第87話 いちばん可愛い君は私だけが知っている
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前の席の友達と通学の待ち合わせにしているコンビニの前。
時間通り到着すると、お店の中でコピー機を操作してる友達が見えた。
誰かのノートでもコピーしてるのかな?
でもあいつ勉強周りはしっかりしてるから、そんな必要なさそうだし。
「待たせたわね」
私を見つけた友達が、コンビニから小走りで出てきた。
「ぜんぜんだよ、おはよ」
片手をふりふりして挨拶をすると、同じように返してくれた。
今朝は少し涼しいし、黙ってればこいつは目の保養になるし、良い朝だね。
「そうそう、忘れないうちにこれをあげるわ。
今プリントしてきたの」
友達が手のひらサイズの厚紙を数枚出してきた。
これを印刷していたの?
「ありがと?でもこれなに?」
渡された白い紙は裏面らしくひっくり返すと、それは私の写真だった。
教室で頬杖をついている私、部屋で少しだらけてる私、誰かに向かって微笑んでる私。
全ての写真がとても可愛くて、素敵に切り取ってくれている。
どれもこれも私に似た、誰か別の人のように見えちゃう。
「うわ、これどうしたの?」
友達は小さな胸を張って自慢げに語りだす。
「シャッターチャンスを逃したくないから、いつも気を付けているのよ」
まさかこいつに写真のセンスがあるとは思わなかった。
ピアノといい、美的感覚が鋭いのかな。
「でもなんか自分の写真を貰うのって、嬉しいけど恥ずかしいね」
「そんなものかしら?」
「そうだよ、それが盗撮されたものならなおさらね」
「おっと?」
上機嫌だった友達の視線が私から逸れて、さわやかな朝日を見つめだした。
おいおい、そんなに空を見つめちゃ眩しくないか?
「私はあんたに写真撮っていいか、なんて聞かれた記憶ないんだ」
「おっと?」
「肖像権って知ってる?知ってるよね?
ちょっと弁護士のところ行こか?」
私が一歩近づけば友達が一歩後ずさるという、謎の追いかけっこが始まる。
「いいじゃない!写真くらい!」
「逃げるな犯罪者!」
「貴方だって私の写真を撮るじゃない!」
「ちゃんと撮っていいか聞いてるわ!」
朝とはいえ夏の気温、私たちの息は切れてきた。
「だって、事前に撮っていいか聞くと……」
「ん?」
足を止めた友達が、片手で顔を隠す。
「緊張して取り繕った笑顔するのよ。
いつもの自然なほうが可愛いのに」
だからつい勝手に撮っちゃうのよ。
そう、友達が言う。
「うっ、だって写真とかちょっと苦手で」
くそ、乙女を出されるとなんか言い返せなくなってしまう。
卑怯だ。
「だから迷惑にならない程度でいいの、これからも撮るのを許してくれない?」
しおらしいあいつを見ると、つい許してしまいそうになる。
どうしたものかと思って写真に目を落とす。
そこには私が見たことない表情の私。
こいつの前では私はこんな緩んだ顔をしてるんだ。
心臓の鼓動がひとつだけ早くなる。
だってこんな顔、まるで恋する少女じゃないか。
やっぱり恥ずかしいなともう一度視線を写真へ落とすと、さっきは気が付かなかったけど小さな紙が紛れていた。
摘まみ上げてみるとそれはレシートだった。
えーと、写真の印刷が1枚40円。
なるほどと読み終わった私は友達に冷めた瞳を向ける。
「ひとつ聞いていいかな?」
「何かしら?」
紛れていたよと、私はレシートを友達に渡す。
「それには5枚印刷したと書いてるけど、私には3枚しか渡してないよね?」
「おっと?」
わざとらしく友達がとぼける。
「何を印刷したのかな?」
「私が見るように貴方のを出したのよ」
「へー、念のためにその写真見たいな」
「拒否するわ」
「へー、私に見せられない私の写真かー。
がぜん興味が湧いてくるな」
じりじりとにじり寄る私と、後ろに下がる友達。
追いかけっこの第2ラウンドが始まろうとしている。
「逃げるな!私の何を撮った!どこを撮った!」
「言えるわけないじゃない」
「口に出せないところを撮るな!」
-次回予告-
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