第88話 ハミガキでなんで興奮できんだよ
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「あんたって、基本的に気持ち悪いじゃない?」
目の前でお昼ご飯のサンドイッチを齧っている前の席の友達。
そのやけに整った顔を見ながら私は言った。
「同意はしかねるけれど、唐突になにかしら?」
「自信もっていいのに」
その点に関しては日本代表レベルだと思うよ?
私は自分のお弁当をつつきながら伝える。
「どんな風に脳みそ腐らしたら、ああいう発想になるのかなって」
「別に私の発想なんて普通よ。
貧困とさえ思うわ」
「はっはっは、ご冗談を」
乾いた笑い声をプレゼントしてあげた。
あんたのいうことは突拍子もなさすぎて、いつもぽかんとしてるわ。
そんな私に納得がいっていない様子ながら、友達が私のお弁当を指さす。
空中の見えない矢印を追っていくと、それは卵焼きにたどりついた。
「別に何も特別なことなんて考えてないわ。
例えば今ならそれになりたいと思ってる」
「卵焼き?」
「別に隣のウインナーでもなんでも良いわ」
「お弁当になりたい?」
相も変わらず何を言っているかわからず、私はきょとんとしてしまう。
「説明してくれる?」
「難しい話じゃないわ」
「そうなの?」
コクリと頷くと、よどみなく説明し始めた。
「簡単な話よ。
咀嚼されて歯の間に詰まって、貴方の唾液で臭っさく発酵したいだけよ」
「難しいわ!」
しれっと言うからどんな話かと思ったら、何一つ共感できんかった。
歯垢になりたいとか誰が『なるほど』、って頷けるんだ。
「だいたい私はお昼食べたら歯を磨くし」
机の上に置いていた歯ブラシケースをトントンと指先でたたく。
友達はそれを見て今日一番悩んでいた。
「ふむ」
ずいぶん長いこと考え込んでいた友達が、何に納得したんだろう、両手をポンと叩いてキレイな笑みを浮かべた。
「貴方の歯を何千回も何万回も擦った歯ブラシで掻き出され、無残にも排水溝に吐き捨てられる。
その提案は悪くない、やるわね」
提案なんてしてねえよ。
褒めんな。
「その発想はなかったから、素直に感服するわ」
称賛の言葉を聞きながら、食べ終えたお弁当箱を片付けて手を合わせてご馳走様をする。
今日も美味しかった、歯を磨きに行こうかな。
ああ、あと――
「考えてた100倍は気持ち悪い」
-次回予告-
7つの大罪
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