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かへりては 身に添ふものと

 

  かへりては 身に()ふものと 知りながら

  暮れ()く年を なに慕ふ(したう)()

 

 

 ここで新古今を挟みます。


 和歌は政治的テストという側面から、秘密の手紙という多面性を経て、現代の短歌に近いかたちに姿を変えてゆきます。


 この短歌は基本的に『かえって新年になると、過ぎた年は自分の身に、年齢として重なっていくと知りながら、暮れ行く年を、どうして惜しみ慕うのでしょう』と訳されます。


 冬の歌に収録されていて、年の暮れに詠む、と端書きがあるからそうなのですが…………


 本来、かえりという初句には、新年という要素が含まれません。


 初句から副詞。


 それだけでも技巧的な歌です。ここは本来『(何か要素があってこんな気持ちだった)のに(逆の気持ちになった、または変化した要素)』という直訳が出来る部分。つまり「変化する前の気持ちが分からない」という作品なのです。


 そこをどうにか翻訳した先人たちは、結句の『どうして恋しくなるのだろう』という気持ちの逆の意味、「恋しくない要素」を探したのです。


 暮れる年を惜しむ筆者。


 だから『新年』は初句に、彗星のごとく登場することになりました。


 しかし直訳するなら『逆に、私に増えていくものと知っているのに、一年の終わりが恋しくなるなんて』というシンプルな歌です。


 確かに当時は、年始が日本人すべての誕生日。


 新年で増える年齢からは、逃げれらません。けれど「添ふ」って動詞には、他の意味もあるんです。たとえば、夫婦になるとか。

 

 

 

―――――――――――――――深読み篇

 

 

 

 新古今和歌集 巻第六 冬の歌

 年の暮に詠む 上西門じょうさいもんいん兵衛ひょうえ


  かへりては 身に()ふものと 知りながら

  暮れ()く年を なに慕ふ(したう)()



 まず筆者ですが、女性です。平安時代の後期を生きました。


 女性の短歌は、レーベルギリギリを攻めてくるので、なかなか紹介できませんが…………これは世の摂理を言っているので、仕方ありませんよね?


 年の暮に詠む。


 何故、日付けではないのでしょうか。


 平安貴族は朝起きると、その日の暦や吉凶などを確認したと言われます。日にちが分からないなんて、そんなハズがないのです。


 そこで「かえりては」が、効いてきます。


 結句の『恋しくなる』という感情の逆の気持ち、それが意図して付けられた「年の暮」という三文字に託されているのです。


 では、分解してみましょう。


 としという音には、Year(イヤー)以外の意味があります。それは万葉の頃から使われていた、し、という音。早いという意味です。


 どれくらい早いかと言うと「あっという間」。それはもう「バカ早過ぎ!」ってくらいの勢いです。


 くれは終わりという意味でそのままだから、つまるところ『早くに終わってしまう人に詠む』という、あやしげな意味が隠されていました。


 要するに、早漏の男に対してのお手紙なのです。


 年には『男のさが』なんて言い訳もあるようですが、彼女は早い男がお好きではなかった(遠い目)。


 男性の皆さま、お疲れ様です。


 それを踏まえて「身に添う」は、「身」は身体の端。添うは、付いていく、とか、一緒にいる、と取れば夫婦でしょう。


 筆者は『早い男なんて嫌だと思っていたけれど、結婚して(本当にそうだと)知ったのに、どうして恋しく思うのだろう』と、誰をフォローすれば良いのか分からない…………そんな事を言っているのです。


 結論、早い男が悪いのか。


 私からフォローさせていただくと、当時はほぼ通い婚でした。早く終わらせて別の女に行く、そんなヤツは当然、嫌われます。


 一夫多妻ですが、妻になるとある程度の財産は保証されました。心に余裕は、出来ます…………よね?


 早くても、来ないよりはマシ。


 とか、思うのでしょうか。


 そう思うと、けっこうシビアな歌ですね。年の暮って、今でも普段使うのかと思いつつ、案外「暮れは忙しい」なんて口語ではセットで使わないもの。


 年の暮、と言いたくない心情は、現代にも引き継がれているのかもしれません。


 ばか早すぎ!(笑)




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