第96話 男装は無理、いろんなとこが隠れない
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私の前にはさっき脱いだばかりの制服。
着替えをすませた私はまだまだ暑い時期だけど、体を隠すように長袖のパーカーを着ていた。
はあああ、ほんとにやだなあ。
今日は文化祭でやる男装カフェ-異世界編-の衣装合わせを、私の家で前の席の友達とやることになってた。
私たちは獣人担当で、男装をしてケモノ耳をつける役なんだ。
こういうのはなんていうか、好きになれない、というか嫌い。
「着替え終わったわ」
別部屋で着替えていた友達が戻ってきた。
執事と言えばいいのかな、タイトなベストとジャケットを着たパンツスタイル。
白いワイシャツに黒いスーツはキリッとしまっていて、息をすることすら忘れそう。
さっき買ったばかりの安いパーティーグッズなのに、まるで本当に異世界から迷い出てきたみたい。
「あとはウィッグね」
テーブルに置かれていた買い物袋から取り出すと、鏡を見ながら器用に長い髪をしまい込んで被った。
異世界風だからといってアッシュブロンドのショートヘアーを選んでいたけど、これも思いのほか似合っている。
これはやばい、クラスの女子が何人か倒れるぞ。
「身長あるし、さらしも巻いて胸隠してるし。
美少年にしか見えない」
「元が良いから」
認められるのがさも当たり前のように私の隣に座る。
いつもの距離感なんだけど、今日は少し離れてもらっていいかな?
「で、貴方はなぜそんな恰好を?」
私のちぐはぐな服装をみて友達が小首をかしげた。
下は同じズボンをはいているけど、上は関係無いピンクのパーカーを着て上半身を隠している。
その首元からはわずかに白いワイシャツが見え隠れしていた。
「それがね、ちょーとサイズがあってなくて」
フリーサイズの男装用コスプレ衣装を買ったんだ。
ズボンなんかはだいぶ余っちゃって裾上げしないとなんだけど、上がね、閉まらなくて、うん。
恥ずかしがっている私を見て何かを察した友達。
「つまり胸がつっかえてシャツもベストも何もかも着れなかったと」
「私も頑張ったんだよ!?
さらしもだいぶきつめに巻いたんだけど、逆に目立つようになったというか」
前に出ていたのがつぶれて横に出てしまっただけで、何も効果がなかったんだ。
パーカーの下はボタンが締まらなかった服を無理やり着ているから、色々見えそうだったり見えてたりでよろしくない。
「むかつくから見てやるわ」
友達が私のパーカーのファスナーに手を伸ばしてくる。
「ほんとだめ!これはだめ!まずいの!」
体をよじって逃げようとするけど、逃さないぞと手が執拗に追ってくる。
「だいたいなんでムカついてるの?
私も着ようと頑張ったんだよ?」
その言葉を聞いた友達がぴたりと動きを止めると、自分の胸を指先でトントンと叩いた。
「さっき身長もあるし、さらしで胸を隠していて似合っているって言ってくれたわね?」
「うん、似合ってるよ?」
「それはありがとう」
まったく喜んでいるように見えない友達の表情。
それどころか見慣れないショートヘアーも相まって、それなりに不気味。
何を怒ってるんだ?
「私はさらしなんか巻いてないわ」
友達がズボンのポケットから長い布を取り出した。
それはさっき私が四苦八苦しながら胸に巻き付けていたものと同じやつ。
そうですか、装備なしでそれでしたか。
「あ、なんというかごめん」
友達のストーンとしている部分を見ながら手を合わせて謝る。
「謝罪なんて不要よ。
貴方のご自慢の隠しきれないところを見せてもらうだけだから」
「だからごめんって!
あとホントこの下はまっずいの!」
「いいではないか、いいではないか」
-次回予告-
授業中に新しい扉が開いた
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