FBI本部
〈レンside〉
パチ…
目を開けると、まだメイが襲いたくなるくらい可愛い顔をして寝ていた。
オレは、そっと布団を掛け直してやって、今度こそ起こさないようにそっとドアを開けて、着替えを持ってから外に出た。
パタン…
脱衣所で着替えを済ませると、リビングに向かった。
只今の時刻は、7時30分。…9時30分には本部に行っていたいから…今から朝飯作れば、ちょうどいいな。
そう思って、ご飯を炊く間、手際よくお味噌汁の用意をする。
…なんか物足りないなぁ…
すると、バタバタと階段を駆け下りてくる音が。
「蓮太郎っ!」
「お。
おはよ。メイ。」
「『おはよ』じゃないでしょ!?
勝手にいなくなって~。」
そぉ、半ばキレ気味に言うメイを横目で見ると、キャミソールにショートパンツ。
…あ…あの…上着は?
ってか、朝から誘うような格好すんなよ…///
「何?
…オレがどっか行っちゃう!とか思ったの?
…可愛い。
ってか…目のやり場に困るから、着替えてくれば?」
「うん。言われなくてもそうする。
…べ…べつに…さっきのは…蓮太郎のこと心配して言ったんじゃないからね?」
それだけを言って、リビングを後にしたメイ。
…相変わらず、素直じゃないやつ。
素直になれば…今よりもっと可愛いのに。
ホントは…オレのこと…心配してくれてたんだろ?
さっきの言葉はゼッタイ…照れ隠しのはず。
じゃなかったら、半ギレで「おはよ、じゃないでしょ!?」
なんて言えるはずないしな。
…好きな女の考えてることくらい、分かるつもりだよ?
魚の切り身をグリルに入れながら、そんなことを思う。
だけど…オレは、メイの全てを知っているわけじゃなかった。
このときは、メイの全てを知っているんだと…勝手に思い込んでいた。
オレは、メイのこと…全然知らなかったんだ。
…グリルを開けると、焼き魚の香ばしい匂いが。
…ご飯もお味噌汁も焼き魚も…全ての配膳を終えた頃に、パタパタとスリッパの音が遠くから聞こえてきた。
…カチャ…
ゆっくりとドアが開くと、黒Tシャツの上にサロペットを着て、パーカーを羽織ったメイがそこにいた。
〈メイside〉
目を半分開いて、枕元にある時計を見ると、7時45分だった。
…ふと横を見てみると、布団で寝ていたはずの蓮太郎の姿はなくて…
え…?
どっか行っちゃった?
…まさか…帰っちゃったとか…ないよね?
…嫌だよ…勝手にいなくなったりしちゃ…
寂しいもん…
それに…ママがいなくなっちゃったときのこと…思い出しちゃうでしょ?
だけど…多分いる…よね?
…部屋の外に出てみると、トントンとリズミカルな包丁の音が聞こえた。
この包丁の音…まさか!?
慌てて階段を駆け下りる。
「蓮太郎っ!」
蓮太郎は、冷蔵庫とにらめっこしていた。
しかも…ちゃっかり着替えてるし…
白Tシャツにデニムベストにカーキ色のズボン。
いつも制服っぽい格好して、白衣着てる蓮太郎ばっか見ていたから、余計にシンセンで…カッコ良く見える…
しかも襟の開きが広いから、鎖骨が見えてかなりセクシー…///
「お。
おはよ、メイ。」
当の本人は、かなり軽いノリで「おはよ」って言ってくるし…
あのねぇ…
私がどれだけ不安になったか…
寂しくなったか…
蓮太郎…知らないでしょ!?
「『おはよ、』じゃないでしょ?
勝手にいなくなって~。」
「何?オレがどっか行っちゃう!とか思ったの?
…可愛い。」
かっ…かわっ…!?
『目のやり場に困る』と言われて自分を見てみると、キャミとショーパンしか着ていなかった。
…ケープは、蓮太郎がいない!
って思って慌てて飛び起きたときに、どっか放り投げられちゃったみたい。
脱げかかっていたしね。
「うん。言われなくてもそうする。
べ…別にさっきのは、蓮太郎を心配して言ったんじゃないからね?」
照れ隠しと当の本人にはバレる台詞を言って、早足で自分の部屋に戻った。
…はぁ。
…また、心にもないこと言っちゃったよ……
素直じゃないのは毎度のことだけど、蓮太郎の前だと特にそうだ。
…心配してないとか嘘だよ!?
ホントは…心配で仕方なかった。
…だけど、「心配だった」なんて言ったら…蓮太郎に私の気持ちがバレてしまいそうで…怖かったんだ。
…少しずつ…素直に…なってみようかな…。
それにしても服…何着よう?
あまり露出多いと蓮太郎、怒るかもだし…ね?
鎖骨がチラ見えする黒Tシャツに、ショーパンタイプのサロペットを着て、フードに耳のついたパーカーを羽織る。
長袖だけど、薄手だから大丈夫っ♪
…着替えを終えて、スリッパの音を響かせながら再び階段を下り、リビングへと足を踏み入れる。
似合わないとか言って…笑われたらイヤだなぁ…
だから、ゆっくりゆっくり、ドアを開けた。
テーブルの上には、すでに朝ご飯の…カンペキすぎる和食が並んでいた。
和食なんて食べるの、かなり久しぶりかも♪
「美味しそ~」
「美味しいよっ♪
蓮太郎っ!」
「マジで?
良かった♪」
表情が、一瞬で明るくなる。
「あ…あのさ…似合ってる…よ?
その格好…」
「ホントに?
嬉しいっ♪
…蓮太郎、何も言ってくれなかったから…似合ってるか不安だったんだよね…」
「そんなことないって。
…可愛いよ?すごく…」
「ありがとうっ!」
ご飯を食べ終えて、部屋でゆっくりメイクをしていると、蓮太郎が外から声を掛けてきた。
「メイ?もう用意出来てる?
本部行くよ?」
「今行くっ」
私はそう返事を返すと、部屋を出て、FBI本部に向かった。
〈レンside〉
メイ…すげー可愛い。
サロペットとか着るイメージなかったけど、こぉいう格好も…すごく似合う。
見とれすぎて、危うく持っていたお箸を落としそうになった。
ショーパンにナマ脚って…ちょっと理性持たないかもだけど…さ。
まぁ…女のコしか着られないからね?
それにしても、痛々しいくらいにあったアザも大分消えてきているみたいで良かった。
2人でテーブルを挟んで、朝食を食べる。
昨日はフレンチだとかイタリアンだとか作っていたから、今日は和食にしてみた。
和食を食べるのが相当久しぶりらしかったメイは、美味しいって言って喜んで食べてくれた。
ただ、食べている最中、自分の服とオレとをチラ見しながら、不安そうな顔をするメイが気になった。
分かるよ?
その服装…似合ってるのか…不安なんだろ?
似合ってるよ…すごく…
「あ…あのさ…似合ってる…よ?その格好…」
メイ、大体ワンピース姿が多いけど、ショーパンも似合うなぁ。
素直に嬉しいってことと、似合ってるか不安だったことを口にした。
あれ?
メイ…何か素直だな…
服装が違うのと、素直なのとで、余計に可愛い。
「そんなことないって。
可愛いよ?すごく。」
言った後、オレの身体が熱くなったのがわかった。
ありがとうって言って笑顔を見せるメイを見て、オレも嬉しくなった。
やっぱり、メイは笑ってたほうが可愛いって。
朝飯を食べ終えてまったりしていたら時間だったので、メイの部屋の外から呼びかけた。
「メイ?用意出来てる?
もう本部行くよ?」
そぉ声をかけると、今行くと言う声とともにドアが開いて、現れたメイは、薄く化粧をしていて、ブレスレットと香水を付けていた。
「じゃ、行くか。」
オレはそぉ言って、メイを連れて家を出ると、2人でしばらくFBI本部まで歩いた。
入り口で指紋認証と静脈認証をすり抜け、FBI本部に入った。
「お。
よく来たな。
メイ、蓮太郎。
…皆、もう会議室にいるぞ。」
村西さんは、オレたちを会議室に案内してくれた。
…FBI本部のこの部屋は、完全防音になっていて、パソコンが一台、置いてある。
エージェントルームの個室が、一流会社の会議室級に広くなったイメージだ。
オレとメイと村西さんは、中央の空いている席に座った。
「大体のことは…翔さんから聞いてます。
レンも…メイさんも…ツラかったでしょうね…」
同僚の皆が、オレとメイに口々に言葉をかける。
「平気…?
…話せる…?
メイ…」
「大丈夫よ…」
メイはそぉ言うと、一呼吸おいて、全ての事情を話し始めた。
途中…何度も涙を堪えていたが、最後のほうには泣いていた。
そんな彼女の手を握ってやりながら、オレも静かに怒りを堪え、話を聞いていた。
〈メイside〉
FBI本部に着いて、村西さんに皆がいるという会議室に案内された。
その場所は、完全防音になっている。
…重要な話がされることが多いから、それが外に聞こえないようにするためかな?
「メイさん…ツラかったでしょう…」
「途中で泣いてしまったとしても…話が途切れ途切れになってしまっても…ちゃんとボクらが聞きますからね?」
そぉ言ってくれる蓮太郎の同僚たち。
……浅川 将輝。
暴力でしか私を縛ることが出来ない、哀れな男。
私は、今までにソイツから受けた暴行について、ゆっくりとだけど…話していった。
「私が…半年くらい前から付き合っている男なんだけどね、ソイツ。
…今は気持ちなんかさらさらないから安心して?
…でも、今回のこと以外にも…いろいろされたわ。
…私、検事だし…忙しいから…2人で会うなんて…月に2度、出来るか出来ないかなワケ。
その待ち合わせに仕事で遅れたときも、有無を言わさず『携帯見せろ』って言われて…着信履歴やメールを入念にチェックされて…
しかもね…1人でいる私を心配して、村西さんが家に来て帰った後になぜかアイツが来て…『男といただろ』って言うなり殴ってきて…
何でかって思ったら…アイツ、私の家に隠しカメラと盗聴機仕掛けてて…」
アイツのことを話している最中に泣くまいと思っていたけど…何か…泣けてきた。
「しかもね…カリフォルニアのディズニーランド行ってホテル泊まった帰りに……グスッ…気付いたらね…家のベッドに寝かされてたのよっ…うぇっ…
起きたら身体中痛くて…鏡見たら今回みたく…アザ出来てたっ…」
話終わってからふと見ると、「もっと頼っていいよ」と言うかのように、蓮太郎がずっと私の手を握ってくれていた。
何か…村西さんがもどかしそうにマウスをクリックした後、焦ったように尋ねてくる。
「メイ…頼む…ツラい記憶だと思うが…思い出してくれっ…
睡眠薬とか…飲まされたり…したかっ?」
何とか…微かな記憶を辿りながら答えた。
「ふぇっ…確か…意識失う前…一瞬…だけど…うぅっ…
チーズみたいな…匂いがした…気がっ…」
上手く喋れていたかな?
…涙で声が詰まって、全然言葉になっていなかったんじゃ…?
「蓮太郎…お前…やるな!さすがだ…これが出てくるデータベースなんてめったにないぞ!?
ガンマヒドロキシ酪酸、通称GHB…速効性の強さにより、強姦目的に多様される代物だ…」
村西さんの若干興奮気味なその声に、会議室からわぁっと歓声が上がった。
「よし…逮捕状出せ!
国際指名手配のな。」
「はいっ!!」
良かった…私を散々苦しめた犯人…見つかるんだ…
蓮太郎が、私の肩を抱いてニコッと微笑む。
「…ありがとう。……蓮太郎…」
「他ならぬメイのためだからな…ゼッタイ、将輝って男と、もう1人のヤツも…逮捕してくるから。」
「うん。
…待ってるからね?」
…その後、蓮太郎は私にその男の写真を貸してくれって言ってきたから、渡してあげると、一仕事してくると言って会議室を出た。
〈ハナside〉
私とミツは、ここ数日、エージェントルームに泊まり込んで、あることについて調べていた。
それは、真宵ちゃんについて。
…"綾里"っていう名字、どこかで見たことあるなぁって思ったら、4年くらい前に霊媒について調べたときに見たことあったんだ。
…"綾里"家の女の人は、代々、霊力を宿していて、死者の魂を自分に乗り移らせることができる。
…それが、霊媒。
その際、服装と髪型だけは霊媒者と同じだけど、体型や顔は、死者と同じになるみたい。
…まぁ、生まれながらにして霊力を強く受け継ぐ人とそうでない人がいるみたいだけど。
いつか…真宵ちゃんをここに呼んで、話を聞けたらいなぁ。
……と思っていたところに、部屋のドアがノックされて、伊達さんの声がした。
「…ハナ、ミツ。
…レンから電話だぞ。」
レンから?
…何か…あったのかな?
「レン!!
久しぶりっ!…元気?」
『あぁ…』
「んで?
…何かあったの?」
「調べものが一段落したらでいいからさ、今からFAXで写真を送る男について…ちょっと…調べてほしいんだ。
…そいつが、メイを手籠めにした男のうちの1人だから。
そいつともう1人の男との繋がりも知りたいし。』
「わかった。
…ちゃんと調べておくからね?」
私にとってはこんなの朝飯前。
私の特殊能力…「オーラ瞬間記憶能力」。
人は必ず、その人固有のオーラを持っている。
それを、実際にその人に会うまでもなく、
写真や画像からも感じ取れる。
それを覚えておけば、実際に会ったとき、役に立つ。オーラの違いにはね?
性格や人格、心境の変化やら…いろいろなものがにじみ出るから。
…カタカタ…
私がそぉ言ったとき、FAXが音を立てて1枚の紙を吐き出した。
この男ね。
…レンの大事な子をひどい目に遭わせたのは。
ミツに電話を代わらせてあげて、ふと思った。
レン…絶対何かあったわ。
…声のトーンがいつもより沈んでいるから。
…しかもレンの場合、とにかく何も言わずに溜め込むからね。
私もミツも真宵ちゃんも、愛実も友佳も麻紀も一成くんも真くんもみーんな、レンの味方なんだから、相談してくれていいんだからねっ?
もう、今度お昼休みに皆で集まってレンのことについて会議したいくらいだよ。
…皆にも一応この人のこと聞いてみたいし。
『ありがとな、ハナ。
…また、連絡する。』
それだけ言って、レンは電話を切った。
明日、エージェントルームの会議でこのこと、言っておかなきゃな。
〈ミツside〉
伊達さんが、レンからの電話だって言って、受話器をハナに渡してきた。
……そこ、フツー、オレに渡すもんじゃね?
しばらくハナがレンと話した後、代わったげる♪って可愛く言ってオレにそれを手渡す。
…可愛いから許してやるけど…今度…覚えておけよ!?
「レン?元気か?」
ようやくレンはハナを手籠めにされたときのオレの気持ちが分かって、今、好きな女を自分のものにしたい欲と闘っているらしい。
「お前は、優しすぎなんだよ…オレを見習え、オレを!」
いざとなったらSになるとか言ってるけど…そんな姿、想像できないって…
でも…ブチ切れたときはドSになるけどな…(笑)
まぁ、レンによるとその子、ハナに似て素直じゃないらしいじゃん?
今朝はやけに素直だったみたいだけどね…
そういうヤツには、ドSになれば大丈夫だって。
「いいんじゃない?
ってかお前…ハナとT.A.B.O.O犯したくせに何を今更迷ってんだよ。」
「大事に…してやりたいじゃん?
あんなことがあって少なからず怖いかもだし。」
そりゃ…そうだけどな。
そう思ったとき、FAXが1枚の紙を吐き出す。
…コイツが…レンの大事な女を…?
いかにもナルシストって感じだな…
髪は茶髪で、制服は着崩して…耳にはピアスをしている。
「コイツのことに関しては、オレたちがきっちり調べておくから、落ち着いたら何があったのか全て話せよ?
今レンがかなり落ち込んでいること、オレとハナにはバレバレなんだからな?」
それだけを言うと、レンの返事を聞いてから再びハナに代わった。
レンside〉
オレは、何が何でもメイを深く傷付けた男を捕まえると強く心に誓った。
…こぉいうときのためのエージェントルームでしょ!ってことで、メイにその男の写真をもらって、エージェントルームに電話をした。
最初に電話に出たのは伊達さんで、ハナとミツは個室にいるらしい。
…このやりとりの後で思い出したが、ハナたちは調べることがあるので数日間はエージェントルームに泊まるって言っていたっけ。
『レン!久しぶりっ!元気?」
気分が落ち込んでいるときにハナのテンションの高い声を聞くと、何だか元気が出てくる。
「調べることが済んだらでいいからさ、今から写真送る男について、調べてくれる?
…ソイツだから。メイを手籠めにしたヤツ。」
ハナは、分かったと言うとミツに電話を代わってくれた。
「オレは何とか元気だから安心しろ。
…でさ、オレ…ようやく分かったわ。
ハナが手籠めにされた後…ハナを抱いた、お前の気持ち。
…抱きたく…なるな。
今はギリギリなとこでブレーキかけてるけど…
自分でもいつ理性飛ぶか分かんないから…」
ってミツに言ったら…優しすぎるからオレを見習えとか…ハナとT.A.B.O.O犯したことあるくせに何迷ってんだって…
要は……抱けってこと!!?
いや…でもでも…抱くなんて…そんなっ…
「大事に…してやりたいじゃん?
あんなことがあった後で…少なからず怖いかもだし…」
ミツは、落ち着いたら全部話せって言ってハナに代わった。
オレは、ハナにまた連絡すると言って、電話を切った。




