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【プロトタイプ】兄は元勇者で妹は元魔王、今は二人で冒険者     作者: アリス法式
三章 少年期

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九話 僕には、母上様とサクラの笑顔が同じモノに見えました。

雪が、雪がひどいです。


ガク...

額が濡れる感覚、薄らと目を開けると、濡れたタオルがおかれているようだ。


-ふむ、確か俺はユノスと戦って


「負けましたわ、私達は」


そこまで、考えて思考にサクラの声がかぶさった。


「負けたか、強かったな」


強かった、俺にはほとんど視認できない速度動き回り、彼女が遊んでいたとはいえ、結局俺は一撃で沈んでしまったしな。


「強くなんてないですよ、ユノスは、私達が弱かっただけです」


俺の考えを否定するようにつむがれたサクラの声はところどころ震えていた。

怒りなのか、どこか痛いのかはわからない、それでもサクラが悔しいそうにしているのはわかる。


兄妹だからな。


だから、


「なあ、サクラ?」


「何ですか、クレア兄さん」


俺が、名前を呼んだことに戸惑いながらも、とっさに名前で返すとはさすが俺の妹だ。


「俺、顔に怪我した記憶ないんだが、このタオルは何なんだ?」


「............」


え?俺が感動的な科白を吐くとでも?


期待しすぎですよ。


「気分ですよ、クレア兄さん」


サクラが、さっきまでの表情を収めて少しだけ笑った気がした。




サクラが、笑ってくれるなら俺はいつまでも道化であろう。


クレア兄さんが、望むなら私はいつまでも笑顔でいましょう。


まったく、関係ないことかもしれない、それでも、二人はそう決意した。

それは、本当の意味での敗北を知った二人の心の均衡を保つための動きだったのかもしれない。




数分後、居間に出てきた二人が、そこでにこやかに笑っていた母親の顔を見た瞬間、あっけなく崩れ去った決意でもあったが。






「クレアー」


「はい...、母上様...」


いい笑顔ですね、母上様。


まるで人を食い殺しそうな、とってもいい笑顔です。


「女の子を、殴りましたねー」


「いや、アレは試合だったのでは...」


母上様?目が、視線が、食い殺すから刺し殺すにジョブチェンジしてませんか?


「殴りましたね」


「いや、でもアレは......」


「殴りましたね」


口が、口が動かないだと!なんという威圧感だ!!


「......、ハイ」


「うん、よろしい」


は?しまった言質を取られた!しかも何がよろしいんですか母上様!?


「流石に修行とはいえ、可愛い実の息子をボコボコにするのは心が痛むのよ...」


え?つまり。


「明日から、修行を始めるわよクレア、覚悟しておいてね」


つまり、本気で俺をボロ雑巾にするために、言質を取ったと。


優しいのか良くわからないです、母上様。






その二人を見ながらウンウンと頷いている父親。


「サクラー」


が、私の名前を呼んでおります。


「お父様、私にも修行をつけてください」


「女の子に、魔法を...、あれ?修行?」


何を、いいたかったのかわからないが、きょとんとしている父親。


「何を驚いているのです?クレアお兄様が修行を始めるのなら、私も始めるのが道理でしょう?」


「え、あ、そうだね、サクラは察しが良くて助かるよ...」


何か、寂しそうに呟いている父親。


「私は、まだまだ未熟です、構成力もスピードも、そして、何より魔力がぜんぜん足りません」


もっと、強い魔法なら、古呪魔法を放てるほどの魔力があれば、あそこで彼女を倒すことができたかもしれない、何より、お兄様が身体を張って稼いでくれた時間を生かせなかった自分が恨めしかった。


「だから、私に魔法を、修行をつけてもらえませんか、お父様」


「ああ、わかった」


僕も、メアリィたちみたいな言葉のキャッチボールをしたかったなー、と遠い目をしているお父様をほおっておきお兄様に視線を戻すと、その間、つまり私の目の前にユノスが立っていた。


「...サクラ」


「ユノス?どうしました?」


む、ユノスが悪くないことはわかっているのですが、どうしても言葉がとげとげしくなってしまいます。


「...私...楽しかった、だから、...サクラ...トモダチ?」


そう言って、手を差し出すユノス。


トモダチ、友達ですか。


私は、いつも考え込みすぎなのでしょうかね?


ユノスにとっては、強い弱いも関係ないのかもしれないですね。


友達ですか...。


そこまで考えて、私は自然と頬がゆるくなっているのに気がついた。


「ええ、友達ですね、ユノス」


「笑った...サクラ...笑ったらトモダチだね...」


ふふ、何か全部、馬鹿馬鹿しくなってきましたね。




「だったら、...クレアも友達だね...」


そういって、振り返ったユノスを優しく見守る自分がいる。


それが、今は、なぜかたまらなく嬉しかった。


「ああ、友達だな」


とりあえず、あっさりとうなずいたクレアお兄様の顔面には、一発魔法をぶち込んで置こうとは思っているけどね。


-「コード・バリスタ」


-展開


流れるような動作で、クロスボウを構える、そして、火属性を籠めた弓を番えると。


-「発射」<シュート>


-お兄様、女の嫉妬の火炎は熱いのですよ。


と、私は笑顔で、魔法の矢を打ち出した。





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