ね?」
「だ…だけど…行っても…間に合わなかったら嫌だし…」
ふと、頭の中にある考えがよぎった。
小さい頃、実家のガレージに車だけではなく、ヘリがあった。
なぜここにヘリがあるのか…
あのときは…教えてもらえなかった。
「蓮太郎ぼっちゃんには…まだ早いことです。」
そう言われた。
皆が揃った輪から一旦抜けて、おもむろに電話をかけた。
「まさか…こんな早くに、宝月財閥の権力、使うことになるとはな…」
誰にも聞こえない声で…そう呟いてから。
『蓮太郎様…でございますか。
…しばらくお顔を拝見しない間に…随分ご立派になられたようで。』
「ああ…ありがとう。
…で、早速だが、今、俺のいる場所にヘリよこせるか?」
『はい。
そのようなことなど…朝飯前でございます。』
「それと、N・Y行きの飛行機の手配、頼むぞ?」
『…了解しました。
3分ほど…お時間を頂戴します。』
「では、また後ほど。
失礼致します。」
電話は切れた。
と同時に、ヘリの着陸音が。
〈ハナside〉
あみ…まだ…好きだったんだね…
奈斗くんのこと…
ってかてか!!
早く行かないと、奈斗くんたちがN・Y行っちゃうよ?
そんなことを思っていると、レンがおもむろに電話をし始めた。
こんなときにどこの誰と会話してるのよ…
バカ…
だけど、聞こえるのはヘリとか手配って単語。
はい?
そして…レンが電話を終えたと同時に、ヘリの着陸音が。
まさか…ここに?
そっか!!
レン…財閥の後継者…
なんだっけ(汗)
皆でヘリに乗り込む。
レンのおばあさんは…1人で大丈夫かな…
不安なので…家政婦さんをよこしたらしいけど…
簡単に人を動かせることがすごいよ
…だって、財閥の後継者って知ったの…ついさっき…
ヘリから降りて、空港に。
私たちは、外待ち。
行くのは、レンとあみだけ。
数十分後。
2人が帰ってきた。
あみなんか…泣いてたし。
結ばれたのかな。
きっと…結ばれただろう。
だって…時々見せる笑顔がすごく可愛らしいんだもん。
ふいに、レンが皆に尋ねる。
「おばあさんから連絡があって、『皆を空港近くのホテルに泊めてあげたら?』
って言うんだけど、皆、賛成?
ホテルに?
だって…そんな…予約とかしてないのに大丈夫なの?」
「ご心配をお掛けしないよう、事前にお着替えと、宿泊なさるための許可を頂いてきました。」
皆でヘリに乗って、空港から程近いところにあるホテルにチェックインした。
〈あみside〉
皆を外に残して、私と蓮太郎くんだけ、奈斗たちに会いにいく。
奈斗は、私たちを見つけると、スーツケースと搭乗券を将輝に預けて、こっちに歩いてきた。
「来るの早くない?(笑)
こんな早いとは思わなかったわ。」
「宝月財閥なめんなっつうの。」
「そうだった(笑)。」
うわ…
奈斗の笑顔、何だか、久々に見たかも…///
やっぱカッコイイな…
私の視線に気付いた奈斗が、口角を上げながら問いかける。
「なーに俺に見とれてんの。」
「み…みとれてないしっ!!」
ふわ…
「相変わらず…素直じゃないやつ。
図星なくせに。」
「見とれてましたけどっ?」
「やっぱり(笑)
俺、あみのそおいうのも、好きなんだけどな?」
「はい?」
何かサラリと、大事なことを言われた気がして、思わず聞き返した。
「だーかーらぁー、こぉいうこと!!」
ちゅ。
いきなり、唇を塞がれた。
「俺…好きだ。あみのこと…
幼学部のときからずっと。
愛のない行為とか…ヒドイことしちゃったけどさ…こんな俺でも…好きでいてくれる?」
それを聞いて、私は奈斗を抱きしめ返した。
「もちろん…だよ?」
さっきより少しだけ長めにキスを交わした。
「待ってるからっ…
帰ってくるまで…」
「わかってる。
寂しくなったら、電話しろよ?」
奈斗はそう言って、ひらひらと手を振りながら手荷物検査やらに向かった。
私たちは、空港近くのホテルに宿泊するらしく、またヘリに乗り込んで、そこに向かった。
「蓮太郎様の…お友達の方ですね?
どうぞ、お通り下さい。
お部屋は、22階となっております。」
「に…じゅうっ…」
「スイートルームだからね。」
サラっとその言葉を口にした蓮太郎くんに、またもや口をパクパクさせた。
「さ、
あみちゃんはこっちかな。女子と男子で分かれてるから。」
「ありがとう。」
それだけ言って、部屋に入っていった蓮太郎くん。
レディーファースト的なこと出来てるのは、やっぱり財閥の後継者さんだから…なのかな?」
「おっそいよ~あみ。」
「ホントだよ~。
皆、あみのノロケ話聞きたがってるんだから…」
「ちょっ…ノロケって…///まだ1回もデートとかしてなry…」
「空港ロビーでどうだったか、って話。」
「ここじゃ話しにくいなら、場所変えよ?
露天風呂いこ?
スタッフさんに聞いたんだけど、今の時間は人いなくて貸切状態だって♪」
わかったよ…
どうせなら…
リラックスしながら話したいし。
「早く行こうよ~」
由紀はよっぽど話が聞きたいのか、皆を急かす。
「はいはい。」
男子の皆さんも露天風呂行ってくるっていうから、ロビーで落ち合って、皆で夕食会場に向かうことになった。
〈ハナside〉
あみ…付き合ったんだ?
奈斗と。
良かったよホントに…
お風呂から上がると、まだ男子たちは来ていなかったので、ロビーにあったプリクラでプリを撮った。
落書きに夢中になりすぎて、気付いたときには10分も集合時間をオーバーしていた。
「遅いよ~(笑)」
「どうせ、プリクラでも撮ってたんだろ?」
「プリクラ…ですか?」
「そ。
さっきまで春美がいた機械だよ。」
「ああ。
まだ言ってなかったか。
春美、筋金入りの世間知らずだから、いろいろ教えてやってくれな? 」
「うん。」
何か、この2人…楽しそうだなぁ…
お嬢様と執事、
みたいな感じ?笑
夕食を食べ終えると、スタッフさんが声をかけてきた。
8人以上の男女混合グループで泊まりにくると、2時間無料でカラオケが出来るみたい。
さっそく、皆でカラオケルームに向かった。
2時間が経って、ほとんどレンと良太郎くんと勇馬くんが歌った某気象系グループの曲を…
聴いているだけだった気が…する…汗
「良太郎くんと勇馬くんはいいとして、何でレンがアイドルなワケ?」
そう聞いてみると、レンが一回アメリカから一時帰国してきた5日間の間にオーディションとかダンスレッスンとかやったんだって。彼みたいな…アイドルの卵なのにほとんど歌番組に出て先輩たちのバックで歌わない事例は初めてらしい。
カラオケが終わって、各自で自分たちの部屋に戻った。
レン…私のこと…前みたく幼なじみって…思ってくれてるのかなって…
ちょっと不安になった。
アイドルのことも…メイちゃんとかいう…好きな子には…話してるのかなとか…
思ってしまう。
「直接…蓮太郎くんに聞いてみれば?」
「由紀…」
由紀は、変わってないね。
相変わらず…カウンセラーっていうか…
エスパーみたい。
「そうだよ。
頑張って、行っておいで?もう、日付変わっちゃってるし。」
寝ているナナと真宵ちゃんとはみちゃんを起こさないように、あみが小声で励ましてくれた。
皆でトランプをやってから寝たから、もう0時をまわっていた。
勇気を出して、隣の男性陣の部屋へ。
修学旅行みたいだな…
コンコン…
2回ほどノックして、ドアの隙間から顔を覗かせたのは、良太郎くん。
「あのさ、レン…いる?」
「ハナさんだよ、蓮兄さん。」
「……ん。
すぐ行く。」
廊下の曲がり角に立っていた私を2分も立たないうちに見つけて声をかけてきた。
「何?
どしたの?
…涙目だけど。」
「ちょっと…不安になっちゃって…
彼女さんと私…
どっちが大事なのかなって…
私には自分がアイドルタレントのことなんか話してないのに…彼女さんには話したのかな…とか…」
「ハナ、バカじゃねぇの? 彼女がいようと、幼なじみは大事にしますよ。
それに、今は…まだ、彼女いないし。
メイもハナもどっちも大事。
どっちかなんて、選べないからね?」
「何か…それ聞いて…安心したわ。
お休み。」
「お休み。」
レンは私の額に軽くキスして、部屋に戻った。
私も部屋に戻ると、あみも由紀も寝ていたので、私も眠りについた。
〈レンside〉
コンコン…
12時を少し過ぎた頃、部屋に響いたドアをノックする音。
誰だ?
とか思っていたら、応対した良太郎がオレのほうを振り返って、言った。
「ハナさんだよ。
蓮兄さん。」
マジかよ。
どうしたんだ?
こんな時間に…
部屋を出ると、廊下の柱に力なく寄りかかるハナが。
「どしたの?
涙目だけど。」
「なんか…不安になっちゃって…
アイドルタレント活動のこと…
彼女さんには話して私には話してないのかなって…」
何?
そんなこと思ってたの?
可愛すぎるでしょ。
「何言ってるの。
オレにとっては…ハナも大事だよ。
しかも…今はまだ…彼女いないし。」
まあ、ハナやメイの次に何が大事か?
そう聞かれたら、仕事って答えるね。
その次に財閥。
「なんか…それ聞いて安心したわ。」
「それなら良かった。
早く寝ろよ?お休み。」
「お休み。」
ハナはそう言って、自分の部屋に戻って行った。




