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第84話 プリン作ろうか?……豚の角煮が良いの?

【毎日更新】

評価 or ブクマおまちしてます。

嬉しくて踊ってしまいます。


「プリン」


お昼休みにトイレから帰ってきた前の席の友達が、こちらを見ながら真面目な顔でそう言った。

どうやら私はいつの間にかプリンになったらしい。

知らなかったよ。


「そうではなくて」


馬鹿な考えが見透かされたのか、ちょっと焦っている友達が手を握ってきてそのまま廊下まで足早に引っ張られる。


「さっきトイレですれ違った娘達が話していたの」

「プリンについて?」

「ええ、新作が購買に並んでいるって、しかも凄いって」


なるほど、それで甘党なあんたは気になって仕方ないと。

でも凄いプリン?どんなの?有名パティシエ監修とか?

こいつほどではないけど、私も甘いものは好きなので気になり始めた。


「残ってるといいね」


いつもの無表情ながらウキウキオーラ全開の友達に言うと、さも当然のように返してくる。


「私は日ごろの行いがいいから大丈夫よ」


鼻を鳴らして自信満々。

その確信はどこからくるのかな?


「あんたの日頃の行いなら売り切れてるか」

「どういう意味よ?」

「訴えられていないだけの犯罪者ってこと」


見えてきた購買には数人の生徒がいるだけで空いていた。

休憩時間も後半に差し掛かっているし、みんなもう買い終えた後なんだろな。

ちょっとだけ順番待ちをしてショーケースの前に行くと、私達は噂のプリンを探す。

凄いってことは見たらわかるのかな?

そう考えていると、肩を強めに叩かれた。


「あれのことね」


軽く興奮した友達が指をさすのは確かにプリン。

別に有名な人が作ったとか、季節限定の味とかじゃなく、いつものプッチンできるプリン。

ただ、ひとつだけいつもと違う点があった。


「でっか!」

「100%増量って書いているわね」

「しかもお値段据え置き」


『愛されて40周年』と書かれたパッケージ。

どうやら記念の増量キャンペーンだったみたい。


「でも1つしかないわ」


確かに友達が言う通り冷蔵ショーケースの中に残されたプリンはひとつだけ。

こんなお得なのあったら、みんな買っちゃうよねそりゃ。


ひとつでも残ってたのは、私の日ごろの行いのおかげ。

あんただけだったら完売、ソールドアウトだったよ、感謝してほしいな。

その思いが伝わったのか、友達が財布を取り出す。


「私が買うから一緒に食べましょ?」


半分はお金を出すよと言ったけど、いつものお詫びだからと断られた。

お礼ではなくお詫びというあたり、いつも私にゲヘゲヘ言いながらセクハラをを連発している自覚はあるんだな。


「さてと食べましょうか」


教室に帰ってきた友達は嬉しそうにプリンの蓋を捲り、プラスプーンを差し込んで大きく一口。

味を確かめるようによく噛んでる。


「いつも通り安定した味ね」

「私ももらうね」


私も自分用にもらってたプラスプーンでほおばる。


「なんでだろ、学校で食べると美味しい」


食べ飽きたともいえるあの味だけど、不思議といつもよりスプーンが進んでしまう。

くだらない話をしながらふたりでつまんでいると、大きいと思っていた容器があっという間に空になった。


「ごちそうさまでした」

「お粗末様」


ゴミを集めて捨てていると、友達がなぜか神妙な顔をしていた。


「どした?」

「いえ、これは文句ではないから勘違いしてほしくないのだけれど」


顎に手を当てて悩む姿は、小難しい哲学でも追及してるみたい。

まあ、プリンについて考えてるだけだけど。


「いつもの味の倍量のプリンを買ったわけよね」


おっと、気が付いてしまったか。

せっかく友達が上機嫌だったから、私は気が付かないふりをしてたんだけど。


「それを二人で分けたってことは、私たち普通にプリンを食べただけよね?」


うん、そうだよ。

いったって普通の量のプリンをただ食べただけ。


「ま、まあ、安くすんだしね」

「それは嬉しいのだけれど、期待していた内容とは方向性が違うような」


友達としては変わった味や、それこそお腹一杯食べるみたいな特別感を求めてたんだろうな。


「プリンくらいなら作れるし、今日家に寄ってく?」


はしゃいでた子供がしょんぼりしているようで、勝手に罪悪感を覚えた。

こうなったらもうバケツプリンでも作ってあげようかな。


「いえ、プリンは食べてしまったし」


そこまで言うと友達は、もう一度顎に手をやり悩みだす。


「生姜焼きや豚の角煮が食べたいわね、しょっぱいやつが」


えー、なら、もういっそさ。


「今日両親遅いし晩御飯食べてく?作るよ?」


いつもは妹とふたりの食卓だけど、友達には懐いているし嫌がることはないでしょ。

そんなことを考えていると、プリンの時よりも嬉しそうに友達がこちらを見ていた。


「本当かしら!?

 迷惑でなければぜひお相伴に預かりたいわ!」


-次回予告-

油まみれのキス


挿絵(By みてみん)


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嬉しくて踊ってしまいます。

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