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第89話 七つの大罪を制覇したかもしれん

【毎日更新】

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嬉しくて踊ってしまいます。


「昨日は夕食に牛丼を作ったの」


私は手を組んで肘を学校の机につく。

組んだ手が口元にきて、まるで神に祈りを捧げているようになる。

いや、これはそんな崇高なものではなく懺悔だ。


「……美味しそうじゃない」


それがどうしたのかと不思議そうな前の席の友達。


「牛丼ってさ、チーズトッピングするとレベルアップするよね?」

「ええ、そうね」

「温泉卵なんか乗せるとダブルアップだよね?」

「ええ、そうね」


次の授業の教科書を片手に頷いてくれる。


「ああ、わかったわ。

 昨晩にトッピング盛り盛りで食べ過ぎて後悔してるんでしょ」


くすくすと鈴音色の声。

へっ、そんな程度のことで私が凹むわけないでしょ。

自嘲するように私は友達の肩を叩く。


「その牛丼にね……胡麻ドレッシングかけるともっと美味しいんだよ」

「なぜ無差別級にハイカロリーな牛丼に、さらに熱量を足すの」

「もうね、濃い牛丼に濃いものと濃いものと濃いものを足すと、すっごいの。

 この世のものとは思えないくらいドゥロドゥロなの」


思い出すだけで口の中が塩分と糖分と油でいっぱいになり、水筒のお茶を一口飲む。

友達は想像もできない味に辟易しているみたい。


「じゃあ、貴方はそれを食べて後悔してるのね」


その言葉に私は首を振る。

この私、大絶賛食べ盛りな高校2年生女子を舐めてはいけない。


「びっくりするくらい味が濃いからさ、思わずさ」


私の言葉に友達が生唾を飲み込むのが聞こえた。


「ま、まさか、まさか貴方」

「へへっ、牛丼をおかずに、白いご飯食べちゃった」


七つの大罪のうち、4つくらいに抵触してそうな暴挙。

ローマ法王にバレたら磔にされちゃう。


「今日はヘルシーを意識したら大丈夫よ、一食食べすぎたくらい」


慰めなのか、頭をよしよししてくれた。

私はその手を優しく払いのける。

だってそんな資格なんてないから。


「それをね、昨日の晩も食べたの」

「……も?」


友達が驚愕の表情を浮かべていた。


「今朝も……食べた」


そう、君が日課の朝のランニングをしている間に私は!


「一般女性の1日の摂取カロリーの7割は摂取しているわよそれ」


だめだよそれは。

例え大切な君でもその言葉は許せない。


「私の限界を勝手に決める権利を持つ人はいるの?

 そんなことはやめてほしいの、私は、私は、一歩でも前に進みたい。

 それが無謀だとしても。

 もう一度聞かせて、私の限界を誰が決めたの?」

「お医者様、もしくは関係省庁」

「ですよねー」


現実逃避をしようとし始めた私の後頭部を殴りつけるような言葉。

糖と塩と油を美味しく感じるなんて、人間の設計で最大のバグだと思うな私しゃあ。


「しかも貴方さっきコンビニでグミ買っていたわよね」


友達が私の机の横フックにかけられていたナイロン袋を取り上げる。


「……グミの他に菓子パンもあるのだけど?」

「いやあ、新作に2割引きのシール貼られてたら、ねえ?」

「ねえじゃありません」


友達は袋をそのまま自分の机に置いた。


「没収よ、明日朝ごはんまで軽くしてきたら返してあげる」

「そんな!まだ牛丼残ってるんだよ?」

「冷凍になさい。

 あとどれだけ作ったのよ」


視線を上にして、大鍋にどのくらい残っていたのか思い出す。

あかん、つばが出てきた。


「朝食べてお弁当に詰めたけど、まだ数食分はある」


呆れた友達が無言で私のパンの袋を開けて齧りついた。


「ああ、私の!」

「もう返さない」


-次回予告-

台風の日にふたりっきり


挿絵(By みてみん)


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