新たな関係
ナナside〉
シャワーを浴び終えてキャビンに戻る皆。
「あ!さっき矢張くん見かけたよ!待ってなよ!」
そう言って、みんな足早にキャビンに戻っていく。
でも確かに…
気になってた。
確かに信ちゃんの声で
「好きだよ」
って…
あのとき聞こえた気がした。
信ちゃんと話して、確かめたかった。
信ちゃんかと思ったら、先輩だった。
今はちょっとだけ…
顔を見たくない。
「ごめんね菜々美ちゃん。思わせ振りな態度とって…君を傷付けて。
オレはサイテーな人間だ。彼女と最近上手くいってないから…
君の告白を受け入れてしまおうかとも一度は考えたんだ。
だけどそんなことをしたらオレは彼女も菜々美ちゃんも深く傷つけるから…
それだけは避けたかった。
だから…普通に潔く菜々美ちゃんの告白を断ったんだ。
…菜々美ちゃんが嫌いなワケじゃないってことだけは覚えておいて?」
やっぱり先輩は変わってない。
最後まで優しい人だ。
「良かったです。
先輩のこと…好きになって。
彼女さんと何かあったら…相談してきていいですからね?
先輩の笑顔がずっと大好きですから。」
「ありがとう。
…矢張くん…だっけ?
あの男ならきっと、オレなんかより菜々美ちゃんを笑顔にしてあげられるはずだよ。
上手くいくこと…願ってるから。」
「ありがとうございます。」
先輩は私の頭にポンと手を置いて去っていった。
私が一番好きだった仕草。
卒業式のときまで…
先輩には会わないようにしようかな。
多分、会えない。
まだ…
ほんの少しだけ好きだもの。
また…
自分の気持ちがわかんなくなってきた。
ヤバ…
また泣きそう…
もう、先輩のことでは泣かないって決めたのに。
「ナナちゃん?
どうしたの?」
先輩じゃない。
今度こそ…
信ちゃんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっぱり信ちゃんの声だ。
「さっき、先輩に会った。私、先輩を好きになって良かった。最後まで優しい先輩だったよ。」
信ちゃんは、きっと気付いてる。
私が泣きそうになっていること。
「そっか。」
そう言って頭を撫でてくれる。
「信ちゃんは?
いるの?
その…好きな人…とか。」
言っちゃったよ。
だって、気になるんだもん。
あの言葉…誰に言ったのか。
私は寝る寸前だったから微かにしか聞こえなかったけどちゃんと
「好きだよ」
って言ってたし…
「いるけど…教えない。
だって…さっき、告白まがいのことしたからなあ。」
え?
ってことは…
あの言葉…
私に言ってたの?
身体が熱い。
ふと見ると、信ちゃんがいつになく真剣な目をしてる。
「ナナちゃん…
じゃない、菜々美?
好きだよ。」
え…
信ちゃんが好きな人って…
私…
ってことだよね?
「で…でも信ちゃん。
私、まだ先輩にほんの少しだけ未練あるんだよ?
それでも…いいの?」
「それでもいい。
先輩の分までナナちゃんを幸せにするから。」
「信二。
ありがとう。
よろしくね。」
名前で呼んでみる。
かなり違和感がある(笑)。
今まで通り呼び合うことにして、もう遅いし寒くなってきたのでキャビンに戻ることにした。
「お休み。」
って…
照れながら返した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キャビンに戻ると、すでに布団が敷いてあった。
なるほど、すでにガールズトークの準備はバッチリらしい。
「すぐわかるよ。その様子じゃ、矢張くんと付き合うことになったんでしょ?」
さすがは由紀。
よくわかってる。
「そうだよ。
信ちゃんと…
付き合うことになった。」
「ホント言うと、信ちゃんのことも気にはなってたから…」
「ホラ。
だから言ったでしょ?
誰が何と言おうと好きなものは好きなんだから。
ね?あみ。」
な…
何か…
場の空気が一気に深刻になった気がする…
「あみはね、まだ好きなの。帳奈斗のこと。」
「えっ…」
嘘…でしょ?
あみが!?
だって、自分だってあの男が指示したいじめを実行して学校を退学にされたのに…
「ハナ…
ホントにごめんね?
ハナがあの日4人の男に手籠めにされたあの日のことは…全部私のせいだから。」
あのことが起こる数ヶ月前、あみはアイツに
「なあ、女に精神的にも肉体的にも苦痛を与える方法…知ってるか?
…手籠めにすんだよ。」
って…
笑いながら言われたらしい。
「皆にこのこと話して必死に5人で止めたけど…奈斗は逆に脅してきた。
『オレに逆らうと同じ目に遭わせるぞ?』
って。」
だけどあみはたった一人で引き止めにいったけど、結局心身共にボロボロになって帰ってきた。
「…あみ…
何で!?
そんなことする必要なかったのにっ!!」
「信じられなかったの。
奈斗、昔はすごい優しかったのに…。
その彼がこんなこと言うなんて思いもしなかった。」
「相当重症だよ。
「手籠めにされてるとはわかってたけど、ちょっとだけ嬉しかったとか言ってるんだもん。」
呆れ顔で言う理香。
話の続きは明日の夜にして、今日はもう寝ることにした。
なんか皆悩んでるのに、
私だけ幸せでいいのかなって思って…
なかなか眠れずにいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<ハナside>
キャンプ2日目。
メインイベントが目白押しだ。
まずは
「サバイバルオリエンテーション」。
通称「サバオリ」。
この広いキャンプ場の敷地内に一人ずついる先生を捜すことから始め、見つかったらゲームをして、勝てばポイントゲット。
負ければ罰ゲーム。
計10個のチェックポイントのうち、8個回れた。
全勝ではないけど。
午後は班別対抗ゲーム大会。
これとサバオリでのポイント数を合計して、勝った班には賞品が、負けた班には罰として夕食に一品、変な物が加えられるのだ。
負けた私とミツとナナと美麗と悠那。
夕食のメニューであるハヤシライスにはナタデココが入れられた。
意外に美味しかったから良かったが。
この後はいよいよキャンプファイヤー。
私たちのスタンツ、
「森のくまさん」
ならぬ
「森の大ちゃん」
も成功した。
先生たちのスタンツ
「飛行機」は、
かなり体を張っていた。
一通り終わった後はファイヤーの炎を囲んで
「マイムマイム」を踊った。
就寝の時間。
あみの腹部にあざがあるのを発見。
「『あんなサイテーな奴が好きなの?』
とか言われても構わない。好きなものは好きだもん。今どこで何してるのかはわかんないけど、いつかまた優しかった頃の奈斗に戻ってくれるって…信じてるから。」
あみ…
なんか一晩で強くなった気がする。
キャンプ最終日。
最後の炊事を精一杯やり、場内清掃と退村式を終え、塾に戻って反省会という名の2次会をした。
長いようで短かった夏休みは終わり、2学期。
2回目の体育祭は私たちのクラスが学年優勝した。
合唱コンクールでも最優秀賞、さらにレク大会でも優勝できた。
あみたちのクラスも学年準優勝だったり、優勝を獲ったりとすごい活躍だった。
そして私たちは、中学最後の春を迎えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
貼り出されているクラス替えの紙を見ると、なんと…
9人全員が同じクラスだった。
去年の教育相談で同じクラスにしてほしいと懇願した甲斐があった。
そして担任は、涙もろいけどまっすぐで、生徒一人一人のコトをしっかり見てくれる、初担任の熱血新米教師、富岡先生。
いいクラスになりそうだ。
中3の目玉行事、京都への修学旅行。
1日目はクラス・2日目は班で名所をいろいろ回って、旅館の夜ご飯を思いきり堪能した。
矢張くんの鍋奉行がテキトーすぎるために下がったテンションがデザートのクレープで上がった。
修学旅行後の期末テストを何とか乗り切り、中学最後の夏休み。
今年のサマーキャンプさ、バスを貸しきって車内でカラオケ大会をやった。
清川自然の村に向かう途中で雷が鳴って怖かったけどね。(笑)
そのおかげで去年できなかった夜のバトル大会ができた。
先生たちがメインでゲームをやっていたけど、生徒も参加できて楽しかった。
2日目にあった2回目のサバオリはチェックポイントを9個回れた。
午後の班別ゲーム大会でも私たちの班は好成績で、優勝賞品のアイスをもらった。
サバオリ終了後は、去年と同じく川でハシャギまくってずぶ濡れになったため、先生からシャワーを浴びるように指示があった。
その日の夕食はカレーライス。
負けた班のあみ、由紀、理香と矢張くんのものにはキュウリが入れられた。
彼らによると、美味しかったらしい。
その後のキャンプファイヤーでは、今年は劇ではなくエアバンドをやった。
ボーカルもギターもキーボードも全てエアー。
ミツと矢張くんはギターとベース。悠那はドラム。私とナナがキーボードで、美麗がボーカル。
あみ達の班はクイズ形式の先生の物まねをやってた。
先生たちのスタンツ、「飛行機」。
なんか去年よりパワーアップしていた。
マイムマイムを踊ってファイヤーは終了。
皆がシャワーを浴び終えても、深夜になってもナナが戻って来なかった。
ちょっと心配になったが、もうあの二人も付き合って昨日で一年。
何かあるんだろうと思って特に口は出さなかった。
--------------------------------------------------------------
……ぶっちゃけ、見ちゃったんだよね。
サバオリで先生を探して森の中をさまよっているときに…
ナナと矢張くんと二人、
……キスしてた。
深夜3時頃になって戻ってきたナナ。
「信二がヒルに噛まれちゃったみたいで…」
って言ってたけど、
首筋にはくっきりと紅い痕が残ってた。
何があったかなんてすぐわかる。
なんかフェロモン出てたしね。
絶対…
矢張くんと…
寝てた。
キャンプ最終日の朝、矢張くんの足に包帯が巻かれてた。
ヒルに噛まれたことは間違いないみたい。
朝食のときもヒルがいやしないかとビクビクしてたけどね。
この2年間の思い出を胸に村を後にした。
塾に帰ってから行われた2次会。
あみが寝ながら時計の針みたく回転してて皆迷惑してたんだよ。
本人は記憶がないらしくかなりビックリしてたけど。矢張くんが2日目の夜
「ナナ」
って寝言を言ってた話がミツによって暴露され、ナナと矢張くんが付き合っていることが全員にバレて皆に冷やかされてたっけ。
夏休みが終わり、受験にスパートをかけていく時期に入った。
--------------------------------------------------------------
そんな中行われた体育祭。私のクラスは総合優勝、合唱コンクールでも優秀賞を獲れた。
話によると、富岡先生は私たちのクラスが歌う前から泣いていたらしい。
堂々と舞台に立っていた姿が印象的だったんだって。
そしていよいよ年が明け、受験の日。
私とミツは、英語教育に力を入れていて、海外帰国子女を受け入れている県立高校を選んだ。
この高校に入れば、場合によっては、アメリカでガンバっているであろう彼と3人で学生生活を送れるかもしれないって…
考えたんだ。
それを話すと私の両親も先生もあっさりと受験を勧めてくれた。
ナナと矢張くんとあみと美麗と悠那は同じ地元の高校を選んだ。
由紀と理香は、地元ではかなりレベルの高い高校。
私が志望するところよりも高い。
でも、由紀と理香なら受かるハズ。
皆受験する高校には面接の前にスピーチがある。
地元の駅に集まって皆で励まし合ってから、それぞれの会場に向かった。
スピーチで自分の思いのたけを精一杯伝えた。
…面接官がレンの話をしている時だけ身を乗り出していたのがやけに気になった。
そして1週間後。
結果発表の日。
合格したのは…
私とミツとナナ。
更に、理香と美麗と悠那。
由紀がまさか不合格だなんて信じられなかった。
結構内申高かったのに。
富岡先生も由紀と何回も面談していた。
そして…
後期入試当日。
ずーっと上手くいくように願ってた。
由紀もあみも矢張くんも手応えバッチリらしいと電話があった。
発表の日。
皆学校に行って、3人からの報告を待つ。
…皆合格したらしい。
由紀なんか泣いてたし。
先生に報告し、塾に出向いて報告してお祝いの言葉をもらった後、そのまま皆でカラオケに興じた。
-------------------------------------------------------------------------------
そして…
3月。
私たちは、中学校を卒業した。
一人一人の名前を目を赤くしながら呼ぶ先生の姿を、しっかりと目に焼き付けた。
先生たちに寄せ書きを書いてもらったアルバムは、一生の宝物。
私たち9人の写真が大きく載っていたのがかなり印象的だった。
卒業旅行でディズニーリゾートのホテルに泊まったときに聞いた話。
由紀は、
富岡先生のことが好きだった。
卒業式の日に告ったらしいけど、結果は玉砕。
好きな人がいるらしい。
皆で励ました。
由紀ならきっと…
大丈夫。




