十話 クレア、覚悟はいいかしら?
「いいえ、まだ死にたくありません母上」
と、いう訳で修行編はじまりです。
どうもこんにちは、クレアです。
と、いうわけで母上様の修行が始まりました。
なにが、と?なのでしょうね。
わかりません、でも、これだけは言えます。
-誰か助けてください
「うふふー、クレア、逃げるだけ、かわすだけなら誰でもできるのよ?
だから、強く成りたかったら、攻撃してこないといけませんよ」
とても、いい笑顔で、肩に乗せた両刃の大剣を振り抜く母上様。
その斬撃は、俺の視界に入ることなく、俺が立っている足元の十センチ先をえぐりっとっていきました。
正直言って、母上様の斬撃圏に入れる気がまったくしません。
あと、母上様、俺はなぜ素手なのでしょうか?
俺は、なぜいつもどおりの動きやすい私服なのでしょうか?
え?強さを実感するなら身体に直接叩き込んだ方が早い?
これは、ちょっと意味が違う気がするんですが...
「まあ、今は反撃しなくてもいいわよ、まず、回避の練習からしましょうか」
と、おもむろに、大剣を大上段に構える母上様。
そして、
「フッ!」
気合の言葉と、共に数秒前まで俺が立っていた空間を鉄の斬剣が通り過ぎた。
あーれー?予備動作で何とか軌道を予測してかわしたけど。
今、当たったら死んでたよね?
「フッ!」
そして、今度は流れるような横薙ぎの一閃が...
これをバックステップで斬空圏から逃れることで何とか回避する。
なぜだろう、目から塩辛い汗が出るぜ!止まらないよ!
その後、徐々に早くなるその明確な死を持った斬撃との鬼ごっこが小一時間ほど続いたそうな。
「とりあえずサクラは、得意属性の確認からはじめようか」
魔法の初歩だからね、とにこやかに笑うお父様、私に師事することがよほど嬉らしいです。
「ふむ、僕と同じ水属性だったら、どうしようかな?楽しみだー」
と、何か棚の奥をごそごそとやっています。
ちなみに、今私達がいる場所は地下修練場、まさか、自分家の地下にこんな物が在ったなんて驚きです。
何でも、お父様は魔法の試験運用なども行っているので作ったのだとか。
まあ、ある程度の対魔法防御性を組み込んだ場所がここらしいのですよ。
なに?お兄様ですか?お外で母上様から逃げていると思いますよ。
時折、殺されるだの、この人は母上様の皮をかぶった悪魔だ、だの思考が流れ込んできますから。
「よしあったー、それじゃあサクラ、こちらに来てこの魔法球に手をおいてごらん」
それは、ギルドのギルドカードを作った時に使った物とほぼ似た外見をしていました。
違うところと言えば、その意味をつかさどるために、中に刻まれた魔法陣の文字が違うくらいでしょうか。
「これも、ピリッとするのですか?」
と、ギルドの魔法球を思い出した聞いた私に。
「ああ、生体電流が流れるのはしょうがないから我慢してね」
と、絶望的とはいかなくても、不機嫌には成る程度の答えが返ってきました。
だって、こう静電気のような異物感がすごいんですよあれ。
まあ、逃れられないのものならいいですよ。
と、なかばあきらめながら、私は魔法球に手を載せたのでした。
瞬間。
痺れるような、意識を奪うような感覚が私を襲う。
-なに、これ?あの時の比じゃない!
良く考えて見れば、あの時は表面上の情報を読み取るものだったのに対して、今回は生命の根源をみられるようなもの、その侵食感は不快感はひどいものだった。
つま先から、逆流するように脳を焼ききるような電流が這い登ってくる。
それに、拒否反応を起こした脳が、吐き気を訴えて...
うっ!
と、手を離してしまった。
「大丈夫か!サクラ」
お父様が、蹲ってしまった私の背中を擦ってくれる。
その手には、どこから出てきたのかわからないがギルドカードと同じような物を握っていた。
「お父様、結果はどうでしたか?」
息も絶え絶えに成りながら聞くと、少し顔をしかめて答えてくれた。
「水、だな」
と、その答えに私は頷くと、トイレに向かって駆けだした。
-気持ち悪いぃ!
ただ、がむしゃらにこの不快感を吐き出すために。
「あらあら、結構全力なのに、この子ったら、どこまでかわす気かしらね?」
「うん、水だな、水だよね水っていってよ!ねえサクラ?何ですべての属性が表示されてるの、ていうか闇って何?前はあえて言わなかったけどあの黒い矢のことなの?それと聖ってなにぃぃぃぃ!」
息子の成長に、喜ぶ母親と、娘のある種高いスペックに、迷走する父親。
これが親の心子知らずって奴ですかね。
ある種、スペックの高い兄妹の話でした。
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