第76話 まあここにいるけどさ
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進路指導を受けている前の席の友達を、教室の自席で待っていた。
成績優秀、生活態度完璧なだけに選び放題なんだろうけどやけに長い。
私なんて身分相応な大学のパンフレットをもらって、最近の就職先実績を渡されて終わった。
好きな方を選べってことらしいけど、友達と扱いがだいぶ違った。
いやまあ、普段の努力の差なんだろうけど。
「おまたせ」
扉の音を鳴らしながら入ってきた友達。
手に持っていたパンフレットをドカドカと私の机に落としてきた。
県内外の有名私大や国立大学のものばかり。
「期待してくれるのはありがたいけど、一校ずつ丁寧に聞かされるのは疲れるわ」
自分で肩を揉みながら椅子に座る。
「どんな話をされたん?」
ぺらぺらとパンフレットをめくりながら見る。
「学校としては実績が欲しいのでしょうね、医学部を中心に指導を受けたわ」
確かに私たちの県の国立大学は医学部強いよね。
「偏差値70付近だから安全圏ではあるけど、私は別に医師を目指しているわけではないし」
「げ、あんたそんなに偏差値高いの?」
「貴方は?」
「ろ、60くらいかなー」
「十分凄いじゃない」
まあ世間一般的にはそうだろうけど、うちの学校みんな頭良すぎるんだよな。
「でも医学部嫌なの?」
「嫌というか興味がないわ」
「えー、玉の輿に乗らせてよ」
私の言葉に友達がおかしげに笑う。
「あら、添い遂げてくれるの?」
「それはまだ不確定的な?」
今度は私も少し笑った。
呆れたといわんばかりの友達が指先で一つのパンフレットを指しながら言う。
「地域的に小児科が不足してるらしいわ」
「小児科……」
「どうしたの、歯切れが悪いわね」
「あんたってそっちの趣味は無いよね?
嫌だよ友達が逮捕されるなんて」
呆れた度合いがひとつと深くなった友達。
「あるわけないじゃない。
むしろ子供は純粋に好きよ」
「だよね、ごめんごめん。
さすがに失礼だったね」
バツが悪くて、誤魔化すように私もパンフレットを捲って見てみる。
現在の県の医師の状況と、若者に期待する今後がびっしりと書かれていた。
「そっかー、小児科が不足してるんだね。
あとは婦人科とか内科もか」
そこまで自分で言っておいて固まってしまい、視線だけを上に向ける。
「婦人科も内科も止めときなね。
あれだ、衣服の着脱がないとこにしときな。
友達が逮捕されたニュースなんて見たくないからね」
「貴方は私を何だと思ってるのよ」
いや、なんだってそんなの決まっているじゃない。
「やっべえやつだと思ってる」
ハッキリ言いきった言葉が本当に不服みたい。
君はもっと自意識を過剰に持って自己を見直すこと。
「逆に聞くけど、なら将来何を目指すの?」
その言葉で友達の白い肌に色が指した。
あ、これは知っている、たまに入る乙女モードだ。
「えと、お嫁さんとか憧れる」
思わず私は鼻を鳴らしてしまった。
「な!いいじゃない!
私だってウエディングドレスに憧れることもあるわよ!」
「御冗談を。
あれよ、あんたは藻から新エネルギーを抽出する研究とか似合いそう」
「なによその成功したら世界のパワーバランス崩れそうな特定分野」
「不可能を可能にしそうって褒めてんのよ」
そろそろ帰ろうと私はスクールバッグを手に立ち上がる。
「私のドレスは藻より実現性がないと?」
慌ててパンフレットをまとめている友達が後ろをついてくる。
「ないない、嫁にもらってくれる物好きどこにいるの」
-次回予告-
念のための確認だけど、人間だっけ?
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