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第90話 台風とホラー映画と現実主義者(リアリスト)な友達 -前編-

【毎日更新】

評価 or ブクマおまちしてます。

嬉しくて踊ってしまいます。


台風が中国地方に接近してきた朝。

傘を手に持つ私は、いつものように前の席の友達と待ち合わせをしていた。

風が強くて空が暗く、湿気の臭いが雨を予感させる。


待ち合わせ場所までもう少しのところでスマホが鳴ったので取り出すと、予想していた通りの通知だった。


「もう少し早く決めてくれたらいいのに」


ぶつくさと言いながらひとまず待ち合わせ場所まで向かう。

いつものコンビニの前に立っている友達が見えた。


「おはよー」

「おはよう」


見ていたスマホから視線をあげて、私に笑みを向けてくれた。


「台風で休校にするならもう少し早く連絡が欲しいわね」


さっき私たちに届いた一斉通知。

暴風警報がでたので本日は休みとのことらしい。


「でもさ、なんかお得感ない?」

「急に休みが降ってくると確かに」


私は友達の手にコンビニの袋が握られていることを見逃さなかった。

浮かれて甘いものでも買ったな、さては。


「雨が降っても嫌だし帰ろっか」


私の声でふたりは来た道を戻る。

友達の家はここから数分、私は15分くらい。

分かれ道まで、ほんのちょっとの早朝下校になりそう。


「あら?」


隣を歩いている友達が空を見上げた。

大きい黒目が見ていたのは曇り空と私たちの間の空間。

細い雨が降り注ぎ、足元のコンクリートに染みを作る。


「もう降ってきたわね」

「ありゃりゃ」


私たちは傘を差すと足早に歩いた。


「うわ、さすが台風」


あっという間に本降りとなった雨が街を強く叩く。

今のこの言葉もさえぎられて、友達には届いていないかもしれない。

風も横殴りになって、水しぶきが足を濡らす。

西の空にはさらに黒く分厚い雲が広がっていた。


「雨が弱くなるまで私の家に寄っていきなさい」


平日の朝早くからお邪魔するのは気が引けるけど、正直助かる。

足元を流れる水は既に川のようになり、側溝からも溢れだしそうだ。

地面に足を付ける度に靴から水が零れる。


「大変な目にあったわ」


ほどなく友達の家に辿り着く。

制服についた水を叩き落とすけど、意味がないくらい全身がしっとりしてる。


「……面白い髪形ね」

「うっさい」


濡れた上に風も強くて、私の癖毛は大爆発。

四方八方にうねってぼわぼわだ。

干されて干からびた蛸みたい。


ローファーと靴下を脱いで足を拭いた友達が家の奥に消えると、タオルを手に帰ってきた。


「これ使って」

「ありがとー、ほんと助かる」


同じく足をハンカチで拭いてる私は受け取ると、髪から制服まで出来る限り水分を吸わせた。

うえー、明日も学校なのにむっちゃ濡れてるよ。

それに気温が下がってきたのか少し寒い。


「あら?」


私の前を歩いていた友達が自室の前で止まってた。

入口の照明のスイッチを何度もカチカチとしてるけど、一向に明るくはならない。


「停電?」

「そのようね」


あきらめて部屋に入ると、まだ朝だというのに薄暗く雷雨の音が煩い。


「サイズ合わないと思うけど」


そう言って手渡してくれたのはTシャツとショートパンツ。

私も着替えてくるからと言い残し、友達が部屋を出る。

なんだか至れり尽くせりだなと思いながらその厚意に甘えた。


上の制服を脱ごうとするけど張り付いていて一苦労。

なんとか下着姿になったところで、思わず部屋を見回した。

なにも、仕掛けられていないよな?


「相変わらずおっきい」


男子と並んでも見劣りしない友達から借りたTシャツを着ると、裾が太ももまできてしまう。

ショートパンツも履いてみたけどすっかり隠れてしまい、鏡に映る私はシャツだけというなんともな姿に見えた。

まあそれよりも何よりも人の服というのは、よく知る甘い香りがして困る。

無意識に鼻をつけてスンスンしていると、ノックの音がして慌てて離した。


「天気予報見たけどお昼過ぎには雨も止む……」


友達が扉を開けたところで止まり、視線を私の太ももに向けていた。


「シャツ1枚とか、とんだ痴女ね」

「履いてるわ!!」


裾をバサバサしてシャツの中身を見せた。


「やっぱり大きかったわね。

 貴方のサイズに合うのはメイド服とチャイナドレスくらいしかなくて」


なんでこの家に私サイズのそれらがあるのか問い詰めるのは今度にするとして、どうしたものかと大きく伸びをする。


「することがないねー」

「そうね、贅沢な悩みだわ」


並んで座る私たち。

いつもの距離だけど、薄闇の中だからか近く感じた。

部屋は煩いのに。自分の鼓動の音だけが体の中で妙に反響をする。


「一つ提案なのだけど」


タブレットを取り出した友達がテーブルにスタンドで立てかける。


「映画でも見ないかしら?

 それもホラー」


外は雷雨で、家は停電。

めったにないうってつけの状態だ。


「怖いの平気なの?」

「非科学的なことは信じないわ」

「ホラー映画とか見たことは?」

「ないけれど?」


あ、これ絶対ダメなフラグだ。


「見終わった後怖くなって『帰らないで一人にしないで』って泣きつかないでよ?」

「私は『一人でお家に帰れない』と甘えられるのは歓迎よ」


どこからその自信は来るんだろ。

まあいいや、嫌いじゃないし付き合うよ。


-次回予告-

後編 ホラー映画編


挿絵(By みてみん)


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